ユニクロ柳井会長が2022年10月13日期末決算発表を行った。

簡単に言えば、円安とロシアからの撤退をした中であるが好調な業績値を叩き出している。国内よりも海外の方が業績が好調のようだ。

 

(決算発表内容)

https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/fr_ir_n20221013_4q_summary.pdf

 

(サマリー)

通期の業績予想につきましては、売上収益2兆6,500億円(前期比15.2%増)、営業利益3,500億円(同 17.7%増)、税引前利益3,500億円(同15.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,300億円(同15.9% 減)を予想しています。海外事業の業績予想における為替レートの前提は、期初の為替レートである1ドル 138.7円、1人民元20.0円です

ちなみに円安効果で為替差益が「1,143億円」あった。

 

さて、柳井会長に関して、こんな報道が話題であった。

 

 

柳井氏の発言要点は、円安は日本にとってデメリットだ、に尽きる。

発言を引用すると、日本は世界中から原材料を仕入れて加工し、付加価値をつけて売っていると指摘。

「自国通貨が安く評価されることはプラスにならない。円安の行方を心配している」と述べたという。

円安が進み原材料の高騰もあって各企業で値上げが相次ぐ。柳井氏は「原材料は50%アップとか、ひどいものだと3倍になった。今のプライスで売ることは不可能」などとして、値上げを示唆した。

 

この発言趣旨に誤りはない。

その通りだ。

 

では、ユニクロは、と言えば、税引前利益3,500億円のうち、為替によるプラスが1,143億円もあるのだ。実に32%の利益は、為替から来ている。

何故この事実の前で、柳井氏は円安はデメリットだと言うのだろう。

自分の会社はそれで大きな利益を出しているではないか。

 

実は、円安でメリットを得られるのは、主に輸出産業だ。

輸出産業を出来る企業は、殆どエクセレントカンパニーで中小企業ではない。

また、こうしたエクセレントカンパニーの円安下の輸出事業の伸びで、10円の円安でGDPが0.8%程度伸びるという日銀の試算データがある。

 

 

つまり、柳井氏の云うように、日本として円安はデメリットだらけではなく、日本全体としては円安の方が遥かメリットがある、という回答が正しい

実際、日本の高度経済成長は、超円安というゲタを履いていたから達成出来たという研究論文があるし、それが真実に近い姿だろう。

当時は1ドル250~360円の時代なのだ。

 

多分、柳井氏は、マクロ経済を学んだ事がないのだろう。

この考え方は、マクロ経済の初歩である。

どうやらマクロ経済を知らなくても経営は出来るらしい。

 

当然だが、2022年度の日本の法人税収は伸びるだろうし、既に総額で70兆円レベルの税収になると分かっている。(過去最高額)

エクセレントカンパニー企業業績が伸び、GDPが伸び、税収も増える。

日本にとって何が悪いのか?さっぱり判らない。

 

では中小企業の業績圧迫はどう説明するのか?

 

当たり前だが、輸入によって商売をしている人たちにとって、円安は明らかにデメリットである。

輸入品を買う我々にとってもデメリットだ。

 

従って、こうしたデメリットを受けている法人、個人等については、メリットを受けているところから予算措置をして財政的な補助をするのが普通だ。
従って、円安の時代は、国の財政措置によって不均衡を是正するのが正しい

 

実は、円安で一番儲かっているのは日本政府自身だ。

外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に約1.3兆ドル、日本円にして約180兆円の資産を保有しており、そのほとんどがドル建の米国債だ。
いまは円安なので、円建ての含み益がそあり、機械的な計算をしてもその含み益が約37兆円ある。

 

 

外為特会は財務省の管轄だ。

彼らは自分たちの領土だということで絶対に手放さない。

 

しかし。外為特会の切り売りと一般会計への繰り入れは、小泉政権下、2005年に1度実行された経緯がある

従って、前例があり岸田政権下でも可能だ。

 

柳井氏の云うように円安のデメリットを受けている人たちは多く存在する。

それは事実だ。

また、エネルギー価格上昇等で、家計も苦しい。

 

しかし日本全体としてはメリットの方が大きい。

そうでなければ、高度経済成長期の日本の超円安の時代をどう説明するのだろうか?

また現在の円安下の日本のGDP成長とエクセレントカンパニーの増収増益、また国の税の増収はどう説明出来るのだろう?

 

柳井氏に問いかけたい課題だ。

 

国民への対策を措置する財源して、30兆円近い身銭を切るのは、政府として当然だろう。

 

以下、作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴と、数量政策学者の高橋洋一が10月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。円安のいま、日本政府がするべきことについて解説していたので、補足で添付しておきます。

(内容をテキスト化している)