フジテレビ問題が大規模に燃えている。
昨年末の中居正広のセックススキャンダルからフジテレビに延焼することは容易に想像できていた。
結局報道について1番遅かったのはオールドメディアであった。
オールドメディアはSNSのスピードには全くついていけてない。
フジテレビの経営陣の危機対応を見ていると、あまりにお粗末で、経営者としての資質に大きな疑念を抱かざるを得ない。
有り体に言えば、経営者として無能であると言うことだ。
なぜだろう?
そもそも港社長は番組制作のディレクターであり、プロデューサーだった。
彼はとんねるずと言うタレントを梃子にして出世街道を爆進した。
1月24日の社員説明会での港社長の会見の中身を見ていると、話に具体性はなく曖昧で、本当に問題の本質をよく理解しているのかすらも疑念を抱くほどの低いレベルの言語でしか回答が出来ていない。
なぜ、これほどまでに、無能な人間が経営トップにまで上り詰めたのか?
それは、彼がテレビ局のビジネスモデルに貢献したからである。
テレビ局の根幹的なビジネスは広告収入である。
広告収入は視聴率によってのみ支えられている。
その視聴率は高視聴率を維持できるタレントと言うインフルエンサーによって支えられている。
従ってそうしたタレントと密接な関係のあるテレビ局社員は他の社員に比して特別な存在となる。
視聴率を安定的に支えられるタレントを確保している事は、高視聴率の番組を作れるとみなされているからだ。
これによって、タレントと個人的な部分も含め、近い関係性を維持している社員は、実務能力や経営者の資質と関係なくテレビ局の出世街道を走り上がってゆく。
これまではそれで何とかなっていた。
タレントや芸能事務所側はテレビ局とつながることで大きな収入源を確保することとなる。
双方の利害が一致する中で、テレビ局とタレント、芸能事務所との密接な関係が深まっていく。
中居正広の事件を見ていて解る様に、タレント側は、テレビ局のプロデューサーに、ギャラ以外の個人的なわがままを要求する。
その中には今回の事案を見てわかるような性的なものであったりすることがあり、そうしたわがままを表に出ないように処理し、要求を満たすことが、プロデューサーとタレントの信頼関係をさらに深めるものとなっている。
SNSの発達によって、ほんの数年前であったら、もみ消されていたようなこうした事案が、一般に知られる以上のインパクトを得て、問題化する時代になった。
そして、SNSによる一般の反応は、国内や海外の消費者や金融関係者を相手にする大手企業が無視できない声となり、スポンサー引き上げにつながった。
スポンサーが引き上げられてしまえば、広告収入が得られず、テレビ局のビジネスモデルは崩壊してしまう。
こうした一連の流れや先々に起こるリスクを事前に読むことができず、内輪の論理や保身を優先して最初の記者会見を行ってしまった港社長や嘉納会長の無能さがあからさまになってしまった。
1月27日月曜日午後、フジテレビは改めて会見を行うと公表している。
既にこの時点でフジテレビは負けてしまった。
今後フジテレビから撤退した多数のスポンサーが戻ってくるとすれば、以下のような課題を解決した後となるだろう。
1、現行のフジメディアホールディングス及びフジテレビの経営陣は総退陣し経営を刷新した印象を強くさせること。
また退陣した経営陣には退職金は支払わないこと。
当然だが、今回の大規模な損失を出した原因は、この経営陣にあるからだ。
この中には関西テレビ社長の大多亨も含む。
また、代表取締役以上の役職の定年を規定すること。
2、フジテレビの編成局、人事、総務部、アナウンス部の管理職全員の降格と配置変え。
3、中嶋優一プロデューサーは懲戒解雇。当然だが退職金は出さない。
4、フジメディアホールディングスのコンプライアンスの規定の見直しと管理体制の見直し及び内部通報制度の見直し。特に、芸能事務所やタレント等からの社員への贈答や飲み会のセッティング等については厳しく規定しておくこと。
5、スポンサーに対して、フジテレビの社員や番組関係者が上記4規定のコンプライアンスに違反するような関係を維持していたり対応をしていないことを誓約すること。
6、特に芸能関係の取引先や広告代理店との会食等については、事前の申請と承認がなければ実施してはならないとする。
7、フジテレビの社員給与体系を他のホールディングスの子会社の営業利益に対して大幅に見直す。
今後、ナショナルクライアントと呼ばれる上場企業のスポンサーは、タレントの出演やタレントが出る番組に関係する広告出稿について、タレントの素行の調査は元より、テレビ局の社員の素行調査まで深い情報を得ないと出稿することがリスクとなるだろう。
フジテレビの問題は、オールドメディアの終わりの始まりを象徴しているような事件である。
SNS時代に移行している中、オールドメディアは未だに自分たちのパワーを過信しているようだ。
現在のフジメディアホールディングス有り体に言えば不動産会社である。
フジテレビにとっては、NetflixやAmazon Primeなどが仮想敵になっている時代だが、彼らはテレビ局を敵だと考えていないだろう。
サブスクのビジネスは、広告収入と違い、多少の売り上げの上下はあるものの大幅な減収が起こりにくい。
中長期的な経営戦略が見込まれる中では、充実したコンテンツに多くの資金を投資することができ、さらなる会員の増加への足がかりとなる。
充実したコンテンツを生み出すのが誰かと言えば、企画を考えるプロデューサーであり、最適なストーリーを生み出す脚本家である。
シナリオハンティングこそが、長期的な顧客を維持するための源泉であることをテレビ局の連中はまだ理解できないのだろう。
タレントをチヤホヤしているようなテレビ局の連中は、20年ほど遅れている連中だと言ってもいい。
今回、それがあぶり出されたわけだ。