2023年2月13日夜8時から南こうせつさんが40数年ぶりというオールナイトニッポンでの生放送を行った。
私の世代には刺さるパーソナリティだ。
私も生放送をリアルタイムで聴いた。
こうせつさんの人柄の良さが伝わる楽しい放送だったが、放送終盤にちょっと気になった点があった。
ご本人も政治的な発言をすることの重い空気を感じて、敢えての発言という形だったが、ロシア・ウクラウナ戦争に触れた。
批判覚悟ということでしたから、ご発言はそういう事も意図していたのだろうと推察します。
ちなみに私は、こうした番組でご自身の意見を発信することはとても良い事だと思っている。
こうせつさんの主張の趣旨は以下だ。
地球という閉じられた系の中で生きる人間が「金銭欲」に走ると生き方を誤る。
愛情を分かち合い、先祖から預かっている慈悲、利他の心を世界に知らせるようしないといけない。
とにかく戦争は良くない。
ウクラウナの大統領も武器を欲しがって周囲を巻き込むのは止めて欲しい。
ロシアにもEUとかが入って、ウクライナを支援しないからいい加減にロシアに引っ込めと云う人たちが欲しい。
平和のために何が出来るかを考えて欲しい。
80億人の人たちが笑えるようになれば世争いごとは無くなる。
笑う事が波及してくれるメッセージがどれほど凄い事か、それを言いたい。
この発言の全部を否定はしない。
戦争はない方がいい。その通りだ。
世界の皆が幸せならなお良い。
私自身も世界の動きがこうせつさんのご発言の通りになればいいなとさえ思っている。
20代前半くらいまでの私なら、100%賛同していたかもしれない。
しかし60代に至る過程で私は現実的な人間の営みや在り様を無視できなくなった。
そういう意味でこうせつさんの主張にガッカリし、同時にこういう発言を公衆に出来る事が羨ましいとも感じた。
私よりも1世代上の74歳まで生きたミュージシャンの視点で見えている、世界や人間、政治への見方がこれほど観念的で理念的で理想的でいられることに少々驚いたのだ。
先ごろ経済学者で米イェール大学助教授の成田悠輔氏(38)が、「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」という発言をして物議を起こした。
早稲田大学名誉教授で、社会心理学者として『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)のパーソナリティを40年以上務める加藤諦三氏(85)は以下のように語ったという。
「こういう発言をするのは、心理的な成長に失敗した人です。現実の社会には、複雑な要素が絡んでいますが、彼のように、過激で極端な見方をする人は、その“現実”と接していないんですよ。」
こうせつさんの発言に接し、私は加藤氏のコメントに共通するものを感じた。
非常に単純化され、美化され、正論のような視点と極端な見方のみが強調される人たちだ。
世の中は複雑で、政治的でもあり、善悪だけではないという現実をキチンと見れないまま歳を重ねている人たちがそれなりに居るという訳だ。
残念ながら歴史的に見て人類が戦争なしで生きていた時代はない。
加えて人間は全員が同じ様に考えないし行動もしない。
また必ず自己保全や自己の利益のためだけにルールを破ったり相手を貶めたりする人がいる。
そもそも戦争とは外交交渉の最終手段であり、交渉で決着がつかないから実力行使をするという現実がある。
戦争反対は当然だが、それだけでは戦争は無くならない。
WAR IS OVERというのは容易いが、現実社会で本当のWAR IS OVERにするには軍事力を持って対抗しなければならない事は今回のロシアのウクラウナ侵攻で明確だし、過去の歴史もその事実に沿っている。
確かに現実は醜いが、そういう現実を搔い潜らなければ生きては行けない。
従ってそれなりの年齢を経た人がリアリティーや現実的な背景を無視してこうした問題に意見をするのは余り感心しない。
70歳を過ぎる事には様々な経験と知見が増してゆくだろう。
敬意を払った上で申し上げれば、そうした経験と知見を背景にすれば、あのような意見を発信するのは、私であれば少々躊躇せざるを得ない。
プーチンに引っ込めと云って引っ込んでくれるような輩だったら、そもそもウクラウナに侵略するはずもないだろう。
人間だから話せば判るという人は多いが、貴方は完全に頭のオカシイ猟奇的な犯罪者のような奴に対峙して話せば判るなんて言えますか?
プーチンも習近平も金正恩も、自国民や他国の国民の多くを死に追いやって平気な連中で、ある意味で猟奇的な犯罪者同様なのです。
70歳を過ぎていれば、その位は理解していて発言をして欲しかった、というのが私が感じた番組の宿題でした。