2019年に父が亡くなり、実家に独り暮らしになった母は自分の意思で老人ホーム(軽費)に移った。
母は2023年1月に亡くなったが、それまでの間に実家を解体処分した。
解体処分は事実上、地元に住む兄が主体的に地道にやってくれた。
実は解体終了までには約3年ほどの時間がかかった。
実家処分は各御家庭に様々な事情があり、簡単ではない。
家族個々人が色々な事を主張するとそれをまとめるだけで時間が流れてしまう。
私の家が幸運だったのは、まず母の意思だった。
父は、最終的に入院してから約2カ月程度で亡くなったが、それ以前の段階で母は、父の死後は実家を出て、地元の軽費老人ホームへの引っ越しを準備していた。
実際、父が亡くなって約2カ月を経てホームへ移った。
実家は、地方公務員の父とその母が決して多くない給与の中から貯めた金で建てたものだ。
家を建てるまでには様々な困難があり、それは生前に聞いていた。
そんな想い出が詰まっているはずの実家を私が継がないと意思表明する中、母は殆ど悩む事なく手放すと決断したのだ。
母は強い意思を持った人だと思った。
実は、兄が婿入りしている関係で、実家の主たる相続権は母と私にあった。
その私は関東圏に住んでいることもあり、実家を受け継いで住み続けるのが困難だった。
その事は以前から母と兄に説明していた。
父の死、そして当時の私の年齢と仕事環境を全て鑑みて、やはり実家を受け継ぐのが困難と判断し、母と兄にもそうした意思を伝えていた。
母は私の考えをサラリと受け入れた。
普通はこの辺の問題でスタックしそうだが、我が家ではそういう事が無かった。
その後、兄が一人奮闘して実家の荷物の全てを約3年間かけて有料廃棄する作業をした。
これは廃棄作業まで業務委託すると最終的に赤字になってしまうと分かったからで、加えて事前に家の荷物を空にしておかないと想定した金額で解体出来ないからだった。
それでも家の荷物を捨てるのに60万円程度の廃棄料がかかった。
当然だが、私が実家に預けていた荷物、母が老人ホームで住むために必要のない私物、父の遺品の多くは廃棄することになった。
多くの人は、こうした思い出の品を廃棄することに躊躇するに違いない。
私だってそうだった。
だから私は廃棄には一度も立ち会わなかった。
見なければあれが大事、これが大事と思うこともないからだ。
こうした行動は、どこかで冷静に割り切りをしないと前に進める事は出来ないと理解していたが、母も私も私物の廃棄処理を引きずることは殆ど無かった。
あらかたの荷物が廃棄され、解体前の実家に立ち寄った。
ガランとした部屋を見て、もう自分が育ってきたあの光景は戻って来ないんだな・・と寂しい気持ちになったが、現実問題として家を放置も出来ないため、心を鬼にして家とお別れをした。
割り切りというのは能力かもしれないと思った。
やがて実家はあ解体され、更地になり、そこには新しいオーナーが家を建てて住み始めた。
解体費用や廃棄費用、また登記のやり直し、そして税金の支払い等々があったため、売った金は殆どそうした経費で消え、殆ど手元に残らなかった。
それでも我が家の実家問題はこうして解決した。
今でも心の奥底に寂しさはあるが、誰にも継ぐ事の出来ないものを営々と放置しておくことも出来ない。
金も手間もかかる。ご近所にも迷惑である。
そういう意味で、現在実家の空き家問題を抱えている方には、結局はご自身やご両親、兄弟の意思と行動がフォーカスが全てで、あとは行動するだけ、という現実をお伝えしたいと思う。