少し前、子宮頸がんワクチンについての記事を書いた
勇気がなくて、ほんとうに書きたかったことを、かけなかった
私の大切な友達で、かつて子宮頸がんの診断を受けた人がいるのだけど、書き方によっては、いやな思いをさせてしまうのでは…と思った。
人を傷つけるのではないかという点、今も自信はないけど、今日は続きをかきます。
以前の記事で、子宮頸がん予防接種は「種痘」とはちがう、とかいたのは、いくつか理由がある。
種痘は、感染症対策であった。
子宮頸がんワクチンも、内容は感染症対策だが…その結果「がん」を予防しようとしているものだよね?
なぜ、このワクチンが若い年齢の人に奨励されるのか?
それは「未感染」の状態にある人に「抗体」をもたせる事に意味があるからだ。
若いほど、未感染である可能性が高いと思われるから。
子宮頸がんワクチンが感染をふせぐ(と期待されている)対象ウイルスは、HPV(ヒトパピローマウイルス)という。
性体験で感染するものだという事になっていて、もちろんそういう事実もあるのだろうが、それがすべてではない。
とてもありふれたウイルスで、新生児からさえも検出されたりする。
健常者の多くがこのウイルスと共存している。でも、一部の人に「感染→子宮頸がん」という現象がみられる以上、感染予防が、そのまま、がん予防につながるのでは…という試みを、子宮頸がんワクチンで実践しているわけである。
で…
その副作用問題と、それを軽視する厚生労働省に文句いってるんだね…と思われたかもしれませんが、ちがいます。
副作用問題も気になっていますが、どんな予防接種にも、副反応が強く出て、不利益を被る人が一定数でてしまうものだ…ということは理解しています。
強い違和感があるのは、「子宮頸がんは予防の時代」というキャンペーン。
この運動の中で、男性の産婦人科医師が「ワクチンだけではダメです」「検診とワクチン、両方で、ほぼ完全に予防できるのです」と言っていた。
ワクチンは万能でない…と認めているのは、まあ正直な発言であろう。
(HPV(ヒトパピローマウイルス)は複数の種類があるが、ワクチンが対応するのは、そのうち2種のみ)
しかし、どさくさにまぎれて、「検診」を予防のほうに入れるのは、正しいモノの言い方ではないですよね?
検診で早期発見しよう、と言いたいのだと思うが、細胞診で変異細胞を発見して「がん」と診断される事、予防とはいえないと思いますよ?
子宮頸がんの場合、一度、細胞診で異常が認められたあと、自然治癒する症例はめずらしくない。
何もしなくても治るものに、早期治療を施し、治癒を医療のおかげにしてしまうのは、日本のがん医療の悪い癖。
一方で、医療でもなかなか治しきらないがん患者さんもいるのだが、冒頭でかいた私の友人は進行してしまったほうのがん患者だった。
病気の症状や治療以外のことで彼女が苦しんでいたこと…
それは子宮がんを「体がん」と「頸がん」に分けると、罹患しやすいタイプは異なると言われていたこと。
子宮頸がんは、「恋人をとっかえひっかえするような人に発症のリスクが高い」という言葉に、彼女はショックを受けていて、この病名、なるべく人に知られたくないの、と話してくれたことを思い出す。
彼女を余分に苦しめた言葉を、私は憎む。
がんの原因を、そんなふうにたやすく一般化して言えるものではないのに。
「喫煙は肺がんになる危険因子のひとつ」といえても「肺がんの人は喫煙者」ときまっているわけではないのと同じだ。
ここまで書いたので、はっきり言うが、若い女性がワクチンをうてば、万全と考えるのは間違っている。
生活の中の危険因子を減らす、という意味で上記の友人を苦しめた言葉は、参考になる。
HPVに感染することじたいは、ほとんどの人におこりうることだと、今ではわかっている。
とても若い年齢(未成熟なからだ)で、繰り返し長期にウイルスに曝露することが、子宮頸がん発症の危険性を高める。
(きまった相手とつきあっている人より、不特定多数の人と短期間に性体験がある人のほうがリスクが高い)
↑こういう日常の事をまったく気にとめず、「ワクチンを受けたから感染症対策は万全」と思い込むことは非常に危険。
この国は、生活習慣の改善よりも「早期発見神話」のほうに重きをおいてしまったので、がんの罹患率、死亡率を下げられないままである。
生活習慣改善のほうに重点をおいた国は、罹患率を下げることに成功しているのに…日本はなかなか軌道修正できないのだ
「検診は予防」なんて平気でいう医師がいるからね…