松下幸之助、パナソニックの惨状に現経営陣を叱る!④

 

 経営の成果は、結局は売上や利益という業績の数字に表れます。経営の理念や方針としてどれだけ素晴らしい言葉を発していても、経営の数字にそれが現れていなければ、その経営は成功とは言えません。その意味で、先にご紹介した津賀新社長の経営改革は、『普通の会社』に戻るまでの回復の道のりは早かったのですが、2015年以降の業績という結果から見る限り、そのような一応の回復後の『いい会社』を目指した次のステップに向けた経営は、必ずしもうまくいかなかったと言わざるをえないのです。

 

 今年の1月に、『週刊ダイヤモンド』と『日経ビジネス』では“パナソニックの特集”を組み、このような『パナソニックの凋落』の原因を分析しています。

 

 例えば、『週刊ダイヤモンド』は、広がり過ぎた業容の『取捨選択』の遅れ、全体最適を阻む事業部の縦割り志向、イノベーションの芽を摘む企業風土、人事の硬直性等々を挙げ、一言で言えば『大企業病』という老化現象によるものだと指摘しています。特に、日立やソニーと明暗を分けた敗因として二つを挙げています。第一に津賀社長のリーダーシップの欠如、第二に危機感を全社で共有できない大企業病の蔓延です。

 

 また、『日経ビジネス』は、“成長を阻害する4つの病”として以下を指摘しています。

第一に、長期的に事業を作り替え、成長を目指す戦略のまずさです。第二に、社内の危機感の乏しいことです。第三に、縦割り組織の弊害です。歴史的に事業部の独立性を重んじてきたパナソニックでは特に事業部間の“融合”はなかなか進まない傾向が強いとして、新中期戦略で基幹事業に位置付けられた『空間ソリューション』をめぐり、ライフソリューションズ社(旧パナソニック電工)とアプライアンス社の融合の失敗を挙げています。第四に、組織改革があまりに頻繁に実施されていることです。改革を計画しても、計画に満足して、その実行力不足で、うやむやになると指摘しています。

 

 以上の指摘も参考にしつつ、私自身のパナソニックでの経験、特に松下幸之助の経営理念を教えた3年間の経験を踏まえて、以下で現在のパナソニックの経営陣と津賀一宏社長体制(一部にそれ以前の中村邦夫・大坪文雄体制を含みます)の問題点を検討してみたいと思います。

 

 結論から言えば、本来パナソニックとしてあるべき姿に全社を導いて行くことができなかったという意味では、津賀氏自身の“リーダーシップの欠如”ということに尽きます。

 

 具体的には、パナソニックが中長期に目指すべき正しい方向を示すことができなかったこと、自ら最も強調した方針『お客様価値を徹底追求すること』を全社に実行させる“実行力”を欠いていたこと、それらの前提として、本人の“徹底した合理主義”という考え方の弊害とも言えますが、“経営の捉え方”、引いては“人間というものの捉え方”及び“生かし方”に問題があったこと、そして、その結果、“現場の実態”にあまりに無関心であったことが、津賀体制の主な問題点であったと考えます。以下、それぞれについて詳細に述べてまいります。

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