八月も終盤。
厳しい暑さに、ようやく終わりがみえてきたようです。
今月、第55回「悠々自適」句会が、悠人さんのブログで開催されました。句会参加者の皆さまの「それぞれの夏」、楽しませていただきました。
自分の選句について書かせていただきます。
岩魚透く水に杣木の映りをり 享仙さん
岩魚が姿を見せた渓流。杣木に囲まれた夏山でのひととき。
清々しい景色が皆の心に映し出され、最高点の句となりました。
享仙さんは、昔から「悠々自適」句会に秀句を出されてきた方。
また享仙さんの俳句に出逢えて嬉しかったです。
夕立に街の時間の弛みをり 日記さん
「街の時間の弛みをり」は抽象的な表現かもしれませんが、作者の体感をたしかに伝えてくれました。
夕立がもたらした街の空気の変化を、みごとに捉えていると思います。
敗戦忌こしかけて膝閉ぢてをり マミーエリさん
この句には心を強く揺さぶられました。
「終戦」でなく「敗戦」と表現したところ。
親戚の者が「戦時中、暗号翻訳の仕事をしていた」と近年になって話してくれました。「天皇陛下のご聖断が戦争を終結に向かわせたんだ。陛下は勇気ある偉い方だった」と申しておりました。それで、この句も戦争の時代を直に知っている方が作られたのだろうか?と想像していたら、マミーエリさんが作者で驚きました。
「こしかけて膝閉じてをり」という動作の描写によって、想いを表したところが素晴らしいです。
大時計晩夏のひと日刻むなり マミーエリさん
「大時計」というのが良いですね。
自分の思い出の中にある大時計は、屋外のもので、そこはヒマワリ畑でした。
晩夏のひと日を刻む大時計。
楽しい記憶を呼び起こされました。ありがとうございます。
空蝉に夢の欠片を見てゐたり 日記さん
夢の欠片という言葉が心にしみ込んできました。
空蝉は、子ども時代を思い出させるところがあります。
きれいに形を維持したまま抜け殻になっていることが不思議でしかたありませんでした。
季語「空蝉」とワンフレーズの調和。とても素敵な俳句です。
勝ち負けと言ふより楽し草相撲 日記さん
素朴な味わい。心あたたかい句。
私は、頑張りすぎない短時間の草むしりで心和む時があり「何でかしら?」と思っていましたが、この句に出逢って謎がとけました!自然とのふれあいは楽しいものだし、草相撲となったら、もっと楽しい。勝敗は二の次ですね。
野分雲大地も草もうねりをり ねこじゃらしさん
季語の「野分」は秋の台風のことです。「大地も草もうねりをり」の表現により、秋草の野を吹き分けていく様子がまざまざと目に浮かびました。
遠花火紺碧の空静かなり ねこじゃらしさん
私は実生活で「遠花火」を見た記憶がないのです。
私にとって花火は「爆発音」とセットになっているものでした。
ねこじゃらしさんの俳句に出逢い、遠花火って風情があって素敵だなーという体験をさせていただきました。
今回の句会は、「をり」「なり」「たり」がテーマでした。
使い方として
「をり」は口語で言えば「ゐる」なので、今そのことがそこで行われている、その状態がそのまま続いている、といったときに用いる。
「なり」と「たり」は口語では「だ」「である」という断定の意。
「なり」は、「たり」と比べて自然ですんなりしている。
「たり」は、語感に重いひびきがあり、内容のやわらかいものには向いていない。
と教えていただきました。
悠人さん、いつもありがとうございます。
楽しく学べる場になっています。