(前回記事)

心の履歴(283) 
亜子との秘密の約束
2021-12-15 (2010/07/05著)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12715421563.html

 

(今回記事)

今回記事は2020-09-14 に本ブログに掲載したものです。

記事の時系列に沿って再度掲載しました。

 

心の履歴(284) 

悩む19歳の亜子は可愛い
2010/07/07 著
 
二日後、亜子から電話。
「眠たい声で、どうしたの?」
 
「昨日、友達と相談して朝帰りになったものですから」
「平日に徹夜なんてどんな友達かいな?」
 
「昔からの親友です。所長さん、やはり私、正社員は無理ですわ」
「何が無理なの? 履歴書はアルバイトでも同じでしょう」
 
「所長さんに何れ迷惑をかけることになるので」
「僕の事は心配無用。ともかく書き直した履歴書を持ってきて」
「分かりました。一時間後にお伺いします」
 
亜子が再度来社しました。
白紙の履歴書を持って。

二人で何処の高校を卒業した事にするか、亜子の情報を基に検討。履歴書を書き改めました。
 
履歴書偽造で然も会社務めの未経験者の亜子にとって不安なはずです。それでも私は正社員に固執しました。

会社に提出する書類は長期アルバイトで提出しました。
数ヶ月勤務後に正社員検討を約して。
 
10日後、亜子の初出社日。
やはり異様でした。
 
朝礼で改めて彼女を紹介し、机は私の前の列で常に見えるように。そして、草野君の助手を命じました。
 
「所長、やっぱり私、無理ですわ」
「何でまた」
 
「だって、皆さん私をじろじろ見るのですもの」
「そりゃそうさ。男だったら君の大きな胸が気になってしゃーない。でも、今日より明日。明日より明後日。だんだん君の胸に慣れてくるから」
 
「そうでしょうか」

「それはそうと、今日、君の大歓迎会を『サッポロビール園』でやるからね」

 


 
「申し上げたでしょう。ドクターストップがかかっていることを」
 
「分かっていますよ。でも、入社歓迎会は、いつも『サッポロビール園』だからね。もう予約は入れてあるよ」

 

「私、困ります。やはり、会社務めは無理です」
「その話は、君の歓迎会の後にしてくれ」
「分かりました」
 
夕方、ほぼ全員が午後6時までに帰社。
タクシーを5台呼んで、順次ビール園へ。

ジンギスカンで生ビール飲み放題。@3,000円也。
これは会社の経費で落とせる額。

 


 
大ホールはほぼ満席。
恒例にて一気飲みが始まりました。

 



中ジョッキで、男は3杯から12杯を一気に。
由紀ちゃんは半分ほど飲んでお仕舞。
 
次は、亜子。
「所長、私も飲むのですか?」
「恰好だけでも」
 
ちょっと飲んで止めるつもりの亜子。
周囲が「一気!一気!」とはやし立てる。
 
で、それでお仕舞のはずだが。
「たいしたことが無いなあ」との声が聞こえる。
 
「所長、いきます」
「止めとけ!」

そう言った時には、もう「ゴクゴクゴク!」で空に。
 
大拍手!
「流石!」の声。
 
更に、傍にはもう一杯が差し出された。
「亜子! 止めとけ! 皆さん、亜子はドクターストップがかかっていますからもう勧めないで下さい」
 
宴のたけなわ。
暫し後、青白い亜子。
 
「亜子、どうした?」
「休んでいれば大丈夫です」
 
ビア・ホールの端の隠れた場所の椅子に座り、薬を飲みました。
「落ち着いたらタクシーで先にお帰り」
 
「所長、それは出来ませんわ。私の歓迎会ですもの。40分程したら席に戻りますから所長は皆の所に帰って下さい」
「よし、分かった。そうしよう」

翌朝、亜子を見る皆の眼差しに温か味が出てきました。
三日もしたら、はしゃぎ出した亜子。
 
すっかり溶け込んだ亜子でしたが、11月の観楓会(社員旅行)には参加拒否。
翌年2月になり、温泉一泊社員研修にも参加しないと言う。
 
「亜子、僕の腕の傷跡を見て御覧。これは小学校1年の時のBCGで腫れて膿を出す為にドクダミを使ったんだ。火傷(やけど)のようになっているだろう」
 
「私の火傷の跡と似てますね」
「身体のあちこちに腫瘍が出来て治った跡だと言ったらよいよ」
 
実は、亜子の腕には、煙草の火傷(やけど)の跡が幾つかあったのです。ズベ公同士の喧嘩の結果は煙草の火の灸(やいと)。だから、夏でも半袖は着なく長袖だとか。
 
「亜子、自分が気にしたら他人も気にする。逆に火傷をオープンにした方がよいかも。出来物の跡だと言って」
 
不安な顔をし、ようやく一泊二日の研修会参加に同意しました。

さて、研修会の夕食は、いつもの通り宴会。
亜子も温泉入浴後で浴衣に半天・丹前姿。
 
はしゃぐのが好きな亜子に時々耳打ち。
「おまえのは裾の乱れどころじゃないぞ。前をちゃんと閉めよ」
「あら、ごめんなさい。私、浴衣を着るのが下手ですもの」
 
翌朝、朝食の用意が出来たとの事で廊下に出ました。
魚住君と木村君が、走って逃げて来ます。
「ワァ~! 化け物だぁ~」
 
廊下には、亜子が立っていました。 
「こらっ!亜子! そんなすっぴんで出て来る奴があるか!」
「すみません。朝食だと呼びに来たものですから、化粧していないことをすっかり忘れて」
 
無化粧だから唇は蒼白。それに眉毛は剃っていますし、髪は振り乱れて、一見、デス・マスク。

 

つづく

心の履歴(285) 
不夜城をシャコタンで駆けた亜子
2021-12-16 (2010/07/09 著)
(2020-09-15掲載)

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12624746918.html

 

 

『心の履歴』40代北海道編1⃣ 目次
(自) No.241 1987年1月~

https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712060251.html
 

 

(画像)
サッポロビール園

https://youtu.be/ZrMnYXquKKs