(前回記事)
心の履歴(339) 
道北での満天の星屑
2022-01-17 (2010/11/07 著)

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(今回記事)
心の履歴(340) 

お手並み拝見
平穏な北見での騒動でした
2010/11/09 著
 
1990年4月1日、LL社稚内牧野所長は北見営業所に栄転。
その3年前の1987年1月5日、私は広島から札幌に着任。その1月中旬、雪の中を車で札幌→旭川→北見へ。
 
道東北見の冬空は旭川と違って真っ青。
我社の北見出張所の事務所は、国道沿いで木造の年代物。
 
真冬の国道なのに道路に雪が無い。
代わって黒い粉塵が舞い上がる。
スパイクタイヤによるアスファルト道路面の磨耗である。
 
路肩に残る雪は氷になっていて、然も粉塵で真っ黒。
石炭の塊みたいなもの。

事務所の真ん中に置いてあるのはポット式オイルヒーター(煙突式石油ストーブ)。焚いても部屋は暖まらない。隙間風の好き放題。

山田君の開口一番「所長、ここの寒さは半端じゃない!」
鼻水をすすりあげながら、か細い声で言いました。
 
その彼は妙におばさんに好かれる。
特に北見商業組合の婦人部長とは入魂(じっこん)の仲。
 
私が北見に行く都度、彼の案内する最初の訪問先は、国道沿線の婦人部長の店。待っていましたとばかりに婦人部長の破顔。
 
それに彼の趣味は燻製(くんせい)作り。
それもアパートの部屋の中で燻(いぶ)す。

特に桜の木がいいとか。
 
三年も同じ部屋で燻(いぶ)し続けたら、部屋の壁とか天井とかは黒光りとか。家主のおばちゃんが、もう、諦めているとか。
 
彼の作った燻製を一度も食べる事無く、彼をその年の秋に札幌に転勤させました。彼の去ったアパートの部屋を家主のおばちゃんはどう掃除したのでしょうか。
 
北見で泊まったホテルは、当初は国道39号線(大雪通り)沿いでJR北見から北上した右側。その斜向いが我社の事務所。二日酔いでもぎりぎりまで寝ておれる。
※但し、今はその事務所もそのホテルも無い。

山田君から代わって中塚君の時代になると、宿泊ホテルは同じ国道39号線(大雪通り)ですが、JR北見駅から西へ車で10分ほど走って北にちょっと入ったホテルでした。
 
ここのホテルでは、冷泉を沸かした共同浴場スタイル。隣接するパチンコ店と同じ経営でした。
 
何しろ温泉好きですから、ビジネスホテルのバスルームよりは遙かに良好。※ここも今はもう無い。

 


 
夜の接待が無い時は、夕方、早めに中塚君と北見市街から旭川方面へ車で50分の塩別つるつる温泉に入浴しました。
それから北見の街に戻って居酒屋で乾杯でした
 

尚、旧北見市内の市営端野温泉「のんたの湯」(北見市端野町二区)は未だ掘られていなかった時です。

私の着任当時、北西の遠軽町(紋別商業組合管内)をブラウン社(G)が押え、東の美幌町(網走商業組合管内)はレッド社(SB)が押えていました。
 
北見商業組合管内での我社シェアは永年60%台を維持していました。北見市そのものをがっちりと我社が、と言うよりも、山田君が押えていましたから。
 
尚、帯広に近い常呂郡(訓子府町クンネップ、置戸町オケト、佐呂間町サロマ)はブルー社(N)でした。
 
そしてこの地に、LL社稚内から転勤してきたのが牧野所長。
処が、着任の挨拶でLL社北見(営)を訪問するも、所長の椅子にデンと座って毅然としている。余程北見所長の椅子の座り心地が良かったのでしょう。
 
稚内の時と同様、この北見市場をどう攻めるかについて私に相談を持ちかけてくるものと思っていました。だがその気配さえない。
 
稚内所長時代とは別人でした。
男、ポジションで人間が変わる。
  
間も無く、稚内の会議室と同様、ここの会議室でも模造紙に描かれた地図を何枚も壁に貼っているとかの情報が入りました。

私には見せてくれませんし私も知らん顔をしていました。彼は稚内での成功体験を基に、ここでは自分だけで戦略を練り、実践し、成功する自信があったのです。
 
気持ちは分かります。一つの事で成功すると、全てを知ったものと勘違いするのが人の常。

まあ、稚内では柳の下にどじょうがいたから、北見でも同様に柳の下にどじょうがいると思っている。
 
当初、牧野所長は、我社の顧客全てにLL社ロゴ機を設置する故、今まで我社が顧客に販売した機器を引揚げ、それを買い取りせよと中塚君にとんでもないことを言い出しました。
 
稚内での成果が彼を傲慢な男に変えたのです。

水無瀬のやることは分かっている。

あの程度なら自分の方が力が上だと。

恩もへちまもありません。


然し、ここ北見エリアは我社がNO.1。
これに同意しましたら利益は吹っ飛ぶどころではない。
 
何しろ買取した古い機器の転売先はこの市場では無い。
丁重に断りを入れさせました。

と、牧野所長は、ブルー社(N)と組んで我社の牙城の北見市街に攻めると宣言。
 
稚内市場ではランチェスター戦略の「二点攻略・はさみ撃ち」で成功しましたから、ここ北見市場でもこの戦略が通用すると思ったのでしょう。
 
昨日の友は今日の敵。
然し、LL社北見(営)が例え敵方ブルー社(N)と組んだとしても、大事なお得意さんのLL社北見(営)と真っ向から対決するわけには行きません。
 
それはそれ。
これはこれ。
 
中塚君への指示は
「特別な手は打つ必要が無い。従来通りの活動の続行で充分」
 
私はにやり。
 
我等が意識的に何ら新たな手を打たない状態でも、果たして彼の描いた戦略は成功するのか? 我が社を追い詰めることはできるのか?
 
お手並み拝見!

つづく

心の履歴(341)  勝敗は「将」次第
2022-01-18 

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『心の履歴』40代北海道編 目次(2)
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(自)心の履歴(312)~
(至)心の履歴(385)
(追記)北-追1~追5
画像提供の御礼

 

『心の履歴』40代北海道編 目次(1)
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