街は雪化粧。今は降っていないものの、足元は悪い。
関東に生まれて早20数年。雪には慣れていない。
アイスバーンになった雪と思わしきものに足を取られる。
あちこちで滑りこけていく人がいるくらいだ。
今日も、曇りで雪は溶けない。
普段自転車通勤している俺は太陽を待ち望んでいた。
交通費がかかるし、人も多い。関東は雪に弱い。
電車はすぐ止まる。事故も多い。
俺はおろしたてのママチャリ通勤が毎日の楽しみだった。
人間観察、ルート変更が楽しいし、季節の移り変わりを間近で見られるので好きだった。
仕事場に行けばいつもの悪夢。
上司にはいびられるし、同僚には使えないと嘆かれる。
一生懸命やっているってのに酷いもんだ。
最近人と変わってるねとよく言われる。
天然と人は言うけと俺は違うと思う。
きっと他の人と違って脳みそがおかしいんだと思っている。
そうじゃなきゃ、上司にいびられることも、同僚に使えないと嘆かれることもないんだから。
だからといってそのたぐいの病院に行こうとも思えない。
実際、俺は病気ではいと思っているし、重症でもない。
サイトのセルフチェックなどは目安に過ぎない。
先日実家に帰った。
実家の庭にも雪が積もっていた。
母親は、「庭なんて手入れしていないんだから雪があろうと誰も見やしないし、見せやしないんだからいい。身内だけが見るものだ」
と言っていた。
俺はそうだねそれでいいよと笑っていたが、姉にはおかしい会話だと突っ込まれた。
何故かはわからないが俺はそういうものだと納得した。無理に。
明日は晴れとキャスターが言っていた。
雪も溶けて自転車通勤が始まる。
不思議に会社にはいきたくないとは思わない。
そこも変わっていると言われる。
忘年会に参加することさえ変わっていると言われる。
おかしい話だ。
疲れているのか目の前がグルグル回って見える。
電気がすごく眩しい。
手が震えて文字が書けない。
幻聴。妄想。
俺はおかしくない。
眠りに入ると、体が浮いているような感じがした。
でも俺はおかしくない。
外で大きな音がした。
事故だ。車と車が衝突したようだ。
その音で俺は現実に帰れた。
きっと夢だ。
朝起きると、雪は溶けていなくてまだ凍っていた。
げんなりしながら俺はスーツに着替え、駅まで歩いた。
電車に乗ると同じように嫌な顔して電車に乗るサラリーマン達がいた。
ギュウギュウ詰めの電車ではいろんな人がいるなぁと俺は人間観察していた。
何処まで行くんだろう何してる人なんだろうと妄想が止まらなかった。
俺は人とずれているだけ。
明日はきっと雪が溶けているだろう。
そう思いながら俺は電車の窓に息を吹きかけ文字を書いた。
「もう疲れた」