2023年7月1日午後4時35分、音楽プロデューサーの松尾潔氏が自身に関する件でツイートをした。

内容は以下だ。

 

 

ツイートに書かれているジャニーズ事務所への言及とは以下の記事に集約された事だろう。

 

 

Yahooニュースにも出て一般的にも知られるようになり始めた。

 

 

そして7/6午後、以下の松尾潔氏の主張が日刊ゲンダイに掲載された。

 

 

なお、7/5山下達郎氏から本件に関する発信を自身のラジオ番組で行うと発表されている。

 

 

実は、これらを読んで、スマイルカンパニーと山下達郎氏にも松尾潔氏にも不味い展開だなと思っている。

 

一番の悪手と考えているのは、スマイルカンパニーと山下夫妻が松尾氏の契約解除を慎重に検討しないで進めた事にある点だ。

これによって両者は非常に不利な立場を自ら作ってしまったと言っていい。

 

さて、スマイルカンパニーは、山下達郎氏、竹内まりや氏を擁する音楽事務所だ。

山下達郎氏と松尾潔氏は、同じ事務所仲間である以上に、音楽仲間として強い親和性があったことは業界人なら周知の事実だ。

 

さて、現在の事務所の代表は小杉周水氏だ。その前の代表は、元ワーナーミュージックの宣伝部長だった黒岩氏が会社を辞めて転籍したのだが、何故かたった2年余りで社長退陣となっている。

 

実は小杉周水氏の父は小杉理宇造氏という。

宇造氏は、2019年までジャニーズ・エンタテイメント代表取締役社長だった人物だ。

そもそも小杉理宇造氏は1977年にデビューしたマッチこと近藤真彦氏の当時の担当ディレクターであり、RCA時代の山下達郎氏の担当ディレクターでもあった。

小杉理宇造氏は達郎氏とスマイルカンパニーを立ち上げ、長年達郎氏のビジネスパートナーとして生きてきた。

そういう意味で、創業者の息子が事業を継いだと言ってもいい。

山下達郎氏がマッチやKink Kidsm。、嵐などジャニーズ事務所のタレントへの楽曲を長年行っていた背景は、小杉理宇造氏が率いるスマイルカンパニーとジャニーズ事務所が長年の業務上の付き合いがあったためだ。

こうした蓋蓋性として、小杉氏がジャニーズ・エンタテイメント代表取締役社長になった経緯と事実を見るだけで、小杉氏とジャニーズ事務所の強固な関係は外野にいてもハッキリと認識できる。

 

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まず、松尾氏がゲンダイに書いた記事を整理しよう。

 

◎2023年3月、BBCのジャニー喜多川氏のドキュメンタリー番組を見てショックを受ける。

◎5月14日、メリー喜多川氏の会見動画を見る。

◎5月15日、福岡RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に出演し、求めに応じて自身の意見を述べる。内容は上記リンクのTBS NEWSサイトにある通り。

◎5月16日、Yahooニュースで発言が配信。

◎5月18日、スマイルカンパニー代表の小杉周水氏と面会。ジャニーズやジュリー社長の名前をメディアで口にすること自体を問題視し、マネージメントの中途解約を切り出される。

◎6月2日、周水社長から、松尾氏の契約中途終了に山下夫妻が〈賛成〉であることを告げた。理由は、山下家・小杉家・藤島家つきあいはビジネスではなく「義理人情」なのだから。

◎その後、喜田村弁護士経由で山下夫妻が〈賛成〉であることについて再度確認をしてもらったが、返ってきた回答は「そうである」とのこと。

◎6月30日、スマイルカンパニーとの契約終了。

◎7月1日、松尾氏が自身の契約終了に関するツイートを行う。

◎7月5日、山下達郎氏のオフィシャルページ内で、本件に関するコメントを7月9日の自身のFM番組内で行うとアナウンスされる。

 

スマイル側の言い分を松尾氏が書いたゲンダイへの寄稿の通りと仮定した場合、論点はこう整理される。

 

◎スマイルカンパニー(SC)側の途中での契約解除理由は、5月15日、福岡RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』に出演した際、ジャニーズやジュリー社長の名前をメディアで口にすること自体を問題だと考えたからだ。

◎SC社長の周水氏もジャニー喜多川氏の性加害は当然許されないことだし、松尾さんの話も正論だと発言している。

◎山下家・小杉家・藤島家つきあいはビジネスではなく「義理人情」であり、松尾氏指摘の正論を超える理屈となりうる。

◎山下夫妻は契約解除に〈賛成〉である。

 

この話がややこしいのは、お互いに分母が全く違う話をしているからだ。

松尾氏は正論(筋論)を展開し、小杉周水氏は情緒論だからだ。

 

上記に紹介している松尾氏の主張を読むと内容は極めて正論だ。

ジャニー喜多川氏の犯罪行為は、最高裁でも有罪となっており、BBCのドキュメンタリーには性加害者が実名で登場している。加えて日本国内の過去の性加害者も実名で登場しており具体的な加害に関する証言を公でしている。

従ってこれらは妄想であるとは認定できず、ジャニーズ事務所にはこれらに真正面で向き合う相当な責任があるだろう。

 

但し、困った問題がある。

それはジャニーズ事務所のタレントを使ってビジネスをしている放送局等のメディア、また出版社、タレントに楽曲提供等をしている音楽関係者とレコード会社だ。

その一つがスマイルカンパニーだ。

おまけに小杉周水氏が言っているように山下、小杉、藤島家の3家は、極めて濃密な関係性である。

だから松尾氏の正論については、一定の理解を示しながら、現実問題がついて行かないというのが小杉周水氏の意見だろう。

 

小杉周水氏は、松尾氏に、ある意味でジャニーズ事務所は自分の身内同様で非難をしたり、縁を切ったり出来ないと言っているに等しい。

仮にジェニー喜多川氏が性犯罪者だったとしても、受け止めなければならないという訳だろう。

つまり、言い方を変えれば自分たちも同類と見られても仕方ないという訳だ。

それはそれで選択枝だろう。

従って身内を非難する松尾氏は事務所として容認出来ないという訳だ。

 

筋論としては極めて弱い。この弱い筋論をベースに、7/9のラジオ番組で、山下達郎氏がどのような論を展開するのか、実に興味深い。

つまりこの時点で判るのは、「論陣」は張れないということだ。

 

ジャニー喜多川氏の性被害者たちが数多く名乗りを上げている現段階でさえも、当事者のジャニーズ事務所の代表のメリー喜多川氏は配信による中途半端な説明で終始し、ジャニーズ事務所と深いかかわりを持った大手メディア等が頬被をして襖の隙からこっそり様子を窺っており、松尾氏は、こうしたことへ明らかな嫌悪感と危機感を表明している。

スマイルカンパニーと山下夫妻に関しても、言い方は何だが、同じ穴のムジナに見えたのだろう。

つまり世間的に見れば、スマイルカンパニーはジャニーズ事務所と長年の共生関係にあり、ヘタをすると共犯とも言われかねない距離に居たが、身内からそうした姿勢に異論が出てしまい狼狽したというのが、今回の経緯だろう。

 

しかし松尾氏は、ジャニーズ事務所は、過去の過ちをキチンと清算し、謝罪し、情報公開をしないと、エンタメ業界全体への中長期的な悪影響の根源になる、と総括している。

スマイルCに所属する松尾氏のジャニーズ事務所に関わる問題への公のメディアを使った言及は、スマイルカンパニーとしては実に困った事だったと推察出来る。

 

 

SC社長の小杉氏が一番困ったと感じただろうことは、松尾氏のツイートの中に、特に山下達郎氏の名前が言及されている事だろう。

所属アーティストでおまけに会社の中心アーティストにこういう事例でスポットライトが当たることは最悪なのだが、これが山下、竹内氏のイメージ低下になることは事務所として一番避けたかったことだろう。

 

実際、暇空茜さんや経済学者の田中秀臣氏さんら、普段音楽に関する発信をしない人たちがツイートしている。

 

 

 

 

松尾氏が発信した内容は実に正論なのだが、芸能、音楽業界でジャニーズ事務所と業務関係にある法人、個人にとっては不都合な事実なのだ。

 

松尾氏は正論を吐いて、事務所をクビになったと言っても過言ではないだろう。

しかし、この発言が契約解除になる、という理由については、本来、あり得ないだろう。

松尾氏にとって山下夫妻が松尾氏の契約の中途解除にOKを出しているという点においても、気持ちが切れたのだろう。

ジャニーズ事務所側との関係性を優先した点において、業界の闇は根深いなあ・・と感じた次第だ。

 

こうした現実を見ると、夢のありそうなエンタメ業界だが、実際の裏側はドロドロで、正論は通じず、単純に強いものが勝つという極めて動物的な業界だと感じ、段々と興味を失い始めている自分が居る。

松尾氏が訴えるような地盤沈下はあるかもしれない。

 

特に私のような山下達郎氏の音楽シンパには、今後、彼の音楽とどう向き合うべきか、実に心に傷の残る話だ。

山下達郎氏がジャニー喜多川氏の性的加害行動を容認しているは思っていないが、同時に松尾氏の意見に対して、論理的にも、もう少しキチンと向き合って欲しいと思ったが、真相はどうだったのだろうか?

 

7/9の山下達郎氏のラジオ放送でのコメント、何を語るのか?