年金受給者やその予備軍にとって、年金受給年齢をいつにしたら「得」なのか?という議論がある。
政府広報では、1年(12カ月)遅らせると8.4%、3年(36カ月)遅らせると25.2%、5年(60カ月)遅らせると42%増額できるという情報公開があるからだろう。
さて何時から受給したら得になるのだろうか?
回答は、個々人が「得」になるかどうかは、誰にも分からない、従って一般的に言えば、受給年齢でもらうが正解だ。
一部例外的な人が居るとすれば、受給年齢以降も定期収入のある仕事を持っていて、受給年齢を遅らせても生活に全く支障がなく、また受給に関して特別な損得感覚を持たない人だけだ。
ちょっと考えてみれば判るが、誰しも自分が死ぬ日を予め特定出来ない。
年金は保険であるため、生きていれば貰えるし、死ねば貰えない。
非常に大雑把に言えば、年金保険制度は、40年掛け金を支払い、20年受給して損益分岐点になる。
平均的に言えば、その頃に半分程度の人にお迎えが来る。
仮に年金受給前に死んだら丸損になるし、ある年齢を超えて、長生きしたら得になる事もある。
仮に5年遅らせて70歳からの受給を選択した後、73歳で何等かの理由で亡くなった場合、受給期間は3年で、当然損になる。
そもそも、年金は長生き保険なので、得か損かというより、長生きをした場合に、有効性が確認出来るようになるだけなのだ。
保険であるが故に、損得だけの視点で検証しようとすると、保険の趣旨ではない視点が入り、本質を見誤る。
自動車の様々な保険に入る時、損得だけを考えて入る人はいないだろう。
安心を買っているという部分だってあるからだ。
それは数少ない事故の可能性による車の損害が起きた際の実損害と比すれば、支払い額が掛け捨てでも受任出来るからビジネスになっている。
人間の性として、元は取ってから死にたいと思うのは理解出来る事だが、そもそも年金は保険であるため、そういう趣旨設計でないことは理解しておいた方がいいだろう。
ちなみに私の両親は、年金支払いの良い時代に生きた世代だったので、父が死ぬまでの41年間に受給した総額は、約1.3億円にも及んだ。
(母はまだ存命なので、引き続き父の受給額の6割程度をもらっている)
つまり、我が家は地方公務員の中流程度の家庭だったのだが、政府にこれだけの見えない貯蓄があったような形になっていたということだ。
我が家にとっては大きな得になったが、それは結果論でしかない。
どうしても元を取りたければ、自分の損益分岐点を大幅に超えて長生きするしかない。
テレビのワイドショーなどで、年金の損得計算の議論を見聞きしたら、チャンネルを変えて他の番組にすることをお勧めしておく。
全く時間の無駄になる。
また、これ見よがしに金融や家計のプロと呼ばれる人たちが解説をしていたら、その人たちは全員インチキな人たちだと言っても過言ではないだろう。