私の同年代は還暦を過ぎた人たちばかりだ。
つまりサラリーマンなら一旦定年退職を経験している。
皆それぞれの人生を生きて今日に至る人たちだ。
企業の再雇用で働く人、天下ったかスライド転職に成功した人、自由業で生きている人、引退した人、病気になった人、熟年離婚した等々様々だ。
少なくとも私の周囲にいる人の還暦後の実態は以下のような感じなので、まとめておく。
① 企業の再雇用を選択した人。
元の職場もしくは配置転換による再雇用(仕事内容は変更する)の条件は、企業によって振れ幅がある。
少なくとも上場企業辺りだと月額給与は274,000円(税込)辺りが一つのラインとなる。
この金額は非常に緻密な設計された金額だ。
年収にすると3,288,000円。
実は、この年収額、所得税10%の上限限界値のギリギリの額。
あと1万2千円で所得税率が20%になる。
だから閾値がこの数字なのだ。
さて、再雇用時の給与に対しても、住民税等がかかるが、退職直後から1年半程度は、前年分の年収に対応した住民税がかかるため、しばらくの間、手取りを圧迫する点は退職前に留意が必要だ。
なお、企業の継続再雇用者の場合、別途、高齢者継続雇用給付金の支給がある。
支給額は、再雇用時の給与と交通費の総額によって、若干差はあるのだが、月額で3万~5万円程度(上限値あり)が別途ハローワークから企業を通じて支払われる。
なお、この額には税金がかからない。
ご自分の給付金額がいくらになりそうかは、以下のサイトが目安になるだろう。
報道によれば、今から2年後辺り(2024年)から支給額が段々と減額され、70歳定年が定着するまでには、給付金制度そのものがなくなるらしい。
これがあるとないとでは随分と違うが、現在40代から50代前半の方々にはちょっと厳しい時代になりそうだ。
②天下りやスライド転職は、その人の人脈力が全てとなる。
人脈は相当な資産だ。
還暦の時点で役員や本部長、部長をやっていても、真っ新な市場に出ると会社で評価されていたような価値のない人は沢山いる。
市場価値に左右されないためには自分のキャリアに多少の下駄を履かせる必要るが、それが人脈だ。
もちろん実力がある人や資格のある人は、高収入転職サイトを使っての転職も可能だろうが、かなり例外だろう。
人脈は実力の一つだ。
しかしその人脈が救ってくれるかは個々人次第。
私の元上司は、年収2千万円の人だったが、今は400万円位になっている。
彼には人脈が無かったからだ。
人にもよるだろうが、これが私の見ている現実の景色だ。
③現役時代に年収が高い人ほど再就職で失敗し易いから要注意。
現役時代に年収1千万~2千万程度をもらっていた人は、自分の市場価値を錯覚しがちだ。
その当時の年収は、努めている会社の累積実績で、市場評価とは関係ない。
多くの定年退職者もしくはリストラによる退職者は、転職の際、最低でも現役時代の8掛けぐらいを基準にするが、そのレベルの年収を獲得出来る人は、少なくとも転職先の会社の業績に直接的なプラス、つまり売り上げと利益をもたらすと判断される人材のみだ。
仕事のネタを持っているか、仕事のネタを持ってくる人脈を持っているか、圧倒的な技能を持っているか、経営を立て直すことが可能と判断できる実績のある人材のみとなる。ジェネラリストの市場価値は低いので要注意。
④自営業を始めた人。
自営業者の頼りは営業力と人脈と業務対応力だろう。
私の知り合いの一人は、自営でそこそこ成功しているが、その人の場合、人脈構築と業務への信頼の累積の結果なのだと思う。
サラリーマンを終えて自営業を始めることを考えている人に大切なのは、事前準備だろう。
自分の能力の何をマネタイズするのか、その市場はあるのか、どこまで実現可能な事業なのか?等々、思い付きで始めるのだけは避けないと失敗の憂き目を見る。
⑤還暦後の病気入院。
実際、驚くほど病気になって入院する人を見た。
結構重症の人もいて、長年の疲労が身体に出てくるようにも思える。
ガン、心臓病、更年期障害、うつ病、脳卒中、脳梗塞、足腰の問題などだ。
私のかつての知り合いは、70歳前半で亡くなる人が多いのだが、仕事柄、若い頃にかなり無茶な生き方をしていたためかもしれないと感じる。
還暦を過ぎると思った以上に身体は悲鳴を上げているので、大切にしないと何も出来ない時間を過ごす事になる。
10億円を持っていても、健康を損ねていたら無意味である。
いずれにしても病気こそは、高齢者の最大の敵となる。
健康でないと殆どの時間を回復のためだけに費やす事になるが、健康のまま、死ぬはずもない。
従ってそうなる前にやれれることをやっておく、というのも高齢期には重要に思っている。
⑥熟年離婚。
少なくとも私の同僚2組は定年退職を機に離婚した。
2組の離婚理由は様々だが、1組は最高裁まで離婚条件で争って負けた。
どうやら弁護人の実力の差があったようだ。
2組に共通しているのは、慰謝料を払ったのが夫側、また年金受給額の40%を元妻に渡さなければなった点だろう。
年金分配については法律で決まっているから仕方ない。
先に書いたが、夫側は、妻に慰謝料を支払っている。
1組は住んでいたマンションを譲渡、1組は800万円余りの現金をを支払っている。
彼らから色々と話しを聴いたが、重たい話ばかりでここには書けない。
2組とも最終の決着までに数年かかっていたようだが、かなりのエネルギーを取られたようだ。
熟年離婚は、結構ダメージが大きい事象だと感じた。
⑦知り合いに1名だけだが、無貯金者がいる。受給できる年金も僅かのようだ。
どうやって乗り切るつもりなのか、理解不能だが、あっけらかんとしていて本人には危機感が全くない。
ある意味、凄い人だと感心している。
でも、その人は、必ず金の問題に行き当たるだろう。
その備えは、個々人、対応しておかないと辛い現実に直面する。
⑧独り暮らしの問題。
私の知り合いの一人は、今年の春、自宅で倒れていたところを、私が発見し、救急搬送した。
その人物は独り暮らしだった。
私も独り暮らしなので、以前からお互いの連絡網を持っていて、部屋の鍵を持ち合っていたが、過去15年近くそれを使う事はなかった。
ある夜、何度電話しても出ないため、ちょっと不安になり、私の自宅から1時間半ほどの場所に住むその人物の自宅まで行く決意をする。
ピンポンしても出ないので、合鍵でドアを開けたが中からロックされていて全部開かないため部屋に入ることが出来なかった。
隙間から名前を呼ぶと、居間らしい場所から”動けない・・”と言っている声だけが聞こえる。
騒ぎを聞きつけて、お隣さんが部屋から出てきたので、事情を説明し、お隣の部屋のベランダから部屋に入ると(ちなみに部屋は5階にある)、居間の中央で倒れているのを発見し、救急搬送、緊急入院。(コロナのため入院先決定に2時間を要した)
5週間の入院後、一度退院したが、約一週間後、再度倒れ、また私が緊急搬送。
結局延べ5か月近い入院生活を送る事となった。
毎月の入院費用が約30万円かかっているが、それは肉親(弟)が立て替た。
また、友人とは言え赤の他人だから、搬送当初、その人の保険証、お薬手帳のあり場所、銀行のATMカードの保管場所、暗証番号、親族の連絡先などが全く分からず、入院措置を行うだけでもかなり大変だった。
独り暮らしの方は、身内にしろ、友人にしろ、誰かに自分の重要情報(クレジットカードか銀行のATMカード関連情報)をシェアしておかないと、イザという時に周囲に大変な迷惑をかけてしまう。
また、必ず金が絡むため、金の部分は自分で責任を持って対応しないと、次の時に助けてもらえなくなる。
最後は肉親が頼りになるのだが、金の問題は別である。
還暦後の独り暮らしの危うさを見せつけられた。
⑨自分の残りの命の時間。
男性の健康でいられる平均年齢は72歳、女性が75歳くらい。
また死亡年齢の男性平均は81歳、女性平均は87歳だ。
つまり健康年齢を過ぎて10年ほどでお迎えが来る。
従って平均健康年齢を目安に、旅行など自分の活動を伴う欲求を満たしておかないと、やりたくても出来なくなる可能性が高いのだ。
還暦を過ぎると、自分の死から逆算して人生を考える事が多くなるが、致し方ない。毎年桜並木を見る度に、あと何度かなぁ、なんて思う事があるに違いない。
生きとし生きるものは必ずお迎えが来るのだから。
ほんと、人それぞれに千差万別の還暦後、高齢生活なのだ。
還暦後の人生は、野球で言えば、7回裏から9回裏までが試合の残り時間なのだが、出来るだけストレスなく、幸福感に包まれて生きて行きたいものだと思う。