(前回記事)
心の履歴(53)
それでも不燃焼
2023-06-07
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12805305191.html
(今回記事)
2008/02/08 著
一月、大学から田舎の両親宛に届いた一通の手紙。
それは、私の退学届け受理の知らせであった。
寝耳に水。
狼狽(ろうばい)している両親に手紙を書く。
「一筆参上。今後、親子の縁は切らせていただきます。独力で生きて行きます。」
大学から呼び出しがあった。
事情聴取。
面談は当時ミニゼミ担当助教授。
この大学の受験科目は英・国に選択1(社、数)の三科目で、各科目100点の計300点満点。
私の受験科目は英国数の三科目。
彼は法学部合格受験者の得点分布図を広げた。
そして私のこの大学の受験得点を示した。
合計186点(62%)である。
合格者全体の平均は57%だったのでそれよりは上ではあるものゝ納得がゆかない。
科目ごとの得点を見た。
何と、100点満点得たはずの得意の数学が40点台で思わず苦笑した。
何しろ、試験の時、文字が書かれてある問題用紙のその文字の上を計算用紙として使ったから、解答がどこにあるのか分からなかったのかな? それとも、紙面が混乱し、結果、小数点を付ける位置を間違ったのかな? それとも試し算もせずに時間内に解答用紙を提出したからかな?
助教授は、「どこの大学を再受験するのか」と聞く。
私は「阪大理学部高分子です」と返答する。
教授「君の数学の実力では無理じゃないかな」
更に教授、「再受験に失敗した場合、復学出来る。但し、1回生(1年)からやり直しだが」
お断りしました。
復学はしないと。
背水の陣。
《天は、またまた我に試練を!》
いよいよ三月初めの試験まで残るは一週間。
前年の轍(てつ)を踏むまい。
心身万全!
この本番一週間前の朝、突然、隣室から大きないびき。
「ガゥ~~、ガゥ~~」
仕切りの壁が振動するほど。
それが昼を過ぎても続く。
緊張している私には、気になる、気が散る。
壁をドンドン叩いた。
「うるさいぞ~!」
依然と続くいびき。
夕方、宵闇。
階段を誰かが小走りに上って来る。
女性の足音。
隣の部屋に入って一瞬間をおいて、ドカドカと階段を小走りで降りて行く。
暫らく。
「ピ~ポ~、ピ~ポ~」
救急車。
私の部屋の真下に停まる。
誰が急病なの?
彼等は隣室にドヤドヤと駆け上がって来た。
そして、いびきの音が部屋を出て廊下を降りて行く。
隣の彼だ!
担架でかつがれ救急車へ。
「ピ~ポ~、ピ~ポ~」
睡眠薬自殺を図ったと言う。
大学三回生(三年生)。
いつも男女ペアーで遊びに来ていた女性の方に恋をした。
横恋慕?
愛していると告白。
女性は彼を選択しなかった。
絶望した彼。
死を選ぶ。
前日、遺書を彼女に郵送して。
《絶望への序》
前日までの京底冷えの夜とは違い、何故か暖かいその夜。
窓を目いっぱい開けました。
「愛するとは!」
「絶望とは!」
「死するとは!」
「別れの言葉も言わずに、田舎を去った私とは!」
「愛しているとは!」
「幸せとは!」
「恋しい!!」
無風。
生暖かな空気の静止。
いつの間にか子の刻は過ぎ、丑の刻。
窓辺の私。
いつしか思考停止。
つづく
心の履歴(55)
発汗で湯船となった布団
2023-06-09
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12806733348.html
m