(前回記事)

心の履歴(104) 

前代未聞「仕事をさぼってくれ」
2022-04-10 

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12736488117.html

 

(今回記事)

心の履歴(105) 

当たり前の事がノウハウ

2009/01/20 著

先輩二名と私との大きな違いは、私は胸を張って小売店を訪問したことです。

法律的には一旦大阪珍味食品(株)に売り渡した機器の所有権は我社に無く、手形訴訟上の債権があるだけですから、生真面目な先輩二人にとり小売店訪問ではビクビクした態度なのです。だから小売店から不信を抱かれるのです。

私にとってかって古物商を兼ねる家電小売店のアルバイト店長時代、倒産劇や夜逃げ等に何度も立ち会ってきた事ですから慣れたもの。こういう場合、現物を押さえた方が勝ちなのです。

この小売店から捺印をもらう行為は、現物を押えると同時に、私の大義名分は、小売店を食品企業の倒産トラブルから防ぐもの。

ですから、つかつかと真っ直ぐに奥にいる店主に歩み寄り名刺を出しました。


私、開口一番「新聞でご存知だと思いますが、大阪珍味食品(株)が倒産しましたね。倒産に付き物のややこしい人間が、債権者として乗り込んできています。-

 

- つきましては、メーカーである弊社が、小売店の皆様にご迷惑をかけさせない為に訪問しました。機器の側面に貼られているアルミの銘板を御覧下さい」


と言って店主を機器まで連れて来て、銘板を確認させるのです。

その銘板には、メーカーとしての我が社の名前が刻まれているのです。

「今、確認されたようにこの機器のメーカーは弊社なのです。メーカー責任として、ややこしい組織との争いで皆様にご迷惑をおかけすることは出来ません。-

- つきましては、この書類に判子を押して下さいませんか。押しましたら、メーカーである我社が全ての対応と一切の責任を負います。」

訪問の最初の三軒程は、色々と法律上の質問をしてきました。
何しろ私、二つの大学の法学部に延べ7年間も在籍しており、然も、ゼミ以外の法学部の専門科目授業に出たことはない。

 

但し、「法律時報」や「ジェリスト」などの法律専門誌を読み漁っていましたから裁判での判例知識は豊富なのです。

 

悉くよどみなくそれに明快な回答をしますと、店主はいたく私を信用し、店主の抱えているそれとは全く別の問題、例えば隣家との境界線や親族間のトラブルについての法律相談も受けました。

渋る店主に対しては、「今は指定食品以外の商品を機器に入れていますね。我社が引き揚げるまで、この機器の使い方はご自由にどうぞ」

更に渋る店主には「今後、色々な人がやってくるでしょう。その場合、我社は一切責任を負いません」
28歳の若僧が、40代50代の店主を脅すのですから。

最初の数軒で信用を得、捺印を貰ってから、倒産した大阪珍味食品(株)の機器納入先名簿を見せました。

「あなたの知り合いの店の場所を地図で描いてくれませんか」
更に、「これからそこに訪問しますから電話をしておいて下さいませんか」

それを頼りに次の店を訪問しましたら、店主が判子を持って待ち構えていました。無論、私の訪問目的は紹介してくれた店主が電話で既に説明をしてくれていましたから3分もかからなかったのです。
最大の消費時間と言えば、店を探す移動時間でした。

尚、組合法に基づき、業種別地域別商業組合があり、各組合の会合が度々開かれているから、店主の皆さん、結構知り合いが多く、連鎖でつながっていたのです。

処で、ノウハウと言いますと、知ってしまえば何の変哲も無いこと。
大金をはたいてアメリカから購入したイトーヨーカ堂の「セブンイレブン・マニュアル」のようなもの。当たり前の事を当たり前に出来ないから当たり前にする事がノウハウなのです。

 

同僚二人は、このことを知りませんでしたし、聞いてもこないので教えませんでした。そして彼等二人のやったことと言えば、何やかやとくだらん社内事務の用事を作り、外出できない口実を作ることでした。

その後のこの機器500台の顛末は、破産管財人が入札。我社は、各小売店にあるがままの現状で50万円で落札(@1,000円)。


そして倒産から一年後、この機種が突然売れ始め在庫は完売。新らたに生産を始めましたが間に合わないのです。

 

生産上りの日の工場の前の道路では数台の大型トラックが朝から積み込みを待っている状態なのです。そこで、新台の他に、この500台を引き揚げ、再塗装して出荷し、急場をしのぎました。

尚、大阪珍味食品への新台納入価格は@12万円でしたが、業者間で奪い合いとなり、購入価格が吊り上り、やがては引き上げ塗装した機器の業者渡しの価格は何と@20万円となりました。

 

それは日立に基盤を作ってもらい生産したインベーダーゲームのような騒ぎでした。

※画像は借用しました。

 

つづく

心の履歴(106)
出張とは官費での小旅行
2022-04-12

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12736831380.html
 

 

心の履歴30代①入社編:目次
2022-04-08

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12736672224.html