予想がむずかしい馬券は倍率が上がる。
時には100円を賭けて、1,000万円になったりする時もある。
この一連の事件が終わって、気づいたこと。
これは競馬で言うところの万馬券だったな・・・と。
「我が社は新本社という新しい船を得て~~」
社長は演壇が似合う。
というよりも、演壇にいる社長が水無瀬にとって一番なじみが深いだけの話だ。
神々しい社長ではない。水無瀬のような末端とも呼べる社員に、気さくに声をかける、そんなTOPである。
だが実際、そんなことは滅多にない。
TOPというのは忙しいのだ。それも半端なく。
”そう我が社は新本社という新しい船を得たのです。”
ノートにそう書き込んだ水無瀬は、感想文をすでに考え始めていた。
社長のスピーチ=感想文
この方程式が確立されるのにそう時間はかからなかった。
「10年後のビジョンは~~」
10年後彼は60歳を超えているはずである。
現役宣言をこんなところでされても・・・経営陣の苦笑いが見える。
会社方針説明会。
役員、幹部、拠点のヒラまで全員参加のこの行事。
もちろん、得意の日曜日だ。
慣れてきたのか、諦めたのか、水無瀬は当たり前のように日曜日をこの下らない儀式に費やしていた。
高野の姿がない。
そう気づいたのは各課の点呼の時だった。
風邪を引いて休んでいるならともかく、不在の理由は「作業中」であった。
そう、高野は今まさに働いているのである。
実際何人かの社員は作業中であった。
しかし、本当に忙しく責任のあるポジションならともかく、なぜ1年目の彼が・・・。