うちの近所のソメイヨシノも、咲き始めました。
今年の京都は例年とは違い、喧噪たるわめき声の途絶えたかっての静かな古都の桜を満喫できそうです。
(そうだ 京都、行こう)
京都 桜の名所開花情報2020
https://souda-kyoto.jp/travel/sakura/index.html
この桜の時季、京都のお寺の静かな境内を、ゆっくりと散策しますと浮かんでくる詩。
それは三好達治の『甃(いし)のうへ』。
今回の以下の記事は、2007/04/12 三好達治の詩を口ずさみながら、南禅寺の境内を散策したときのものです。
(写真は三門)
この詩『甃(いし)のうへ』は、中学時代の教科書で習った三好達治の詩集『測量船』(1930)の中の一つで、大半の方は思い出せるでしょう。
何しろロマンティックな詩ですから。
(画像)ウィキペディア
八日、南禅寺に寄りました時、「み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ」を、偶然、赤レンガの水道橋をくぐった所の南禅院で見つけました。
それから「廂(ひさし)々に 風鐸(ふうたく)のすがたしづかなれば」を見上げました。
写真の風鐸(ふうたく)は、法堂正面右端のものです。
この下で、風鐸(ふうたく)を見上げていますと、五人の女性連れにパチリを頼まれました。
私「うまく撮れているか確認して下さい。ぼやけていたら撮り直ししますから」
内、一人の女性「ぼやけていた方が、きれいに写るから、その方が良いよ」
(法堂南側)
詩の初めは「あはれ花びらながれ 『をみなご』に花びらながれ 『をみなご』しめやかに語らひあゆみ 」。
この詩に登場する『をみなご』とは、彼女達の四十年以上も前の姿だったでしょう。
今や「しめやかに語らいあゆみ」どころではありません。
彼女達、人生、謳歌です。
(法堂)
「ひとりなる わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ」とこの詩を口ずさみながら、「み寺の春をすぎゆく」私でした。
* * * * *
詩 『甃(いし)のうへ』 三好達治
あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなご しめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音(あしおと) 空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳(かぎ)りなき み寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍(いらか) みどりにうるほひ
廂々(ひさしひさし)に
風鐸(ふうたく)のすがた しづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ
* * * * *
(参考)『おみなご』の意味と語源
《古くは「おみなこ」》女児。または、一般に女性のこと。
日本神話に登場する最初の男女神は、イザナ「キ」ノミコトの『キ』(男)、イザナ「ミ」ノミコトの『ミ』(女)であり、「おきな=翁」「おみな=嫗」という言葉もあります。
イザナキ、イザナミ以前の神々は性別がなく、日本の神々で最初に性別を持った神として登場するのが、イザナキ、イザナミです。
『おみなご』とは、「おみな=嫗」(老女)の子ですから、女児や老いていない女性のこと。
尚、この詩でのおみなごとは、若い女性を指します。
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随筆「ほっこり京都人」
https://ameblo.jp/minaseyori/theme-10112125330.html
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