ファンの方たちは気を揉んでいるに違いない。
詳しい経緯は、以下の記事を読んで欲しいが、要するに「金」にまつわるバンドメンバーの内紛だ。



日本のロックバンドの歴史で、これ程迄に金銭的問題で裁判に発展し、加えてバンドの様々な資産の利用差し止めを訴えた事例は初めてだろう。


私も記事でしか内容を把握していないが、何処でボタンを掛け違えたのか?


記事には、”解散後のライブ、グッズ収益管理、メンバーへの分配はDAITAさんの会社が行っていた”とある。

解散は2002年だから、その直後から上記のような体制になったのだろう。

なお解散の2002年は、それまでマネージメントを担当していたアミューズとのマネージメント契約が解消された時期と重なる。


想像するに、マネージメント機能を失ったバンドが、自分たちの資産や今後の活動を維持するために、メンバーの中で唯一法人を持っていたDAITAさんの会社を借りることで、バンドの資産や金銭管理を継続しようと考えたのだろうと思われる。


この当時のメンバーたちにとアドバイスをした人間がいるのかどうかについては定かではない。

仮にいたとしても、結果だけ見ると、大したアドバイスをした人間がいなかったと推定される。

加えてバンドの資産管理や分配業務をメンバーの個人事務所に委託し受けてしまった決断も、あまりにも世間知らずだった。

なぜそう言い切れるのか?


記事から推定される揉め事の発端は、2011年に開催された東日本大震災に関わる復興支援のライブ活動から派生した寄付金の取り扱いだ。


DAITAさん以外のメンバーは、寄付金の支出先に疑念を抱き、加えてDAITAさんの事務所が中抜きをしているのでは?と言う疑惑も浮上し、2018年に内容証明を送っている。その後2021年裁判所に提訴した。


今回の問題は、簡単に言えば金にまつわる問題である。

通常、あるプロジェクトに対しての資産管理や運用及び分配業務を受託する場合、任意組合及び銀行口座を作り、関係者で契約書を交わして業務を進める。

契約書の中には、どの様な活動がプロジェクト共通の売り上げとなり、何が経費となり控除出来、何が利益と認識し、どの様に分配するか、また、主幹事に対して委託手数料を発生させることができるか?、分配はどの時期に行われるのか?、支出に関して幾ら以上になれば、関係者全員の許諾がいるのかや、会計監査は誰がどのような時期にどのように行われるのか等を記し、関係者全員の署名捺印によって契約を締結させる。

これがなければプロジェクトに関係する任意組合の金銭管理はできない。

任意組合にしているのは、LLC等と違い金融庁への登録が不要で、比較的簡易にできるからだ。


当時のメンバーたちは、上記に書いてあるようなことを全く知らなかっただろうし、彼らの周辺にいるアドバイザーたちも同様だったろう。


少々冷たい言い方になるが、メンバーたちはDAITA さんの事務所の存在を安上がりに使えば当面をしのげる考えていなかったり違いないし、DAITAさんもバンドの資産や運用管理がこれほど重大で手間ひまかかり、トラブルの元になる認識がなかったのだろうと推察される。

記事の中にDAITA さんの事務所に”中抜き”されているのではないかと他のメンバーが疑念を持っていたとあるが、金銭管理をする上で、手数料を取るのは当然のことである。

しかし問題は、それが事前にメンバーできちんと合意し、書面に落としていなかっただった。


2021年にメンバー4人から提訴された裁判の結果、DAITA さんの事務所の管理に瑕疵はなかったと言う判決が下った。

また4人が行ったバンド名の登録商標作業は、不発に終わっている。


そしてDAITAさん側は、4人のメンバーに過去に彼が作詞、作曲に関わった30曲余りの使用差し止め訴訟を提起したと言う。

彼らの楽曲は全てJASRACに登録されている。

登録内容は、一般の人も閲覧できるが、作詞作曲のクレジットは全てバンド名で行われている。

また管理楽曲は全て演奏権も登録されているため、通常考えればDAITAさんの主張は通りにくいだろう。


こうなってしまってはもはやバンドの修復は不可能だろう。


ロックバンドにせよ、ロック歌手にせよ、今回彼らに起きている様々な音楽ビジネス上のトラブルは、現在、現役で音楽活動を行っている様々なミュージシャンに降りかかってくる可能性のある問題を提起している。

マネージメント事務所を離れ、バンドのメンバーがバンドの運営管理をしなければならなくなった場合に一体どうすべきなのか?

バンド名は誰のものか?、バンドで書いた楽曲はどのように扱われるべきか? バンドの資産や運用から上がってくる金銭管理は誰がどのように行うべきか? バンドのメンバー間で人間関係が決定的に断裂した場合、どのように対処すれば良いのか、等々。


実はこの答えを体現している人が日本には1人だけいる。

矢沢永吉氏だ。

彼早くから、自分の音楽ビジネスに関わることについて経済的な独立を目指し、また生み出される様々な権利を自らの会社で管理運営するように徹底していた。

ミュージシャンで、あそこまで徹底的な管理運営をしている人は日本にはいないだろう。


今回のSIAM SHADEの問題は、バンドのメンバーが50代になって来たことと無関係ではないと思う。

四半世紀前に解散し、細々と活動しているバンドメンバーたちが50歳代を過ぎ、これから60代に差し掛かるあたりで、将来的な金銭問題や活動のありように対して重い課題を感じているだろう事は容易に想像がつく。

本来であれば、元のバンドメンバーが全員手を携えて一緒に未来に進んでいくのが誰にとっても全体最適なのだ。


それに気が付いて軌道修正できるかどうかは、彼らの人間的な力量で決まると思う。


アミューズ時代に彼らを守ってくれていたNマネージャーが生きていれば、彼らを一括して収めてくれたと思う。

N氏が居ないことがメンバーにとって不幸となった。