本書は、自身も貧困家庭出の著者が、様々な世代で貧困と定義出来る人達に取材してまとめたものだ。

普通に暮らして居る人々にとって、本書に登場する人々が日本に実在する現実は中々受け入れ難い。
東京に暮らしていると、数多くのホームレスに遭遇するが、ここに登場する人々は、普段我々が何気なくすれ違っている人かもしれないのだ。

ここ何十年か感じることであるが、日本はある年齢以降、一旦仕事の選択等で人生の方向性を誤ると再浮上が難しい。本書にもそのような人たちが何人か登場する。

特に35歳以降になると、条件の良い仕事を得る事はただでさえ困難になり、大抵は縁故による採用以外は再浮上のきっかけを掴めない。

私も42歳の時にある会社を退職し、業態を変えて転職する際、ハローワークに行った時の衝撃を記憶している。
ハローワークにはほとんど自分の過去のキャリアを継続的に受け入れてくれるような企業の応募情報がなかったからだ。
また大抵は、前職よりもはるかに条件が悪い。

私の場合、たまたま過去の仕事で知古があった人物によって紹介された上場企業で働く機会を得て事なきを得た。
もしあの紹介がなかったら、私はこの本に登場する人たちの1人になっていた可能性は充分高いと思っている。
そういう意味で私の人生はギリギリのところで踏みとどまった。

本書で特に印象的だったのは、家庭環境が劣悪で、それが子供の将来に決定的な傷を残してしまうと言うことだ。

特に教育に関しては、家庭環境とは関係なく優秀な人も存在するはずで、そうした人を救い上げるシステムを持っていなければ今後の日本の人材育成に大きな瑕疵を作るだろう。

教育国債を発行し、日銀が直接引き受ければ、この財政上借金にはならず、加えて教育への先行投資も可能になる。
しかし財務省はこれを認めないだろう。


我々は、デフレ圧力が長い時代を生きているため、給与も上がらず、当然のことながら消費に慎重になってしまう。そこに消費税増税があり、加えてコロナが来た。

財務省は、コロナ増税を目論んでいると言うが、そんなことをすれば日本の経済はたちまち奈落に落ち、税収を上げることも難しくなる。
プライマリーバランス黒字化を言う人がいるが、プライマリーバランスにこだわれば、確かな金融政策を逸してしまう。

当然そうなれば、財務基盤の弱い人たちはさらに下層方向へ圧力を受けるだろう。

政治家の主要な内政は、経済を上昇させる施策を打ち、失業率を下げることである。

コロナ終息後は、それに集中して欲しい。