(前回記事)

ドラッカー名言/至言[16]~[20]
2023-06-02 

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12805743899.html

(今回記事)

ドラッカー [21]
重要な問題ほど全会一致で決定してはいけない
『エッセンシャル版マネジメント』より


 「マネジメントの行なう意思決定は全会一致によってなしうるものではない。対立する意見が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めてなしうる。したがって意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである」(『エッセンシャル版マネジメント』)


 二〇世紀最高の経営者GMのアルフレッド・スローンは、反対意見が出ない案については、検討不十分として結論を出させなかったという。


 意見の対立を促すには理由がある。一見もっともらしいが間違っている案や、不完全な案にだまされなくするためである。頭脳と感性を刺激し、すばらしい案を生み出すためである。


 常に代案を手にするためでもある。行なった意思決定が実行の段階で間違いであることや、不完全であることが明らかになったとき、途方に暮れたりしないためである。


 そもそも戦略にかかわる問題については、ある案だけが正しく、ほかの案は間違っているなどと考えてはならない。

 

そのようなことは、ありえないとすべきである。もちろん自分が正しく、他人が間違っていると考えてもならない。なぜ意見が違うのかを常に考えなければならない。


 「明らかに間違った結論に達している者がいても、それは、なにか自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなければならない」(『マネジメント』)

ドラッカー [22]
経営において外部からの血を入れる重要さ
『現代の経営』より

 「人事は社内だけで行ってはならない。これは原則である。マネジメントには外の血を入れることが必要である。それは独善や社会からの遊離を防ぐために必要である」(『現代の経営』)


 マネジメントの高い地位に外部から人を招くこと、および招き入れたからには内部から昇進してきた者と同じ待遇を与えることが必要である。しかも、そのことを組織中が理解し、当然のことと納得していなければならないという。


 ドラッカーは典型的な例として、米大手小売業シアーズの歴史を紹介する。シアーズ内部の通信販売業で育った者たちだけでは、その後の成長をもたらした小売事業への展開を行なうことはできなかった。外部から人材を招きいれた結果、事業の転換が可能となった。


 同じようなことがヘンリー・フォードのワンマン経営のあとにも見られる。フォードの再建にはライバルのGMからさえ、トップマネジメントの人材を引き抜かざるをえなかった。


 外には内よりも優れた人材がいるということではない。外にいたということが重要な意味を持つのである。


 日産自動車はルノーからの資金を必要とした。しかし、今となってみれば、本当に必要としたのは、カルロス・ゴーンという外からの血だったことがわかる。


 「危機においてだけではなく、常時外部の人間を招き入れることによって、危機を予知しなければならない。そして、危機を避けなければならない」(『現代の経営』)

ドラッカー [23]
マネジメントには基本とすべき三つの役割がある
『エッセンシャル版マネジメント』より

 「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織のためではない。自らの機能を果たすことによって、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく、手段である」(『エッセンシャル版マネジメント』)


 ここにいう組織とは、企業、政府機関、非営利組織など、特定の目的を持つ人間集団を指す。これらは、家族、親族、地域共同体など、絆そのものに価値を持つ人間集団と異なり、目的は組織の外にある。組織の外である社会に対し価値ある成果をもたらすがゆえに、社会の資源を委ねられているにすぎない。


 その組織を動かすものがマネジメントである。ドラッカーはマネジメントには、組織を社会に貢献させるうえで、基本とすべき次の三つの役割があるという。


 第一に自らの組織に特有の使命を果たすことである。
 第二に仕事を通じて働く人を生かすことである。現代社会においては、組織が、生計の源、社会的な地位、コミュニティとの絆、自己実現を手にする手段である。
 第三に自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献することである。


 最近目にする組織の不行状、不祥事の多くが、これらの基本を忘れたことに起因しているかは明白である。


 「転換期にあって特に重要なことが、変わらざるものとしての基本と原則を確認することである」(『エッセンシャル版マネジメント』)

ドラッカー [24]
重要なのは多様性
世界に今以上の均質性はいらない

『ネクスト・ソサエティ』より

 「日本にとってもっとも重要なものが社会である。日本の社会が強固か脆弱かは別の問題である。重要なことは、日本が社会を最重視することを当然としていることにある」(『ネクスト・ソサエティ』)


 ドラッカーは、日本が日本のよさを生かしながら近代化したことに感服する。日本は近代的でありながら、かつ日本的な制度と政策を追求したからだ。


 それは終身雇用であり、系列であり、輸出振興だった。さらには産業と金融の保護だった。しかし彼は今日の転換期にあって、それらの制度や政策は袋小路に入ったという。


 日本が今日の問題に独自の解決策を見出し、再起することに彼は期待する。「世界にはこれ以上の均質性はいらない」という。必要なのは多様なモデル、多様な成功、多様な価値観である。


 日本には社会的な安定、コミュニティ、調和を維持しつつ、かつ知識労働と知識労働者に必要な移動の自由を実現せよという。日本の解決が一つのモデルとなるであろうからである。なぜならば、いかなる国といえども、社会が真に機能するにはコミュニティのきずなが不可欠だからである。


 「日本も今日の姿とは違うものになるであろう。あらゆる先進国が今日の姿とは違うものになる。自らをマネジメントすることができ、マネジメントしなければならないという知識労働者の登場は、あらゆる国の社会を変えざるをえない」(『明日を支配するもの』)
https://www.iot.ac.jp/manu/ueda/column/030927.html