（前回記事）
心の履歴(294)
未来に輝くヤングレディ
2010/07/24 著
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12627018783.html
（今回記事）
心の履歴(295)
セールスレディの社内戦術
2010/07/26
私に報告や依頼の場合、男性社員は私の机の前に立つ。
処が、女子の場合は、私の椅子の真横に立つ。
いつも世子（よこ）は私の左手に、亜子（あこ）は右手に立つ。
その時、二人共に私の椅子の肘掛は、彼女等の身を委ねる場所となる。ここが他の１９・２０歳の女子４名との大きな違いだ。
肘掛の上にある私の肘に彼女等の柔らかな腹部が当たるのである。 男なら誰でも理容店で体験する光景だ。
だから私は、一呼吸おいてから少しずつ肘を引っ込める。急に肘を引いたら密着していることを意識をしていると思われるから。
亜子の場合は、これに留まらない。
肘を引いたら、亜子の腹部は、私にのしかからんばかりに更にぐっとめり込んでくる。
私はいつも大きな声で言う。
「こら、亜子！ あんたは私にくっつき過ぎだ！」
何度言っても変化が無い。
然らば、「亜子！私から２m以内に近づくな！」
事務所の全員、皆、大笑い。
その時は、確かに２m離れた右横に立つ。
そこで亜子は大きな声で物申す。
次回にやって来た時にその距離はいつの間にか1m。
その次は距離ゼロで元の木阿弥（もくあみ）。
横に立つ亜子を見上げないで正面を見ながら話していると、机と椅子の間に、仕舞いには私の両脚の間に割り込んでくる。
彼女等の言う言葉はいつも同じく必死。
「所長、是非この書類に判子下さい」
あるいは「所長、お願いします」
目標達成講義や逸話の効果が出すぎたからかもしれない。
明らかに彼女らの事務所内の戦術だ。
NO！と言ったら、YES！と言うまで何度もやってくる。
注）何十年経とうが、肘掛け椅子に座ると、今でも左肘には世子の、右肘には亜子の女性特有の柔らかな腹部の感触が残る。
魚住社員が一度だけ私に抗議したことがある。
「所長は若い女性には甘すぎます」
「どういうことかね」
「女性には接待交際費を自由に使わせて！」
「接待稟議書を出してくるから、決済しているだけですよ」
「それじゃ、僕達も自由に使っていいのですか？」
「あれ？使って下さいと言っているでしょう。処で、君は月に幾ら使えるのかね？」
「僕の場合は５万円もあれば」
「その位しか使えないでしょう？」
「もっと使っていいのですか？」
「構わないけど、果たして君に毎月５０万円使えるかね」
「毎月となると出来ません」
「出来たら大物」
「どうしてですか？」
「一緒に飲もうとする顧客が果たして何人いるかね？」
更に
「ビジネスの世界で、顧客はおいそれと飲む誘いには乗らない。一緒に飲むとしたら、過去や今後に数字が伴う事が前提だね」
★
接待交際費は、社員なら自由に使いたいとの願望がある。
接待交際費を自由に使えたら、数字が上ると思っている。
だが、使って効果が上る相手は少ないのが現実だ。
男子の場合の接待交際費の使途の大半は、部下との飲み代とか、自分の行きつけの居酒屋とかスナックとかのツケの払いにまわっており、肝心のお客さんとは飲んでいないのが現状だ。
★
「魚住君、彼女達が僕と度々同行して、お客さんを訪問する目的が分かりますか？」
「分かりません」
「私を連れて行く先は『チェーンなどの組織本部』『各商業組合のトップ』『見込み客』『継続取引先』『情報提供者』『有力者』だよ」
「挨拶訪問でしょう？」
「そこが君達とは違う所だよ。真っ赤な表紙のダイアリーを広げて『社長さん、今度の金曜日午後６時、飲みに行きましょう！』って誘うのだよ」
「でも、その社長は行かないでしょう」
「亜子の場合、その時、私はすかさず亜子に免許証を出させて相手に見せる」
「見せてどうなるのですか？」
「私が亜子と初めて会った時と同様、相手はカルチャーショックを受けるね。２５歳はとうに過ぎていると思っていたのが、もうすぐ二十歳と言えども、未だ十九歳の乙女だよ」
「で、相手の返事は？」
「皆で大笑いさ」
「それじゃ、それで仕舞いですか？」
「それが始まりさ」
「エェエッ？」
「相手は、スケジュールを亜子に合わすんだ！」
「所長も接待に行くのですか？」
「いやいや、僕は行かないよ。ゲームの主役は亜子。僕がその席に登場したらゲームはぶち壊しだ！」
亜子は肝臓を壊していてアルコールは一切飲めない。
その彼女が、酒の席でどう演じるのか観たくもあったが。
私は、世子と亜子の夜の接待には一度も付き合った事が無かったのです。
但し、彼女等の操（みさお）を守るために、苦労させてもらいました。
つづく
『心の履歴』40代北海道編1⃣ 目次
（自） No.241 1987年１月～
https://ameblo.jp/minaseyori/entry-12712060251.html
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