物語を書く。席替え | Suitably fine

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湊渡蓮です。歌手です。
活動は公開生放送、ニコ生、ツイッターが主です。
作曲を頑張ってます。
作曲は無理でした。
ドラマ出たり映画出たりライブやったりしてます。

2020年(予定)インディーズデビューします!!!

「君の隣がいいな」
恋というのは単純で、一言で私は恋と言う名の底なし沼に嵌ったようです。

席替えは楽しみでもあり不安でもあるイベント事で私はくじ引きの順番を待った。
あっさりと自分の番が来てくじを引くと【7】廊下側の前から三番目の席だった。
冬はストーブが近いから暖かいし移動も楽だしいいなと思っていた。
「7番?私15番ー。ちょっと離れちゃったね」
親友が寂しそうに言った。
「ホントだよね、まぁ遠くもないし休み時間話そうね」
私は新しい席に移動する前に机の中身を整理していた。
ズボラな性格で適当な私。
机の中にはしわくちゃになったテスト用紙、保護者への手紙が出てきた。
するとコロコロとペンが落ちた。
「あ」
このペンは探してたお気に入りのペンで、握るグリップの所が透明でその透明の所に好きなアーティストの切り抜きを入れていた。良かった。と思って転がっていった先まで腰を下ろし取りに行った。

取ろうとした瞬間、ペンがなくなった。
なくなったと言うより先に拾われた。
「あっ」
恥ずかしい!高ニにもなって好きなアーティストの切り抜きを入れてるとか今時無いでしょ。絶対からかわれる!

「あ、君もこの人好きなの?」
返答は意外だった。
話したこともないこのクラスの男子と少し話した。
アーティストの魅力を彼は話していた。
キラキラした笑顔で。
長く伸びた睫毛に少し薄い唇。
大振りにアクションを入れて話す所。
少し崩して着た制服。
爪は少し深爪で髪の毛は少し茶色。
話は正直、入ってこなかった。
男子と話すことなんて無かったし、恋人もいたことがない。
ひたすら彼を見てしまう。

辺りはくじを引いてざわついていた。
嫌だと嘆くものもいた。
彼は次の次にくじを引くらしい。
「もっと話してたいよね」
私はそうだねと言うと
「君の隣がいいな」
ドキッとした。どういう意味でしょう?
いや、そのままなんだろうけどもしかしてその先があるのかも?
いやいや、アーティストの話がしたいだけでしょ?
頭の中が彼一色になって親友と離れているとか、本当にどうでも良くなって彼のクジが8番で有る事を祈った。
「引いてくるね」
彼がの背中が小さくなっていく。
机の中身を整理することなんてもうどうでもよくて、テストの答案を持って帰ってお母さんに怒られることも今はどうでも良かった。
くじの箱の前で彼が少し猫背になった。
そしてこちらを見て少し俯いた。
あぁ離れているんだなぁと落ち込んでいると。
紙をこちらに見せて
「すげえ!8番本当に、奇跡じゃね?」

あぁ、神様私は。
恋と言う名の底なし沼に嵌ってしまったようです。

おわり。