「一社会人としての自覚を~~」
某有名銀行頭取の挨拶が延々と続いている。
誰も耳を傾けていないことを知ってか知らずか、不機嫌そうなその顔と額に浮かんだ汗が小気味悪い。
日曜日だと言うのに社員は全員参加。
当たり前と言えば当たり前だが・・。
世間ズレせず、大学生→社会人とレールを走った。
超就職氷河期と呼ばれた時代。ろくすっぽ真面目に就職活動もせず原付で日本中を回っていた。
周りの人間も、厳しいご時世とあってなかなか内定を取れないでいた。
下らない話、皆がそうなので安心していた。そして、遊びほうけていた。
長旅から帰ってきて、就活でも、と生半可な気持ちで受けたのがこの会社。
就職する気なんざ毛頭なかった。社会経験として面接を。心の底から腐っていた。
しかし、すばらしい面接官だった。この日のことは一生忘れないのだろう、と今でも真剣に思ったりする。
すばらしい人との出会いは、人生を変えるというが、あながちウソではないのかもしれない。
社会人になってもいいか、という気持ちになったのはそのときが初めてだった。
パラパラという拍手の音で、それ、が終わったことに気づいた。
「続きまして~~」
ホワイトボードに書かれた進行表を見て、うんざりする。
外は雨模様。占いの類は信じたことがない水無瀬だったが、この時ばかりはこの先に不安を覚えた。
ようやく式が終わり、司会者から順番に出て行けとのアナウンスがある。
「・・・ふぅ」
気疲れなのか、これから始まるビンゴゲームへの気遅れなのか。
水無瀬はゆっくりと腰を上げた。