”経営の神様”松下幸之助の経営哲学-その現代の諸問題への応用
  • 13Dec
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑰:規制緩和の実態⑦

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑰:規制緩和の実態⑦ ということで、ここまで見ていただいたように、日本のグローバリズムのトリニティーの相当部分が、グローバル資本、あるいはグローバル投資家、あるいはアメリカ、あるいは日本のグローバル投資家たちの欲望によって進んでいるというのが、おわかりいただけると思います。 それでは、日本政府はなぜ断らないのでしょう。特にアメリカのモンサントとかカーギルは、明らかに農協改革や種子法の廃止を要求してきていますが、日本の政治家が、断ればいいのです。ところが、それができない状況になっているのです。 それは、『日本はアメリカの属国である』などと言われることがありますが、そのことと関係しています。私たちは、日本という国は、第二次世界大戦後1950年のサンフランシスコ講和条約によって、独立を果たしたと理解しています。形式的にはその通りなのですが、実は、同時に締結された日米安全保障条約及び日米地位協定に基づく日米同盟は、当時の冷戦期におけるソ連の封じ込めだけでなく、日本を封じ込める『瓶のフタ』として機能していたと言われています。(“二重の封じ込め”)即ち、日本が再び軍事大国化してアメリカの脅威とならないように、在日米軍基地を置いて、アメリカが支配する安全保障と経済の枠組みの中に封じ込めようとするものだったのです。当初はソ連との冷戦もあり、また、軍事面が重視される一方、むしろ日本を経済発展させて“反共の防波堤”にしようというアメリカの政策は、1991年にソ連の崩壊により冷戦が終結すると、今度は日本の経済大国化の封じ込めへと重点が移って行ったのです。それは、アメリカの核の傘の下で、軍事的に保護された日本は1980年代に大きく経済発展し、アメリカの対日貿易赤字が拡大していたからです。 そのようなアメリカの政策の変更の現れは、1989年から90年にかけての日米構造協議(SII)や1993年からの包括経済協議などです。ここでは日本市場の開放に向けた構造改革や自由化、民営化、グローバル化が強く求められました。例えば、独占禁止法の運用を強化し、米国企業の参入を阻害しているとされた日本の“排他的商慣行”を排除することなど、日本側がほとんど一方的にアメリカの要請を呑まされることが多かったのです。 安倍内閣の3本目の矢『成長戦略』の名の下に大変なスピードで進められている構造改革ですが、その内実は『日本企業の成長』というよりも、むしろアメリカなどの外国資本の要請を受けて、その日本への直接投資を増やすことを目指しているのです。例えば、TPP の交渉に参加するという交渉を行っていた時に、日本とアメリカの間で2 カ国間協議が行われ、そこで日本政府は、アメリカ政府との間で次のような合意を行っているのです。「TPP 交渉参加国との間で作成する文書」の「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」、「3. 規制改革。日本国政府は2020 年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す、日本国政府の成長戦略に沿って」「外国からの直接投資を促進し、ならびに日本国の規制の枠組みの実効性および透明性を高めることを目的とし」 実効性とか透明性という抽象表現を使っていますが、これは別に目的があって、それは日本国政府が「外国投資家その他利害関係者から意見および提言を求める」ということなのです。なぜ外国投資家なのでしょうか。「意見および提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに検討し、および可能な場合には行動をとるため」要は、閣議決定して国会で法律を変えるということです。「定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置を執る。」農協改革も種子法の改正も、このプロセスで行われました。 驚くべきことです。まるで日本国政府の上に規制改革会議があって、その上に外国投資家があるようです。これが今の日本なのです。既に民主主義は機能不全に陥ってしまいました。この書簡は現在まだ有効です。 日本政府と私たち日本国民は、このような2008年のリーマンショックとそれに続く金融危機によって、既に世界が気づいて軌道修正しつつあるグローバル金融資本やグローバル企業による新自由主義にもとづくグローバリズムの問題に未だ気づかず、周回遅れで依然としてグローバル化や構造改革、自由化、民営化に邁進しているというのが、大変残念なことに今の日本の現状です。その意味でも、私たちは、グローバル化は良いことだという虚構の世界の中に住んでいると言わざるをえません。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、困難に直面してそれを克服してきただけでなく、むしろより大きく発展させてきました。この『禍転じて福となす』経営の考え方について解説します。

  • 06Dec
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑯:規制緩和の実態⑥

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑯:規制緩和の実態⑥ そして、水道民営化です。日本の水道管は老朽化しており、問題です。問題の解決のためには、政府がお金を出して水道管を交換すればいいわけです。地方自治体では費用負担が難しいというのであれば、政府が予算を組んで地方に配ればいいのです。それで水道管を交換する。ところが、政府は『緊縮財政』ですから、水道のメンテナンスにはお金を一切使いたくない、そこで民営化だ、しかもコンセッション方式だということになるのです。コンセッション方式というのは、水道のハードウエア、水道管とか浄水場とか、そういうハードウエアについては今までどおり自治体が保有する。その上の“水道事業”というおいしい部分だけを民営化して、新規参入してくださいということなのです。そもそもの目的は、ベリタス社やスエズ社といった水道メジャーが、日本の水道サービスで稼ぎたいというだけの話なのです。ベリタス社は、以前から日本の水道ビジネスに入りたかったのですが、自然災害が問題でした。水道ネットワーク、ハードウエアまで含めて全部請け負うとなると、当然、大震災とか大規模自然災害に対する復旧の義務を負うことになりますが、そのリスクは、計算できません。大震災でも起きたら、大変なコストがかかってしまいます。そういうリスクは負いたくない。しかし、日本市場で稼ぎたい、だからコンセッション方式なのです。しかし、そういうような進め方をしたら、誰も受け入れてくれないから、「いや、水道管が老朽化しているからこれの交換が必要なんですが、緊縮財政でみんなお金がないから、民営化するしかないんですよ」というレトリックでやられたわけです。 カジノも同じです。長引くデフレーションによって経済が停滞していますが、デフレ対策は、緊縮財政だからやりません、というわけで、上に述べた理屈同様、民間に投資してもらいましょうということになりますが、民間も、デフレの国で簡単に投資は増やしません。そこで、カジノ解禁、民間投資でIR 建設を、という話ですが、自由貿易ですから、外資規制はない。つまりカジノ解禁は、外資を含むカジノ産業が、日本市場で我々国民の所得から利益を吸い取ろうとしているということなのです。 そして、『移民の受け入れ』です。これは少子高齢化に端を発する、生産年齢人口比率の低下によって、人手不足が深刻化しているという現象への対策とされています。しかし、“人手不足”が深刻なら、するべきことは『生産性の向上』でしょう。それが資本主義です。イギリスの産業革命もそのようにして起こりました。資本を投じて技術開発して、労働者を教育して、生産性を上げて、それでしのぐんです。当然政府は、生産性向上のために、例えば自分はインフラを整備し、あるいは企業の生産性向上の努力に対して助成金、補助金をつける。それで投資が生まれてデフレ脱却することができ、実際に生産性が上がります。ところが、政府は、緊縮財政だからそれはやらない。ということで、『規制緩和』して、さまざまな業種で外国人が働けるようにしましょう、というわけです。「移民政策です、自由貿易です、人の国境を越えた移動の自由化です」ということですが、これは外資というより、単に日本人の問題です。日本の経済界が低賃金で働く労働力を求めているだけの話です。人は給料を高くすれば来るわけですから。さらには生産性向上の投資をするべきなんですが、経営者は、そのリスクを負いたくない。人を安く使い続けたい。今日本はようやくデフレからインフレに変わりつつあるんですが、デフレというのは労働者が買いたたかれる時代です。これまでどおり買いたたきたい、ということで、『移民』なんです。 最後に『ふるさと納税』です。意外かもしれませんが、これも同じです。政府の『緊縮財政』と人口流出によって、特に地方の自治体の税収が不足しています。では地方交付税を増やせばいいではないか。それは『緊縮財政』だから絶対に増やさない。それどころか、むしろ減らしているのです。第2次安倍政権が始まって以降、地方交付税も減らされました。そこで、各自治体は規制緩和して、ふるさと納税というのを導入してやるから、勝手に税収を稼げばいいと。『自由競争』だから、みんな競争してくださいというのが、ふるさと納税の本質なのです。これは、誰かが儲かるという話よりも目立つのは、単なる『緊縮財政』です。政府の緊縮財政のツケを、各地方自治体の競争に押しつけているというのが、ふるさと納税なのです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント30(10)“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”④ 」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには時には『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という考え方も大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 29Nov
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑮:規制緩和の実態⑤

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑮:規制緩和の実態⑤ 次に、種子法の廃止です。種子法とは、日本国内で、多種多様で優良な種子を、安く農家に提供するという制度を担保するための法律でした。ところが、規制改革会議は“種”とは言わずに、生産資材全体の価格が高止まりしていることが問題だと言うのです。配合飼料とか農薬はそう言えるかもしれませんが、種は安く提供しようとするのですから、違います。にも拘らず、規制改革会議の提言の際にそこに一緒くたに入れられてしまったのです。政府が、「緊縮財政で、もう国民の生命の源である種の維持に、お金を使いたくない」というわけです。そこで、種子法廃止、外資規制なしの規制緩和、自由貿易が推進されました。 しかし、これは支離滅裂です。農家にとって、ひいては我々国民にとってみれば、多種多様な種が安い価格で、優秀な製品として農家に売られていることは良いことのはずです。ところが、それを問題だということにしなくてはいけなかったから、つまり、『結論ありき』で“種”を他の肥料や農薬と一緒にして、生産資材価格が高止まりしているという、全く不合理な理屈をつけられてしまったのです。しかし、本当は、安いことが問題なのです。つまり、種子法があるために、優秀な“種子”が安い価格で農家に売られているから、モンサント社などの高い価格の遺伝子組み換えの種子が日本で売れないからです。これは単に米国のモンサント社、今は買収したドイツのバイエル社などのアグロバイオ企業が日本の種子市場で利益を上げたいという、ただそれだけの目的のために、日本の規制改革推進会議が動いて、種子法が廃止されてしまったというわけです。 次に、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度です。2011年3月11日の東北大震災 以降、菅内閣が不法に全国の原子力発電を止めたために、電力会社は安定電源が不足する状況に陥りました。では政府が電力サービス安定化のために財政支出するかと言えば、「緊縮だからしません。」となる。ではどうするのかと言えば、やはり、『規制緩和』『自由化』だということで、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度、FITを導入し、太陽光や風力の電気を高値で電力会社が買い取って、そのつけを我々消費者に回すという制度を作ったのです。そもそも太陽光や風力で原発の代替ができるはずがありません。それらは安定電源ではないのですから。でも、そのような議論はすっ飛ばして、進めたわけです。その目的は、単に、FIT でぼろ儲けしたい投資家がいたからです。例えば、孫正義氏やゴールドマンサックスなどの外資系の企業まで参入してきました。 次に、最近はやりのシェアリングビジネスです。デフレ不況で国民の観光旅行が減っています。観光業が苦しい。そこで、例えば、政府がトラベルポイントを国民に配る、1 人10 万円、国内限定で1 年以内に使いなさいと。そうすれば、国民は皆観光に行くでしょう。観光業は助かるわけです。しかし、『財政破綻する』から、『緊縮財政』だから、そんなことにお金を使えないということになります。そこで、「観光業はこれからは日本国民ではなくて、外国人観光客によるインバウンドに依存しなさい。その外国人観光客向けに民泊、白タク、カーシェア等を解禁しましょう」ということで進められているのです。この真の目的は、民泊やカーシェアのプラットフォームを提供しているAirbnb とかUber などが日本市場で儲けたいということなのです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉙ (10)“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”③」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには場合によっては『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という考え方も大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 22Nov
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑭:規制緩和の実態④

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑭:規制緩和の実態④ ところが、そのような事実は見向きもしないで、『農協改革』が行われました。まずはデフレで需要不足、それに加えて輸入品の激増です。アメリカだけではなく、中国からの野菜の輸入なども激増しています。その結果、農家は儲からないので、人手不足が深刻化しました。そして、政府は農家の所得向上のため、即ち食糧生産能力を引き上げるため、あるいは生産性向上のためにお金を使うべきところですが、緊縮財政だからできないということになります。その代わりに、規制緩和、自由貿易だということで、農協改革が必要だということになるのです。具体的には、農協を解体して、全農を株式会社にし、金融部門も株式会社にして切り離して、準組合員は縮小するという話なるわけです。この目的は、別に日本国民のためでも日本の農家のためでもなく、米国の穀物メジャーカーギルが、例えば「全農を支配下に置きたい、金融部門を株式会社化して設けたい、準組合の共済の保険市場を取りたい、農協が今まで提供していたビジネスに参入して儲けたい。」ということなのです。基本的に『グローバリズムのトリニティー』というのは、だいたい“真の目的”というのは知らせないような形で進められるため、私たち一般国民には、本当のことがわからないうちにどんどん事が進んで行くこととなるのです。 例えば、全農の株式会社化です。全農というのは、実は極めてグローバルな事業体で、アメリカに複数の子会社を所有し、毎年数百万と膨大な配合飼料や小麦、大豆などの穀物を輸入して、日本だけではなくて中国とか他の国々にも売っています。売り先が多いのは、その方が、仕入れる時の購買力が高まるからです。特にアメリカのメキシコ湾岸のニューオリンズに全農グレインという、単一の穀物エレベーターとしては世界最大の会社を保有しています。全農グレインはアメリカの穀物農家と契約して、IP ハンドル、これは遺伝子組み換えです、これは遺伝子組み換えではありませんというような管理をして、それで買って輸出しています。遺伝子組み換え穀物だけを売りたいカーギルのビジネスが全農グレインによって妨害されている。それで、この全農グレインが、カーギルにとって邪魔なんです。カーギルとしては、全農グレインを買収したいのですが、全農グレインの親会社の全農は、農業協同組合つまり農協が組合員の協同組合連合会で、株式を上場していないため買えないんです。そこで、全農の株式会社化ということを考えたわけです。日本の規制改革会議のメンバーが「全農もグローバルなビジネスが展開できるように、株式会社にするべきです」と言い出したのです。全農は既にグローバル事業体なんです。ところが、こういうような発言が報道機関でバーッと流れて、「そうだな。全農もグローバルに対応するために、株式会社にする必要があるよな」ということで、実際に2020 年以降は株式会社にできますよという形の農協改革が実施されました。 もちろん、全農を株式会社化すると言っても、農協(農業協同組合法に基づく法人であり、事業内容等がこの法律によって制限・規定されている)をひっくり返さなくてはいけないから簡単ではないんですが、論理上できるようになってしまった。実際に全農を『株式会社』にして、『株式の譲渡制限』を外せば、その途端にカーギルが買うでしょう。ただ、カーギルとしては、全農を株式会社にするという道筋を作ったけれども、直ぐにはできないし、時間がかかる。それよりも、とにかく邪魔なのは全農グレインで、全農グレインが欲しい。全農ではないのです。そうなると、全農グレインを全農に売らせればいい、そのためには、全農の経営を悪化させればいいということになります。全農自体が猛烈な赤字の組合にしてしまえば、全農グレインを手放さざるを得なくなる、その時に買えばいいとなります。 農家が使用する肥料の農協の割合がだいたい70%で、そのうちの全農のシェアが60%だから、42%ぐらいの肥料が全農から農家に提供されています。また、農家の使用する農薬については60%が農協で、農協のうちの40%が全農だから、24%ぐらい全農のシェアがあります。この点について、「全農は、農協や農家に対して独占的な立場を利用している」のが問題だと言われたんです。「全農は、生産資材を高く農協や農家に売りつけている」「全農の消費者機能、要は、配合飼料とか農薬を仕入れて農家や農協に販売する事業を禁止するべきだ」と言い出したのです。 しかしながら、そもそも全農のシェアは、先に見た通り、肥料で42%、農薬で24%ほどで、全く独占事業体などではありません。独占状態でもないのに高く売ることは、農家がより安い他社から買うこととなるだけの話であって、それ自体問題にはなりえません。全農は高く売るということを問題視されて、消費者機能を廃止すべきだとされたのです。ただ、最終的には、これは通りませんでした。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉘ (10)“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには場合によっては『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という考え方も大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 15Nov
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑬:規制緩和の実態③

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑬:規制緩和の実態③ さらに、農協はさまざまなサービスを農家に対して提供しており、そのサービスへの参入を狙って農協そのものをつぶそうとします。農協は、これまで農林中金やJA 共済が黒字で、それらがあるから、農協全体ではその経済事業が赤字でも何とかやってこれているという仕組みになっていました。そこで、「農林中金とJA 共済は、これを切り離してそれぞれ株式会社にしてしまえ」と言い出します。すると、そこに投資した人はぼろ儲けする一方、農林中金やJA 共済の黒字がなくなって、農協はつぶれます。そこに、これまで農協が提供していたサービスに外資が新規参入していくというわけです。 我が国は今、穀物自給率、食糧自給率が悲惨な状況になっています。2013 年の穀物自給率で言えば、日本は28%です。つまり、外国からの輸入が止まると、日本の穀物の7 割以上は供給されなくなるわけです。もちろん米は100%ですが、小麦とか大豆とかは来なくなる。醤油も味噌もパンも作れなくなるのです。これは、“食糧安全保障”という観点からみれば大きな問題だといわなければなりません。 日本の農業のGDP、つまり農業の需要は、94 年は8 兆円ぐらいだったのが、今5 兆円前後で”拡大しておらず、横ばいです。つまり、今農業はデフレギャップで『需要が足りない』、ところが他方で穀物自給率は3 割を切っている、つまり『供給力不足』に見えているのです。ここに“歪み”があるのです。 本来、穀物に対する需要はもっとあるのですが、小麦も大豆も「自由化」してしまうと、外国の、特にアメリカの小麦や大豆に日本の農家は勝てないから、みすみす市場を奪われて、穀物自給率が3 割切って供給力不足に見えている、ところが、農業全体では需要不足という、歪んだ状況になっているわけです。本来、日本の政府が国民のことと農家のことを考えるならば、諸外国がそうしているように、外国からの農産物の輸入は規制しなくてはなりません。せめて穀物だけでも。穀物自給率を100%満たすまでは、外国から穀物を入れないとすべきなのです。(WTO 違反の問題が生じますが、安全保障上の問題など理由をつけることが可能です。)外国からの穀物の輸入を禁止したら、総需要は拡大します。外国に頼っていた分を日本の農家が生産しなくてはいけなくなってしまう、つまり需要が拡大することになるのです。さらには、政府自ら、この農業の需要不足を埋める。外国からの輸入品を止めて、今、日本中に休耕地、耕作をやめてしまった耕作放棄地が多いから、そこで全部生産をさせる、余ったモノは全部政府が買い取って、援助で外国にあげる。それで、このデフレギャップを埋める。それで、農業や農家の生産能力が拡大していくから、日本の食糧安全保障は強化されます。そのために政府は農家にお金を使うべきなのです。 ここで、「いや、日本の農家は保護されている」という反論がありますが、それは誤りです。実際、各国の農家の所得に占める補助金の割合を見ると、日本は、2013 年の数字で3 割ですが、アメリカ35.2%、スイスは100%を超えています。フランス94.7%、ドイツ69.7%、イギリス90.5%、他の国は政府がお金を使って、農業を保護しているのです。そうしないと食糧安全保障が問題になるとわかっているからです。 アメリカは、補助金で見ると意外と低いように見えますが、農業の産出額(GDP) に占める農業予算の割合を見ると、日本は38.2%で主要国最低であるのに対して、アメリカは75.4%で、逆にトップです。実は、アメリカはGDP の7 割以上の予算を使ってWTO で禁止されている“輸出補助金”を、いろいろな理由をつけては出しているのです。“輸出品”にだけ補助金をつけるとWTO 違反になってしまうので、アメリカ国内の農家すべてに対して、生産価格を保証するという“大義名分”を立てて、予算を十分に使っており、その結果、アメリカの農家はダンピングして輸出しており、それ故国際競争力があるのです。それを日本が買って日本の農家がつぶれたということです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉗ (10)“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには場合によっては『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』という考え方も大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 08Nov
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑫:規制緩和の実態②

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑫:規制緩和の実態② まず高額医薬品についてですが、財務省は保険の対象外にすることを提案しています。高額な医薬品は、“費用対効果”を勘案して、公的保険の対象から外すべきだと言うのです。すると、政治家は、“規制緩和”をして「民間の保険サービスへの新規参入を拡大すること」を主張し、「高額医薬品は民間の保険サービスが対象としてくれればよい」と言うのです。そうなれば、間違いなくアメリカの医療保険会社が新規参入してくるでしょう。彼らは、保険料はできるだけ徴収するが、保険金はできるだけ払わないということで、悪名高いと言われています。この点、混合診療も同じです。 ちなみに、橋本政権の金融ビッグバンの前は、保険サービスへの民間参入はできませんでしたが、医療保険を“がん”について解禁しました。その結果、アメリカの保険会社、アフラックが日本市場を席巻することになりました。アフラックはアメリカの会社ですが、アフラックの利益の9 割は日本市場から得られていると言います。さらに、郵政民営化された後、かんぽ生命ががん保険に参入しようとした際、アフラックは、アメリカの政治家経由で日本の政治家(麻生財務大臣)に圧力をかけ、かんぽ生命について、がん保険サービスへの参入を断念することとなったのです。規制緩和により本来“自由競争”となるはずであるにも拘らずです。かんぽ生命は、信用力が高いので、かんぽが本気でがん保険の市場に参入したら、アフラックの市場は相当食われることとなるが、それは許せないというわけです。それどころか、かんぽ生命がアフラックの“下請け”となって、代理店としてアフラックの保険を売るという“奇妙な”結果になりました。結局、アフラックが儲かるわけです。“自由競争”と言いながら、実際は特定企業、特定投資家の利益最大化のために、そういう“大義名分”が唱えられているだけだということがこれでわかります。私たちは、このような一見誰も反対することのできない“大義名分”を掲げて“改革”が行われるような場合には、注意しなければなりません。そのような“目くらまし”に誤魔化されず、その実態、つまり、それによって、お金の流れがどうなるのか、結局誰が得をすることとなるのか、ということを注意深く見る必要があります。騙されないために。 我々の普通の生活を維持するための必須のサービス、ソフトウエア的なインフラストラクチャー、ここが一番今狙われていると言います。その理由は、日本はデフレなので、基本的に需要不足で、ビジネスの拡大はしにくいわけですが、このソフトウエア的なインフラの部分というのは、デフレであっても、人間が生活をしている限り、常に一定の需要があり、需要が減らないところだからです。例えば、農業や医療です。いずれも需要が減りにくいので、構造改革、規制緩和、自由貿易の標的になっています。そこでは、“緊縮財政”だから、政府はお金を使えない、それなら“規制緩和”により参入障壁を取り外して、“外資”を含めた民間の新規参入を認めることで対応しようという“理屈”になっているのです。 その典型が、農協です。まずは、『組合員が農家である正組合員以上に準組合員が多いというのは、おかしい』と言い掛かりをつけて、『この準組合員には、例えば共済とか農林中金を使えないようにすべきだ』と。これはもともとアメリカが言い出したことで、農協は政府から言われて、しぶしぶ準組合員を減らしました。すると、今まで準組合員が入っていた保険市場(JA 共済)に巨大な空白ができる、そこで、アメリカの保険会社がその保険サービスを売り込み、ビジネスを拡大していくというわけです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉖(9)企業は社会の公器」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『企業は社会の公器』という考え方が大切であると言います。この考え方について解説します。

  • 01Nov
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑪:規制緩和の実態①

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑪:規制緩和の実態① 『緊縮財政』『規制緩和』『自由貿易』の3つは、政策パッケージで、常に同時に推進されるものだとして、三橋貴明氏はこれらを『グローバリズムのトリニティー』と呼んでいます。その理屈は以下の通りです。 まず、『国の借金で財政破綻する』と、財務官僚が言うと、『もはや政府はお金を使えない。』『緊縮財政だ』ということになり、『もはや公共サービスも維持できない』ということになります。そこで、「民間活力導入だ」「公共サービスは民営化するか、規制緩和して民間に任せましょう」と政治家が『構造改革』し、『規制緩和』すべきだと主張する。すると、そこに外国のグローバル企業がやってきて、『外資にも市場を開放すべきだ』『自由貿易でWin-Win となる!」と主張するのです。このように、『緊縮財政』『規制緩和』『自由貿易』が、三位一体で行われるというのが、グローバリズムの本質だと言います。 では、グローバリズムは『経済成長』や『Win-Winの結果』をもたらすのでしょうか? 現在需要不足で供給過剰のデフレ下にある日本においては、“需要を増やすこと”が必要なのですが、このグローバリズムによって決してパイ(需要)が大きくなるわけではなく、むしろ逆に縮小すること、その一方で『規制緩和』と『自由貿易』により供給サイドが増えて“小さくなったパイ”を取り合う“苛烈な競争”となります。そうすると、新規参入してくる、“強者”、つまり日本の大手企業か外資系のグローバル企業が結局儲かって、“弱者”(それまで規制により保護されてきた)は“淘汰”され、あるいは、格差が広がり“固定化”されるという結果を招きます。その最も重要な問題は、国民が幸せにはならない、むしろ“貧困化”していくということです。 ハジュン・チャンは、新自由主義にもとづくグローバル化が決して経済成長をもたらさなかったことをデータで検証しています。(『グローバリズムが世界を滅ぼす』エマニュエル・トッド、ハジュン・チャン、中野剛志、藤井聡他) 過去の歴史を学び、実際のデータを見れば、驚くべき現実が見えてきます。私たち日本国民は、表面的に語られる“大義名分”によりその本質が隠され、見えなくされて、それをいつの間にか受け入れてしまっている、つまり、“洗脳”されているのです。その意味で、本稿のテーマである、現代における“壮大な虚構”に基づく“仮想現実の世界”の中に私たち日本国民は追い込まれ、閉じ込められ、その結果、深刻化するデフレ不況から抜け出す手立てを奪われた状態で、何の“疑い”もなく、過ごしているわけです。具体的に何が起こっているのか、つまり、日本の市場が如何に外資のグローバル企業に搾取される結果となっているか、あるいは、近い将来そうなるということについて、以下三橋氏の解説により、分野毎に見て行きましょう。 まずその前に基本的に理解しておくべきことは、すべての分野において使われている重要な“理屈(レトリック)”は、『国の借金は1000兆円!このままでは財政破綻する!』『だから緊縮財政を守って、財政支出を削減しなければならない』という“緊縮財政”からの財政支出の抑制の必要性ということです。そして、それが全くの誤りであることは既に述べた通りです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉕(8)衆知を集めること⑤:下意上達②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 25Oct
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑩:コーポレートガバナンスの強化⑤

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑩:コーポレートガバナンスの強化⑤ グローバル化による利益を一人占めしているのは、強者たる欧米のグローバル企業、そして、ロンドンのシティや米国ウォールストリートのグローバル金融資本であり、実はユダヤ人金融資本家だと言われています。元駐ウクライナ大使の馬渕睦夫氏によれば、世界を動かしているのは、実は『ディープステイト』と呼ばれる影の支配者たちであり、米国においても、100年ほど前のFRBの創設により米国の金融を牛耳って以来、歴代の大統領を就任させ、また、影からコントロールをしているのだと言います。そして、その『ディープステイト』正体こそ、ユダヤ金融資本です。私たちはアメリカの支配階級(いわゆる“エスタブリッシュメント”)は、元々イギリスから渡ってきた、いわゆるWASP(White Anglo-Saxon Protestantホワイト アングロ‐サクソン プロテスタント)の人たちだと思い込んでいますが、既にユダヤ金融資本家に取って代わってしまっているというのです。米国における人口はわずか5、600万人にすぎないユダヤ人が米国の金融、学会、マスメディア、司法、CIA、娯楽産業を支配してきました。  自らの祖国を持たない彼らユダヤ人勢力の目指すものは、国家というものを無くし、世界統一政府を樹立することだと言います。そのために、これまでも1917年のロシア革命の支援から始まって、中国毛沢東の共産主義政府を支援し、日本のGHQによる占領政策において社会主義化を進めるなど、世界の歴史の重要なところで、介入をしてきたのです。そして、現在は“新自由主義”などを理論的背景として、“グローバル化”を推進しているのです。“グローバル化”は、国民主権、民主主義を前提とする主権国家を無くすことを意味するのです。これらの点について、詳しくは、馬渕睦夫氏の著書『知ってはいけない 現代史の正体』をご覧ください。歴史の見え方が全く変わります。ここでは、その結論の部分だけ、引用させていただきます。 そのようなユダヤ人グローバル資本によるアメリカの支配と政治は、彼らグローバル資本の利益を実現しようとするものであって、決してアメリカ国民の利益になるわけではありません。そのような不満がアメリカの白人労働者を中心にうっ積してきていました。彼らは、NAFTA(北米自由貿易協定)により、米国企業がメキシコ北部国境地帯にマキラドーラという保税加工制度を利用するために工場を米国内から移転すると、失業することとなり、あるいは、安い賃金でも喜んで働くメキシコから流入してくる移民によって仕事を奪われ、また、底辺に向けた賃金の切り下げ競争を強いられてきました。 このようなワシントンでのグローバル金融資本による自分たちの利益のための米国支配と政治に対して、明確に反旗を翻し、アメリカの政治をアメリカ国民のためにワシントンから取り戻すと主張し、大統領に就任したのがドナルド・トランプ氏だったのです。『アメリカ・ファースト』とは、『反グローバリズム』であり、『アメリカ国民のための政治』を意味しているのです。グローバル金融資本はCNNやABCなどのテレビ放送やウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズなどの新聞など主要なマスメディアをも支配しており、トランプ氏を“人種差別主義者”と決めつけたり、その奇行を非難したり、誹謗中傷する記事を次々と書いて、国民から引き離そうとしています。また、FBIを使ってロシアンゲートと呼ばれる疑惑を作り上げてトランプ氏を追い落とそうとしました。これは、2016年の米国大統領選挙において共和党のドナルド・トランプ候補(当時)を勝利させるために、ロシア連邦がサイバー攻撃やSNSを使ったプロパガンダの手段を用いて行ったとされる一連の世論工作、選挙干渉があったとされる事件で、ウォーターゲート事件でニクソン大統領を辞任に追い込んだときと同じ手法が使われたと言われています。 そして、イギリスのEU離脱やフランス初めEU加盟各国での極右政党の躍進も、EUというグローバリズムに反発し、自国の主権と民主主義を取り戻そうとするうねりが世界に広がっていると捉えることができます。EUでは、選挙によって選ばれたわけではない欧州委員会という行政機関が巨大な権力を持ち、そこで決定されたことが各加盟国に降りて来る、そこで自国民の反対意見、つまり民主主義は無視されるわけです。ユーロの統一によって、各加盟国は、自国通貨の発行権を返上し、自国の独自の金融政策や財政政策を採用する自由を失ったのです。その結果、ギリシアは財政破綻することとなりました。 すなわち、世界は『グローバリズムはいいことだ』という『巨大な虚構の世界』に気づき、それを打ち消す『反グローバリズム』の動きが 確実に広がりつつあります。そのような中にあって、日本だけが、未だに『構造改革』『自由化』『民営化』『規制緩和』の名の下に周回遅れの『グローバル化』に猪突猛進しているというのが実態です。つまり、日本は未だ『巨大な虚構の世界』から抜け切れず、むしろその中へ中へとはまり込んで行きつつあり、それらによって、さらにデフレ化が進み、国民の“貧困化”に突き進んでいるのです。 ======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉔(8)衆知を集めること④:下意上達①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 18Oct
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑨:コーポレートガバナンスの強化④

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑨:コーポレートガバナンスの強化④ 実は、この『コーポレートガバナンスの強化』の前に、アメリカの圧力を受けて、2006 年 5 月に施行された会社法において、グローバル資本が従来より容易に日本企業を買収することができる仕組み、いわゆる“三角合併”が解禁されました。この方式は、簡単に言うとA社がその子会社のa社を通じてB社を吸収合併しようとする時、従来はa社の株式による対価の支払いしか認めていなかったものを、親会社A社の株式を交付することで対価の支払いに充てることを認めるものです。a社がB社を吸収合併し、その支払をa社の親会社であるA社がA社株式で行う構図になっていることから三角合併と呼ばれています。 従来外国の企業は日本の法律上の会社とみなされていなかったため直接日本企業を買収することができず、日本企業を買収する際は日本に現地子会社を設立し、その会社を通じて日本企業の子会社化や吸収合併をするという手順を踏んできました。ところが日本に設立したばかりの子会社は与信も資金力もなく、買収資金を現金で用意するのが困難でした。しかしながら、この三角合併の方式によれば、例えばグローバル企業は、現地子会社を通じて三角合併の手法を活用すれば、現金流出を伴うことなく自社の株式を交付して国境を越えたM&Aを実施できるようになったのです。つまり、この際a社は必ずしも自己保有の自社株(いわゆる金庫株)をB社株主への支払いに充てる必要はなく、新株を発行してB社の株主に交付することも可能なため、通常多額の現金が必要になるM&Aを実施するにあたりキャッシュを一切用意する必要が無いことから、大変魅力的な手段と言えるのです。 三角合併そのものは、外国企業のみを前提とする手法ではなく、日本企業同士で実施することもできますが、この法改正が、元々吸収合併に際しての対価の支払いに自社の株式ではなく親会社である外国企業の株式を充てることを認める法改正を求める外国企業の要望の高まりに応じる形で行われたという経緯があります。  また、三角合併を実施するには双方の会社の取締役会の決議と株主総会の特別決議の両方を経る必要があることから、通常は敵対的買収の手段にはなり得ず、基本的に友好的なM&Aの手段と言われています。しかしながら、例えば、外国資本が魅力的なプランを資本市場に提示して、経営陣に検討するよう圧力をかけ、買収提案者が多数の株主から支持を得た場合、株主総会で委任状争奪戦を仕掛け、B社の株式2/3以上を買い占めてから敵対的買収に乗り出す可能性もないとは言えません。先に述べた『コーポレートガバナンスの強化』は株主の権利を強化することによって、それを促進するという側面があるのではないでしょうか。 このように考えれば、この会社法による“三角合併”の導入によって、欧米のグローバル企業が日本企業を合併し易くなったわけです。 これまでは、外国資本による三角合併の実例は少なかったわけですが、先に述べた日本政府による『グローバル化』『構造改革』『規制緩和』『自由化』『民営化』などによって、日本の市場の規制が次々と取り払われ、あるいは、緩和されて、日本市場が解放されて行くと、グローバル資本による三角合併を利用した日本市場への参入ということがより現実的になってくるのではないかと危惧しています。 このままでは、日本も韓国の二の舞いとなってしまいかねません。韓国では政府の政策もあって、ごく一部の財閥企業グループだけが事業に成功していますが、その財閥企業はと言えば、その株式の多くを外国投資家によって保有されており、サムスンの場合で言えば既に外国投資家が過半数(普通株式:50%/優先株式:75%)を保有しているのです。つまり、韓国企業とは名ばかりでその実態は、欧米のグローバル投資家の所有する企業と化しており、それらの企業が如何に利益を上げても韓国国民に還元されること(賃上げなど)はなく、そのほとんどを株主たる外国資本に利益還元(利益配当や自社株買い)として持って行かれてしまうのです。韓国の国民は益々貧困化して行くばかりです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉓(8)衆知を集めること③:上意下達、下意上達②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 11Oct
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑧:コーポレートガバナンスの強化③

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑧:コーポレートガバナンスの強化③ そのことは、本家本元のアメリカで何が起こっているかを見れば一目瞭然です。 アメリカでは、株主権が強くなり過ぎて、短期志向を抑制するどころか、それが行き過ぎて歯止めがかからなくなっているというのが現状なのです。具体的には、中長期の研究開発投資や従業員の賃上げよりも、株式配当や自社株買いなどによる株主への還元という株主にとっての『短期の利益』が最優先し、利益の多くを株主に持って行かれてしまっているのです。その結果、中長期の研究開発投資をすることができず、また、従業員の賃上げもなかなかできないという状況です。例えば、米国の代表的株式指数S&P500の内459社はその利益の94%を配当又は自社株買いによって株主に分配していたと言います。最近の例では、利益配当と自社株買いの合計は、ヒューレット・パッカード 168% / Time Warner 280% / Fazer 137% / Microsoft 119% / P&G 118%にもなっています。米国では『株主価値の最大化』が将来への開発・設備投資や従業員の賃上げを抑制し、“絶対的な株主最優先策”が常態化しているのです。 そのような傾向は、ヨーロッパでも同様で、S&Pヨーロッパ350の内86社の株主への配当率は利益の89%にも上っています。 また、アメリカを始め諸外国では、いわゆる『アクティビスト・ファンド』というものが活発に活動を展開しています。彼らは、絞り込んだ対象企業の株式を数%程度取得し、その企業の精緻な事業・財務分析を行って、対象企業の経営者に対し、短期的な株価の上昇につながる質の高い経営改善を突きつけることで、業績改善や株式価値の向上を実現し、株価を引き上げた上、概ね1年程度で株式を売り抜けます。対象企業に対して“物言う株主”として派手な経営改革キャンペーンを展開したり、また、株主総会における委任状勧誘戦を仕掛けるなど、対象企業に主張を通すために段階的にレベルを上げた対応をしていくのです。基本的には“短期志向”であって、ヘッジファンドであることから、運用を委託された投資者から比較的高い運用収益を上げることを期待されており、ファンド・マネジャーの成功報酬も運用収益にリンクします。それ故、アクティビスト・ファンドは、基本的に“短期志向”であり、株式保有期間は概ね1年程度で『会社の持続的な成長』に寄与する存在ではありません。 『コーポレートガバナンスの強化』は、これらの『アクティビスト・ファンド』のために“武器”を用意しているようなものです。このような連中が日本に“株主”として押し寄せ、“建設的対話”と称して、『短期的な株価の上昇につながる精緻に分析された質の高い経営改善を要求する』ことが予想されます。企業側がその要求に応じて経営改善を行い、株価が上がれば、彼らは保有する株式を売って利益を確保しますし、企業が経営改善の要求に応じなければ、利益の株主への還元(利益配当や自社株買い)を強く求めるというわけです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。/最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉒(8)衆知を集めること②:上意下達、下意上達①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 04Oct
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑦:コーポレートガバナンスの強化②

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑦:コーポレートガバナンスの強化② さらに言えば、安倍政権は「TPP 交渉参加国との間で作成する文書」の「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」の中で、「3. 規制改革。日本国政府は2020 年までに日本国政府の成長戦略に沿って外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す」ことを米国にコミットしており(現在も有効です)、それを自らの目標として掲げています。そこでは、「外国からの直接投資を促進し、ならびに日本国の規制の枠組みの実効性および透明性を高めることを目的とし」「意見および提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに検討し、および可能な場合には行動をとるため」「定期的に規制改革会議に付託する。日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置を執る。」とされています。 つまり、『外国からの直接投資の倍増』という政府の目標を達成するという“本当の狙い”を実現するために、国内向けには、敢えて欧米とは異なり『コーポレートガバナンス』を『成長戦略』のための『持続的成長の手段』と位置づけて、『コーポレートガバナンスの強化』が進められているというわけです。より直截に言えば、『日本の企業の成長のために必要ですよ』と言いながら、実は『外国投資家の直接投資を呼び込むため』にやっているというのが、『コーポレートガバナンスの強化』の実態だということです。 しかも、『コーポレートガバナンスコード』の検討の過程にも重大な問題があります。そもそも、『コーポレートガバナンスコード』は、法律の制定というハードアプローチではなく、証券取引所の規則というソフトアプローチを採用しているため、国会での審議・議決を必要としません。つまり、主権者たる国民の代表からなる国会での審議と議決を迂回して決定がなされるのです。さらに、上に見た通り、検討のプロセスにおいては“透明性を高める”と称して、外国資本家の声を最大限聞き、それらを反映することがコミットされており、金融庁の主催する『コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議』やその後の『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』においても、常に外国投資家(前いちごアセットマネジメント㈱代表取締役社長/日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク理事スコット・キャロン氏)が参加し、意見を述べる機会が確保され、それらの意見を反映する形で“コーポレートガバナンスの改善”が進められているのです。 しかしながら、需要が不足しかつ供給が過剰なデフレ不況下にある今の日本において、外国資本を導 入すること(供給力を強化すること)が本当に必要なのでしょうか?そして、外国資本は、本当にそのような『中長期に向けた経営』や『会社の持続的な成長』を望んでいるのでしょうか? 外国投資家から見れば、日本の企業は、これまでメインバンク制や株式の持ち合い、さらには『物言わぬ株主』によって経営者が、手厚く守られ、好き放題にしている。例えば、会社の業績が不振でも責任を取らず、居座り続けているとか、内部留保をため込んで将来に向けた研究開発投資や設備投資をしないばかりか、利益配当や自社株買いなどの株主への還元も不十分であるなどの問題があると言います。そこで、会社の所有者である株主の権限を強化して、株主が経営者を監督し、問題ありとされた経営者を解任できるようにしようというのが、本音であろうと考えられるのです。 具体的には、株主の支配権をより強力にするため、『政策保有株式の制限』『社外取締役の増加』『非財務情報の開示』『経営者の解任を容易にする』などを推進し、米国の投資家は、米国に居ながらにして、日本企業の情報を入手し、日本企業の株主総会で議決権を行使し易くすることを推進しています。  『コーポレートガバナンスコード』では、企業には『中長期の経営戦略』を求め、株主には中長期の株式保有を期待して、双方において“短期志向”から脱却するために、相互の“建設的対話”を進めるという“建前”になっていますが、企業と株主は、本当にそのような方向に向かって行くでしょうか? 残念ながら、これも“否”と答えざるを得ません。 もし、株式市場が『中長期の株式の保有』しか認めないというならば別ですが、『短期の株式の保有』が全く自由に認められ、株主には、『株式譲渡の自由』があります。株主はどちらを選ぶでしょうか? 『マシュマロはまだ食べちゃだめ』という実験を4歳児の子供たちに行ったという例があります。目の前にマシュマロを1つ置いて、『これを今食べてもいいけど、15分間食べるのを我慢したら、もう一つあげるよ。』と言い、その部屋に一人にします。すると、ほとんど全員が我慢できずにあっという間に食べてしまいました。(次のTEDのスピーチの中で紹介されています。https://www.ted.com/talks/joachim_de_posada_says_don_t_eat_the_marshmallow_yet?language=ja)これは子供に限りません。株主(大人)も人間ですから、この子供たちと変わりません。別の言い方をすれば、そのような子供たちが大人になって行くのです。 コーポレートガバナンスコードは、企業と投資家双方の『短期志向』を『中長期志向』に転換させることがその“目的”だと言われています。『中長期に向けた経営』や『会社の持続的な成長』を目指す方が結果的に利益が多くなるということが前提となっています。つまり、『短期に取得できる利益』を我慢して、それより大きくなると言われる『中長期の利益』を取得すべく、企業と投資家とが“建設的対話”を進めて行こうと言うのです。 しかしながら、その中長期的にその企業の戦略が成功して、“より大きな利益”を得るという保証はどこにもないのです。場合によっては、失敗して利益がゼロか、マイナスとなるリスクもあるのです。すべて経済行動の主体は、“欲望”を持つ“人間”なのです。そして、そのような人間の“欲望”を是とする、むしろそれを推進エネルギーとしている資本主義の株式市場において、そのような将来の得られるかどうかもわからないような『中長期の利益』を待つよりも、目の前の確実な短期の利益を“食べてしまう”のが人間というものでしょう。株主は、機関投資家も含めて、短期志向に走ることは必定であるというのが、私の見立てです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント㉑(8)衆知を集めること①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『衆知を集めること』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 27Sep
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑥:コーポレートガバナンスの強化①

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑥:コーポレートガバナンスの強化① 安倍政権の『日本再興戦略』の三本の矢の内の第三の矢『成長戦略』の一環として『コーポレートガバナンスの強化』ということが進められています。この一見もっともらしい“改革”も、これと併行して強力に推進されている『グローバル化』あるいは『自由化』『民営化』『規制緩和』と言われる一連の取り組みとの関連でより大きな視点から俯瞰して見れば、その“見え方”が全く変わってきます。 この『コーポレートガバナンスの強化』の取り組みの“起点”となったいわゆる『伊藤レポート』(伊藤邦雄一橋大学大学院教授を座長とする経済産業省内のプロジェクト「持続的成長への競争力とインセンティブ―企業と投資家の望ましい関係構築」の2014年8月の報告書)は、“失われた20年”の責任が“企業の努力不足”にあると断じました。特に日本企業の収益の低さに着目し、過去20年で、上場企業1600社のうち、株式のリターンがプラスとなった、いわば失われた20年にあっても成功している企業約200社の共通項として、『他社との差別化』『事業ポートフォリオ最適化』『継続的なイノベーション』『積極的な経営革新による変化への適応』を挙げ、これを持続的成長のモデルとして提言しました。また、企業の“株式の持ち合い”などにより株主の権限が弱いことが企業の経営の“短期志向”を招いているとして、株主の権限を強化するとともに、企業と投資家双方の間の、中長期に向けた持続的な企業価値の創造に向けた“建設的対話”と“協創”を推進することを提案し、そのための具体的な数値目標としてROE(自己資本利益率)8%、次のステップとして10%を提案したのです。 これを受けて、金融庁が中心となって、金融機関側の投資先企業の経営監視などあるべき姿を定めたガイダンスである『スチュワードシップ・コード』が発行され、それに対応して、企業が遵守すべき企業統治の原則を定めた『コーポレートガバナンスコード』が策定されました。『コーポレートガバナンスコード』は、法律によるハードアプローチではなく、証券取引所の規則で定められ、定められた原則を『遵守するか、さもなくばその理由を説明せよ(コンプライ、オア、エクスプレイン)』というソフトアプローチで定められたのです。具体的には、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもので、①株主の権利・平等性の確保、②株主以外のステークホルダーとの適切な協働、③適切な情報開示と透明性の確保、④取締役会等の責務、⑤株主との対話の5つの章に分けて、ベストプラクティスとして示される複数の原則によって構成されています。 日本では、『コーポレートガバナンスの強化』を成長戦略の一環と捉え、“攻めのガバナンス”と称して『会社の持続的な成長の手段』であると位置づけています。すなわち、経営者の迅速・果断な意思決定を促し、我が国上場企業の「稼ぐ力」を取り戻させることで「攻めのガバナンス」を強化することを意図しているとされています。 一見もっともらしく聞こえますが、客観的に見れば、かなり無理のある説明だと言わざるを得ません。江頭憲治郎東京大学名誉教授が指摘される通り、『会社の持続的な成長』の実現は、主に経営者の力量に依存するものであって、強化された『コーポレートガバナンス』がそれを“保証”してくれるわけではありません。現に『コーポレートガバナンスの手法』の中には、『会社の持続的な成長』に結びつくものは少ないのです。実際、欧米では『コーポレートガバナンス』が『会社の持続的な成長の手段』であるとは考えられていません。 本来『コーポレートガバナンス』とは、株主の利益を裏切りかねない経営者に対する株主の監督の仕組みなのです。そうだとすれば、『コーポレートガバナンスの強化』とは、株主の経営者に対する監督の権限を強化すること、場合によっては株主が経営者を解任することができるようにすることに他なりません。ただ、その点が前面に出て来ると、企業は受け入れがたいであろうから、『中長期に向けた経営』や『会社の持続的な成長』のために必要だという“大義名分”を取って付けたというのが、本当のところではないでしょうか。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑳ 7)自然の理法に従うこと-『素直な心を持つこと』②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『自然の理法に従うこと』、そのために『素直な心を持つこと』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 20Sep
    • “仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界⑤:グローバル化の利益を享受する者

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑤:グローバル化の利益を享受する者 それでは、安倍政権の推進する様々なインフレ政策によって利益を得る“強い者”とは誰でしょうか? それは、これまで日本市場に入りたくても様々な規制があったために入れなかった、そして、構造改革の後に堂々と日本市場に新規参入してくる欧米のグローバル企業なのです。つまり、安倍政権の推進する政策によって利益を享受することができるのは、欧米のグローバル企業であって、『日本が豊かになり、日本国民が豊かになる』わけではないのです。 この点は、極めて重要な点です。 私たちは、少なくとも日本政府は、日本国民の豊かさや幸せを目指して政治を行っているものと信じ込んでいます。安倍首相は言いました。まずは、富裕層や企業が豊かになれば、一般の人々にもその“お零れ”がしたたり落ちてくる(“トリクルダウン”)と。しかし、そんなものはいつまで待っても落ちてはこないのです。そこには意図したものかどうかは別として、“壮大な虚構(ウソ)”があるのです。 このままでは、今後もこれまでがそうだった通り、日本は世界中で唯一“経済成長”しない国となり、しかも、その限られたデフレ下の日本市場では、安倍政権の『構造改革』や『グローバル化』『自由化』『民営化』など様々な“見当違いの”インフレ政策によって、規制緩和され、市場が解放されて、欧米のグローバル企業やグローバル資本のみが利益を享受するという結果をもたらすこととならざるをえません。他方、かかる需要不足供給過剰のデフレ下における供給力強化によってデフレがさらに深刻化する中で、安い賃金で喜んで働く“移民”がどんどんと流入してきて、私たち日本国民は、それらのあおりを受けて“失業”するか、あるいは、それらの移民との間で“底辺に向けた賃金競争”を強いられることによって、ますます“貧困化”し、日本という国も“衰退”の一途を辿ることとなっていく、私たちは、何も知らないうちに、あるいは、何も知らされないうちに、そのような『グローバル化、自由化はいいことだ』との間違った考えに基づく“虚構の世界”の中で生かされているのです。その点こそ、私が本稿のテーマ『私たちは仮想現実の世界に生きている!』との関連で、過去の歴史の話をし終えて完結しつつあったときに、わざわざ『現代の仮想現実』の話を追加した理由です。この話を(最近)知ってしまった以上、黙っているわけには行かなくなったというわけです。以下でもう少し具体的に述べてみたいと思います。 まず、先に述べた通り、『グローバル化』『自由貿易』というものは、その言葉が与える印象とは裏腹に、全体の“経済成長”にはつながらず、経済成長は鈍化することが既に明らかになっています。そのような中で、安倍政権により現在も強力に推進されている『構造改革』や『グローバル化』『自由化』『規制緩和』は、これらの欧米のグローバル企業に対して、それまで様々な規制によって弱小業者や農家などを守ってきた日本市場を“規制緩和”“グローバル化”の名の下に開放し、弱小業者や農家を強者たるグローバル企業との苛烈な競争の下にさらすことによって、益々弱体化させ、その“格差”を拡大させて、遂には潰してしまうことにもなりかねません。つまり、『グローバル化』というものは、インフレ対策であり、デフレ下の日本には“不必要”かつ“不適切”な政策であるという点に加えて、“強者”にとってのみ都合のいい論理であって、“普遍的な真理”などでは全くないのです。 中野剛志氏によれば、過去の歴史を見ても、国内に守るべき“弱い者”がいる場合には、各国はそれらの“弱い者”を守ってきました(“保護主義”)し、むしろそれによって経済成長を実現しているのです。例えば、1866年~77年はヨーロッパ諸国が自由貿易体制下にありながら大不況に陥っていた頃、当時世界で最も保護主義的な国であると言われたアメリカは、目覚ましい発展を遂げ、経済大国にのし上がりました。また、1892年~94年は大陸ヨーロッパ諸国が保護主義化した時期ですが、各国の貿易は拡大し、景気が回復しています。 また、日本でも戦後の復興期には、まだまだ弱かった日本の自動車を初めとする諸産業を当時の通商産業省が様々な法令を作って、徹底的に守ってきたからこそ、その後成長して、世界で戦えるようになったのです。 このように、『グローバル化』というものは、決して経済全体を大きくするものではなく、強者が弱者を駆逐し、格差を拡大させ、弱者の貧困化を進めるもので、強者や強者を多数持つ国にとっては“良い結果”をもたらしますが、弱者や弱者を多数持つ国にとっては“悪い結果”をもたらします。今の日本はそのいずれでしょうか? “守るべき弱者”がいる限り、『グローバル化』は、それらの弱者をグローバル強者との苛烈な“グローバル競争”の下に晒し、その結果、殺してしまうこととなるのです。そして、『グローバル化』は、上に見た通り過去何度か繰り返しており、“歴史的に不可避の唯一の流れ”ではありません。私たちは“選択する”ことができるのです。小泉政権以降、突き進んできた『グローバル化』の流れを今止めなければ、今後日本市場は、“強者”たるグローバル企業に席巻されてしまうこととなります。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑲ 7)自然の理法に従うこと-『素直な心を持つこと』①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『自然の理法に従うこと』、そのために『素直な心を持つこと』が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 13Sep
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界④:『構造改革』の本質

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界④:『構造改革』の本質 もう一つ重要な政策上の誤りは、『構造改革』です。他にも『自由化』『グローバル化』『民営化』『規制緩和』など様々なことばで言われますが、皆基本的には、それまでの規制を緩和し、参入障壁を低くして、新規参入を呼び込み、供給力を増やすという政策です。これは、需要が過剰で供給力の不足しているインフレが行き過ぎる状況においては、供給力を増やすので、有効な政策と言えます。実際、そのような規制緩和の政策は、1980年代インフレの状況にあった英米において、それぞれイギリスのサッチャー首相やアメリカのレーガン大統領の下“新自由主義”の名の下に行われました。特に、ソ連の崩壊によって東西冷戦が終結した後は、グローバリゼーションの流れが世界を席巻しています。そして、この“自由化”というのは、その言葉の響きからも、基本的には“良いこと”だというイメージを持ち易く、このグローバリゼーションの流れは“歴史の必然”であって、誰も止められないものであるかの如く語られることもあります。 しかしながら、過去の歴史が語るのは、全く逆の結果でした。ケンブリッジ大学の開発経済学者ハジュン・チャン氏によれば、新自由主義の考え方は、「格差は拡大しても、経済は成長する。富は増えるから我慢せよ。豊かな人がより豊かになることで、投資が増え、仕事が生まれる。トリクルダウンの効果で、社会の底辺においても結局は生活が良くなる。」というものでしたが、次に示す通り、実際はそうならなかったのです。 1960年~1980年(20年) 1980年~2010年(30年) 先進国 3.2% 1.8% 途上国 3.0% 2.7% 新自由主義が普及した1980年以降とそれ以前とを比べると、上の表のように、むしろ1980年以降の方が経済成長が鈍化しているのです。このことから既に『新自由主義(ネオリベラリズム)は経済成長すらもたらさない』ということがはっきりしているのです。 にも拘らず、我が国では、“周回遅れ”で2000年の小泉内閣以降『構造改革』に着手し、現安倍内閣においても、依然として、『改正出入国管理法(いわゆる移民法)』『コンセッション方式水道民営化を可能とする改正水道法』『カジノを解禁する統合型リゾート実施法』『民泊、白タク等のシェアリングビジネスのための規制改革、高度プロフェッショナル制度』『農協改革』など“自由化”“民営化”“規制緩和”“グローバル化”に邁進しています。 しかしながら、これらの政策は、先に述べたように需要が過剰で供給力の不足しているインフレのときに供給力を増やしてインフレを抑えるための政策であって、現在の日本のように20年以上も続くデフレ不況(需要不足かつ供給過剰)下において、やる必要がないばかりか、やってはならない政策なのです。デフレ下でこのような“規制緩和”“グローバル化” “自由化”の政策を実施すると何が起こるでしょうか? これらの政策により、新たな参入があり、また、強い者がどんどん強くなって、供給力が向上しますが、元々不足していた需要は一定以上には増えません。つまり、デフレを深刻化させ、『慢性的なデフレ』となります。その一方で、“強い者”が新規参入してくると、それまで規制によって守られていた“弱い者”は強者との苛烈な競争に負けて、潰れて行きます。また、需要不足のデフレ下では物が売れませんので、企業の売上も伸びず、他方で、安い賃金でも喜んで働く移民を受け入れることによって、日本の労働者は、それらの移民との間で賃金の競争をしなければならず(“底辺への競争”)、日本人の雇用が失われ、失業率が上がり、あるいは、日本人労働者の賃金は上がりません。そして、大企業と中小企業間の格差が拡大する。資本家と労働者の間の格差が拡大する。国家間の格差も拡大する。そして、これら格差の固定化が進むこととなるのです。 それでは、このようなデフレ(需要不足/供給過剰)下の現在において、本来政府がやるべき政策は、どのようなものでしょうか? それは、“グローバル化”や“構造改革”“自由化”“民営化”をしないこと、必要に応じて国内の守るべき産業を“保護主義的措置”によって守ること、その一方で、投資や消費を拡大することが困難な民間に代わって、政府が需要を創出する積極的財政政策であり、また、家計の消費を促す消費税減税若しくは廃止なのです。今安倍政権のやっている“構造改革”あるいは“グローバル化”“自由化”“民営化”と“緊縮財政”や“消費税の増税”とは“真逆の政策”が求められているのです。 では、デフレ不況下において、このようなインフレ政策を実施することで一体誰が得をするのでしょうか? それを考えることによって、現在の政治の動きの操っている、あるいは、重大な影響を与えている“黒幕”が誰であるかが見えてくると思います。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント⑱(6)乱を忘れず②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには『乱を忘れず』という考え方が大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 06Sep
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界③:財政破綻論の“ウソ”

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界③:財政破綻論の“ウソ” 最後に『このままだと、財政破綻する!だから、消費税増税が必要だ』という点です。 その前提である『財政破綻論』や『プライマリー・バランスの黒字化目標』が誤っていることは先に述べた通りです。 第一に、税収増を目的としながら、現在のようなデフレ不況下で消費税率を引き上げることは、その目的を達成することができない恐れがあるばかりか、消費をさらに落ち込ませてデフレを深刻化させてしまうということです。現在のデフレ不況の中で、消費税を引き上げるということは、消費をさらに落ち込ませる効果があります。消費税は実質的に消費に対する罰則として機能するからです。とすれば、税収は、税率 × 消費額ですから、税率が引き上げられても、消費額が落ち込めば、税収は増えるとは限りません。実際、1997年に橋本内閣のときに消費税を3%から5%に引き上げた際、翌年の税収は4兆円超の減収をもたらした。『消費税増税』というのは、需要が過剰で供給不足の状態であるインフレ時に需要を抑えるために採るべき『インフレ政策』であって、需要が不足し供給が過剰の状態であるデフレ時に採ると、不足している需要がさらに縮小してしまい、デフレを深刻化させてしまいます。 第二に、租税が政府の支出の財源であるという考え方に重大な誤りがあります。前回述べた通り、国は、実際に支出をするに際して、歳入の範囲で行っているわけではありません。歳入、つまり、納税者から見れば納税は、前年度分について、すなわち1年後に行われますが、当年度分についての予算と支出は、その歳入を待たずに先に行われるのです。政府の予算執行のプロセスは『スペンディング・ファースト』で政府の支出ありき、つまり、政府は徴税や国債発行なしでも、予算を支出することができるのです。 需要不足で供給過剰のデフレ不況の現在において、採るべき政策は、民間に代わって政府が需要を創出する財政支出や消費税減税・廃止などのデフレ対策です。それによって、他の先進国同様に経済成長をして行けば、税収も自然に増えて行くことになります。従って、『このままでは財政破綻する!だから、財政支出は削減すべきだ』という考え方も間違いです。むしろ、これまで20年以上も抑え込まれた財政支出を、インフラの更新や各地の新幹線の整備、教育充実、科学技術の振興、医療・介護サービスの拡充、地方経済再生、防衛力の拡充など様々な分野で大いにやるべきなのです。(少なくともインフレ率2%に達するまではインフレを心配する必要はありません。) これまで、『国の借金1000兆円超!国民一人当たり800万円超の借金!』『このままでは財政破綻する!』『だから、緊縮財政が必要だ。財政支出は削減すべきだ』『プライマリー・バランスの黒字化目標』『だから、消費税増税が必要だ』という全く“でたらめな”考え方を広めてきたのは、財務省です。予算の配分についての事実上の強大な権限と国税庁による脱税捜査権から、各省庁や政治家ににらみを効かせる。マスコミは、会員制記者クラブ『財政研究会』を通じて、思い通りの記事を書かせる。経済学者も若い頃から、研究会への参加や海外視察、情報提供などで手なづける。その結果、上記の財務省のストーリーに反する情報は新聞やテレビなどの表にはほとんど出てこないのです。これは、前に書きました戦後のGHQによる占領下の情報統制とそっくりなのです。肝心な情報が全く表に出てこない。各新聞、各テレビ局とも流す情報は極めて画一化されたものばかりです。情報源が皆財務省で同じだから当然です。 最近になって、ようやくこの財務省の『巨大な虚構の物語』を暴き、日本の衰退と日本国民の貧困化に歯止めをかけようとする動きが少しずつ広がりつつあるのは、朗報です。米国から来た“現代の黒船”とも言われる、Modern Moneytary Theory(現代貨幣理論MMT)が日本に入ってきたことで、財務省がこれまで隠してきた“真実”が一気に暴露されつつあります。 安倍内閣にあって、内閣参与の立場から、上記の主張を言い続け、今は敢えて参与を辞して国民に訴える言論活動をされている藤井聡京都大学大学院教授、元経済産業省の官僚で日本にMMTを紹介された中野剛志氏(経済評論家)、同じく上記主張を10年間主張し続けてきた経済研究所所長三橋貴明氏などの方々です。政治家では、『日本の未来を考える勉強会』(https://nihonm.jp/)を立ち上げ、その成果として安倍首相に緊縮財政を止めて積極財政に踏み出すべき旨の具体的な提案を出している自民党の安藤裕衆議院議員(公式ホームページ:https://www.andouhiroshi.jp/)やれいわ新選組の山本太郎前参議院議員も同趣旨の主張をしています。藤井氏と三橋氏は、『令和の政策ピボット』という公式ウエブサイト(https://reiwapivot.jp/)を立ち上げ、『反緊縮財政』『反グローバリズム』『反構造改革』を主張されています。『失われた20年』が30年、さらに40年と続いて行く前に、一人でも多くの方にご覧いただきたいと思います。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、6.「補論①失敗しない経営:リスクマネジメント⑰(6)乱を忘れず①」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 30Aug
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界②

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界② 次に『だから、緊縮財政が必要だ。財政支出は削減すべきだ』『プライマリー・バランスの黒字化目標』という主張ですが、これらの主張も含めて、このでたらめな物語を創作し、世の中に広めている“黒幕”は、財務省だということです。これは、歴史的な経緯もあって根が深い問題で、詳細は後述の参考文献をご覧いただきたいと思いますが、ポイントを整理すると、以下の通りです。  ここで、『プライマリー(基礎的財政収支)・バランスの黒字化』とは、国債関係費を除く政府の毎年の歳入と歳出について、歳出を歳入以下にせよという考え方です。 第一に、歴史的には『プライマリー・バランスの黒字化目標』への執念とも言える“拘り”は、憲法第9条の平和主義から来ているようです。それは、戦前、天皇制政府がおこなった無謀な戦争が膨大な戦時国債の発行があって初めて可能であったという反省にもとづいても受けられたもので、憲法の前文及び第9条の平和主義に照応していると言われています。つまり、武力に訴える能力を政府に与えてはならないとの考え方からきているのです。(佐藤健志著 『平和主義は貧困への道』)その後、大蔵省(当時)出身の大平正芳がこの考え方を改めて打ち出し、2001年小泉政権で大蔵省から財務省に変わったときに制定された財務省設置法の中にそれまでにはなかった『健全な財政の確保』の文言が入りました。 しかしながら、国債の発行は、戦争のためだけではありませんし、財務省設置法の『健全な財政の確保』も、『国民が豊かになること』に資するならよいですが、それが以下で述べる通りむしろ日本国民の貧困化を推し進めることとなるのであれば、憲法第13条の『個人的人権の尊重』にも違反するものと言わざるを得ません。 第二に、『プライマリー・バランスの黒字化目標』を達成した結果何が得られるかを考えてみれば、政府が黒字になるということです。しかし、それは何を意味するでしょうか?『誰かの債権は誰かの債務』であり、また、『誰かの黒字は誰かの赤字』です。だとすれば、『政府の債権は、民間部門の債務』であり、『政府の黒字は民間の赤字』だということになります。これは、国債発行の手続を見れば分かります。政府が国債を発行し、財政支出をして、公共工事を民間に発注する場合、政府は政府小切手で受注した企業に支払、その企業は、政府小切手を銀行に持ち込んで銀行預金の形で受け取り、仕入先への支払や従業員の給料の支払に当てます。これで家計が潤うわけです。日本政府が国債を発行すると、企業や家計の銀行預金が増えるのです。『プライマリー・バランスの黒字化目標』とは、結局『民間部門の赤字化目標』を意味することとなります。つまり、国民を貧困化させる政策であるということになるのです。 第三に、貨幣というものを『モノ』や『商品』と考えており(商品貨幣論、金属貨幣論)、いわば『お金のプール』があると考えている点で誤っています。現代において、貨幣はいわゆる現金通貨だけではなく、銀行預金や日本銀行の当座預金も貨幣なのです。銀行預金はデータに過ぎず、モノとして存在するものではありません。つまり、『貨幣』とは、債務と債権の記録であって、銀行の場合であれば、銀行にそのお金が現物としてはなくとも、人に貸し出した時点で、債権と債務が発生しますから、銀行預金という貨幣が創出されるわけです。(『信用創造』)昔はこれを万年筆一本だけで生み出せるお金ということで、“万年筆マネー”と呼んだそうです。この『スペンディング・ファースト(使うのが先)』という考え方は、『現代貨幣論(Modern Monetary Theory)』が明らかにしました。銀行は、預金を集めて、そこから人に貸し出しているわけではないのです。国の場合も同じです。歳出が先で、歳入は同じ年度内に後で行われるのです。確定申告を考えていただければおわかりになるでしょう。前年度分について、確定申告をして、納税をしています。つまり、実際に国も歳入の範囲内で歳出をするということは、時間差があり、できないのです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:リスクマネジメント⑯(5)「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」⑥」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 23Aug
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 9)現代における仮想の世界①  

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界① 『私たちは“仮想現実の世界”に生きている!』と題した本稿では、そのような“仮想現実”が現れる要因として、人間の認知機能上の特徴やプロパガンダ、さらには歴史上勝者の創り上げた虚構の世界について述べてきました。そこでは、“現代”については語っていなかったのですが、改めて現代の日本の政治経済の状況を調べてみますと、現代においてすら、私たちは、本当の現実世界に生きているのだろうか、誰かの“操作”“洗脳”によって、実は“仮想現実の世界”を“現実世界”だと信じ込まされているのではないかとの疑問がふつふつと湧いてまいりました。 そこで、以下では、現代の世界に蔓延している“仮想現実の世界”の一部について捕捉として述べてみたいと思います。 まずは、『国の借金1000兆円超!国民一人当たり800万円超の借金!』『このままでは財政破綻する!』『だから、緊縮財政が必要だ。財政支出は削減すべきだ』『プライマリー・バランスの黒字化目標が必要だ』『だから、消費税増税が必要だ』という一連の“大ウソ”が、今の日本では、経済学者や新聞・テレビなどのマスコミを席巻しており、大多数の日本国民がすっかり騙されて、その“ストーリー”に沿って踊らされているということです。しかも、見逃せないのは、この“虚構の物語”にもとづいて、現在もなお、日本政府によって、実際に“緊縮財政”が行われ、『デフレからの脱却(経済成長)』を目標に掲げた安倍晋三内閣の目玉であった三本の矢の二本目の矢『積極的な財政政策』はほとんど放たれることのないままに、インフラの更新や各地の新幹線の整備、教育充実、科学技術の振興、医療・介護サービスの拡充、地方経済再生、防衛力の拡充などへの財政支出は『プライマリー・バランスの黒字化目標』の名の下に次々と削減され、日本は依然として世界の先進国中唯一デフレ不況から脱却できず、むしろ深刻化して、『失われた20年』が『失われた30年』にもなろうとしています。この20年で、先進国でも、アメリカは2.3倍、カナダは2.4倍、イギリスは1.9倍の経済成長をする中、日本は最下位で1倍、GDPが全く増えていないのです。 このような経済成長しない国、貧困化に突き進む日本のデフレ不況の原因を企業の努力不足に求めて(いわゆる伊藤レポート)、コーポレートガバナンスを強化すべきだとの改革が進められていますが、そもそもその前提に誤りがあり、その原因は以下に述べる通り明らかに政府の経済政策、特に財政政策の誤りにあったと言わざるを得ません。 『国の借金1000兆円超!国民一人当たり800万円超の借金!』については、以下のような日本国民をミスリードする極めて悪質かつ狡猾な“情報操作”が行われています。そして、その結果、9割以上の国民がまんまと騙されてしまっているのです。 第一に、『国の借金』と言われ、『国民一人当たり800万円超の借金!』と言われると、如何にも私たち国民が借金をしているように“混同”“誤解”してしまい、『これ以上増やしてはならない』『少しでも減らしていくべきだ』と考えてしまいます。この“虚偽の物語”を作った者は、そのような国民の“混同”“誤解”を意図して狙っているのです。しかし、これはあくまで『日本政府の借金』であって、国民は全く関係ありません。経済主体としては、政府と家計の他にも、金融機関や企業、NPO、そして海外があります。また、国として見れば、海外からの借金総額664兆円(2018年年末)ある一方、外国に対して貸し付けているお金の総額は1006兆円あり、差し引きすれば、342兆円という世界最大の純資産を保有する国、むしろ世界一の金持ち国なのです。 第二に、“負債”のみに焦点を当てて騒いでいますが、貸借対照表の『資産』を併せて考慮すべきです。国は家計よりも企業に近いと言えます。企業の場合も多くの負債を抱えているのが、通常で、それによって研究開発投資や設備投資を行い、その結果、知的財産権や生産設備などの資産が企業には残りますし、投資以上の利益を上げていれば、何ら問題はありません。 第三に、日本銀行の金融緩和政策によって、日本銀行が国債を買い取っているため、“政府の負債”の約46%を日本銀行が保有しています(2018年末)が、日本銀行は日本政府がその株式の55%を保有する日本政府の子会社です。(日本銀行法第8条)それ故、日本政府と日本銀行とを『統合政府』として連結で見る国際的な常識から見れば、日本政府は子会社である日本銀行の保有する国債については、返済の必要もないし、利子すら払う必要はありません。連結決算のルールによって相殺されてしまうからです。 第四に、日本政府は、日本円建ての国債しか発行しておらず、自国通貨を持つ日本政府が財政破綻することはありません。実際、日本国債の格付けを下げようとした格付け会社に対して、財務省は、この点を強く反論しているのです。財政破綻したギリシャやアルゼンチンは、それぞれ自国通貨ではない、ユーロ建て、ドル建てでした。以上のことから言えるのは、『国の借金1000兆円』という問題は実質的に存在していないということです。そして、日本は世界一のお金持ちであり、『このままでは財政破綻する!』というのは全くのウソだということです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑮)失敗をしない経営:「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」⑤です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 16Aug
    • “仮想現実の世界” 8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡大②

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡大② 例えば、事業部長が、『こんなことはできないか?』と技術者に聞くと、大学出の頭に知識が一杯詰まった、いわゆるインテリほど、簡単に『できません』と言って、できない理由を次から次へと並べます。しかし、彼らはその優秀な頭を『できない』理由を考えるという消極的な方向でしか使っていません。その優秀な頭は本来『どうすればできるか』という積極的な方向で使うべきなのです。 このように、優秀な頭を持ちながら、直ぐに『できない』と言うインテリについて、松下幸之助は、『インテリの弱さ』だと嘆いて、次の様に述べています。「物事というものは、できることでも、それを「できない」と思っている限り、やはり実際にできないのではあるまいか。~少々のことでできないと考えることは、むしろ人間のすぐれた可能性を押しつぶしてしまうことにもなるのではなかろうか。」 昆虫のカナブンは、瓶の中に放り込まれて蓋をされると、そこから外に出ようと何度か試みますが、それがすべて失敗に終わると、もはや二度と外に出ようとはしなくなると言います。それは、その後蓋が開けられても変わらないのです。 先のインテリも上のカナブンも、実際には存在しない“自分の限界”を自分の数少ない経験から『自分にはこれはムリだ』と決めつけて(“一般化”)、そう信じ込んでしまうことによって、それが事実上“限界”として機能してしまうのです。そして、それは『人間の可能性』を『押しつぶしてしまう』もので、実にもったいないというわけです。 松下幸之助は、貧困や争い、様々な不幸という人間の現実の姿を見て、人間というものは、そういうものではないはずだと考え、「人間は、無限の可能性を持つ、崇高にして偉大なる存在である」という“新しい人間観”を提唱したのです。曰く、「人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができるのである。かかる人間の特性は、自然の理法に従って与えられた天命である。」 この松下幸之助の提唱する壮大な人間観は、万物の本質を生かし活用する力を持ち、『無限の可能性』を持つ存在として、このような自分の数少ない経験だけで簡単に『できない』と決めつけてしまう(“一般化”)人間の認知や評価・解釈上の特徴から、自ら設定してしまう、実際には存在しない自分の“限界”を取り払うという機能を持つのです。 実際、『自分にはムリだ』と思い込んでいる“限界”のほとんどは、このような実際には存在しない“限界”であることが多いのです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑭)失敗をしない経営:「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」④です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 09Aug
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている! 8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!8)松下幸之助の人間観と人間の使命=自己イメージの拡大① “仮想の世界”とも言えるこの現実世界において、『自分の心を使いこなす』ために、松下幸之助が提唱したことについて、もう一つ指摘しておきたいのは、松下幸之助は、“自己イメージ”というものが人間の心に対して持つ大きな力に恐らく気づいた上で、人類共通の“自己イメージ”とも言える『人間観』について、極めてスケールの大きな人間観を提唱し、人間というものに大きな“使命”を与えたということです。 私たち人間は、「自分とはこういう人間だ」という自分自身について信じているイメージを潜在意識レベルの中に持っており、それが自分の信念の一部を形成しています。そして、人間が、“信念”に沿って、それに合致するように考え、行動するのと同様に、人間は、そのような信念の一部である“自己イメージ”に沿って、それに合うような価値観(自分が重要だと思うこと)や信念(自分が正しいと思うこと)を持ち、物事を考え、行動し、感情を持つようにできているのです。自己イメージは、いわば潜在意識の中にあるソフトウエアです。同じ現象に対してはこのソフトウエアが働いて常に同じ反応を示します。また、この“自己イメージ”は、居心地のいいコンフォートゾーンを形成し、それと異なる新しい考えや行動を取ろうとしても、ホメオスタシス(恒常性維持機能)、即ち脳が現状を維持しようとする強力な自己修正機能のホメオスタシス・フィードバックが働いて、そこに引き戻されてしまいます。その結果、“自分には無理だ”と決めつけて挑戦しないとか、“自分は変われない”ということとなるのです。(苫米地英人博士のホメオスタシス仮説)即ち、その“自己イメージ”の枠から外に出て、考えたり行動したりすることは極めて困難なのです。 そのような“自己イメージ”というものは、自分自身でその経験に基づき、意識的に“選択”して作り上げたものばかりかと言えば、必ずしもそうではありません。むしろ、批判能力の未熟な子供の頃に親や学校の先生、あるいは、テレビなどから繰り返し聞かされたことがそのまま蓄積され、知らず知らずの間に創り上げられたものが多いのです。なぜそうなるかと言えば、人間の脳は繰り返し聞かされ、“慣れたこと”を“正しいこと”と認識するものだからです。(東京大学・大学院薬学系研究科・教授池谷 裕二氏) また、その後批判能力がついてきた後に、自分の様々な経験を通じて自己イメージを形成していく場合も、それらの経験を自分自身の独自のフレームを通して“削除”“歪曲”“一般化”して知覚し、また、評価・解釈して、作り上げた独自のものであり、必ずしも客観的な自己イメージと合致するものではありません。 このようにして形成される自己イメージは、“現実の自分”とは、実は“似て非なるもの”であって、それ自体“仮想の自己イメージ”と言えましょう。そのようなプロセスを経て、意図せずして“制約的な自己イメージ”を作り上げてしまい、それが自分に仮想の“限界”を設定してしまうことが実は多いのです。それらの“自己イメージ上の限界”は、“仮想”のものであるにも拘わらず、本人にとっては、心の中の現実世界の認識の中にある“真実”であるから、“現実に存在する限界”として機能してしまいます。「自分にはできない」「自分には無理だ」と。しかも、自己イメージは、潜在意識のレベルにありますから、本人はそのことに気がつかないまま、そのような制約的な自己イメージに沿って無意識の選択をし続けることになるのです。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑬ 4)失敗をしない経営:「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」③」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。

  • 02Aug
    • 私たちは“仮想現実の世界”に生きている7)人生は一つの芝居のようなもの⑥:人間としての成功?

      私たちは“仮想現実の世界”に生きている!7)人生は一つの芝居のようなもの⑥:人間としての成功とは? 松下幸之助が『二百五十年計画』を以って最終的に目指したのは、“物心共に豊かな人間社会”でした。ただ、松下電器(現パナソニック)が世の中に提供するのは、あくまで家電製品などの“物”です。松下幸之助は、昭和7年に『貴重なる生活物資を水道の水の如く無尽蔵たらしめることによって貧乏を克服すること』にこそ“生産者の使命”はあると感得し、その後も『良い製品を適正な価格で』提供すべく、事業経営を進めてきました。 では、松下幸之助の考える『豊かな心』とは何でしょうか? この点について、松下幸之助は『天分に生きる人間の幸せ、喜び』を強調し、次のように述べています。「しかし、天分に生きる人間の幸せ、喜びというものは、考え方によりますと全員がつかめると思います。また、人それぞれの天分がそれぞれに発揮されることによって、お互いの共同生活に彩りと豊かさが生まれ、生き生きとした百花繚乱の姿が見られるようになると思うのです。」「しかも、自分の天分を活かした天職というか、そういう仕事についている人は、たとえ社会的な地位や財産があろうとなかろうと、いつも生き生きとした喜びに溢れ、自分の生きがいはここにあるのだという自信のもとに充実した人生を送ることができると思うのです。~つまりはその人なりの持ち味を活かした人生なり生活を送ることが大事なのであって、そこに人間としての真の成功の姿がある、というわけである。」 松下幸之助は、あらゆる人にそのような『天分に生きる人間の幸せ、喜び』をつかむ可能性があると言います。要するに、『その人なりの持ち味を活かした人生なり生活を送ること』が大切で、そこにこそ『人間としての真の成功の姿がある』と結論づけるのです。そのようにしてあらゆる人が自身の“天分”を見出し、それに生きているような人間社会、そこに見える『生き生きとした百花繚乱の姿』こそが、『豊かな心を持つ人間社会』だと松下幸之助は考えたのではないでしょうか。 例えば、松下幸之助は、会社経営において従業員を見るときにも、誰もがそれぞれの“持ち味”を持っているものだと考え、その“持ち味”を引き出して、それを如何に活かすかということを常に考えていました。そのために、人の“短所”よりも“長所”を見て、評価し、思い切って人を使ったのです。人の短所ばかりを見ていると、次々と短所が見えてくる(“焦点化”)一方、その人の長所が、見えなくなる(“削除”)か、又は、軽視してしまう(“歪曲”)ため、思い切った人の起用をすることができないからです。昭和14年の『社主通達』において、「永年の間にその適性を見出し、適応せる職につきてこそ、社の為にも自身の仕事の上にも、御奉公の誠をつくし得て、真の仕合せとなるものなり。」と述べ、『適正(持ち味、天分)』を見出すようにすることは“長たるもの”の務めであるとしました。 また、松下幸之助は従業員が“愉快に働く”ことを求め、次の様に述べています。「自分としていま一番深く考えていることは、大勢の従業員諸君が毎日を愉快に働いておられるかという点である。願わくは一人残らず、その日その日を愉快に働いてもらいたい。その時に、真に会社の発展も各人の向上も望みうるのである。」脳科学の立場から見れば、このように『愉快に働くこと』、つまり『自らに与えられた天分を完全に生かし切(る)』って仕事をすることで、働くこと自体に(結果が出る前に)『本当の生きがい、幸せというもの』を味わい、生き生きとした喜びに満ちた状態になっているということは、行動しているプロセスにおいて脳からいわゆるドーパミンが出て、潜在能力が最大限に発揮されうる状態になっていると言えます。 このような世の中のすべての人が自分自身に与えられた天分を生かし切ることによって、各人が生き生きとした“百花繚乱の姿”が現出することこそ、松下幸之助が『250年計画』を以って実現しようとした理想である“物心ともに豊かな人間社会”の心の部分であろうと考えられます。 それ故、松下幸之助は、「仕事に成功するかしないかよりも、人間として成功するかしないかを考えたい。」と述べ、次の様に提言します。「最近、生活が豊かになったにもかかわらず、不平や不満をかこち、不安に悩む人が多くなったと言われるが、その基本的な要因の一つは、地位や名誉や財産といった基準に重きを置きすぎて自らの独自の天分を生かし、使命に生きることの大切さが忘れられている傾向が見られるようです。お互いの人間としての成功を、それぞれの天分を生かすことにあると考え、それを求めていくことによって、不満や悩みの解消に役立つことはもちろん、個人としての生きる喜びも、社会全体の発展繁栄の程度もより高いものになると思うのですが、どうでしょうか。」 事業に仕事に成功し、『社会的な地位や名誉や財産』のすべてを手にした松下幸之助の言葉であるが故に重みがあります。======================================ホームぺージ「経営の神様松下幸之助の経営哲学-すべては心の持ち方次第-」の方もぜひご覧下さい。最新の記事は、「6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑫ 5)「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」②」です。現パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助は、自身の経験から、従業員たちを路頭に迷わせるということだけは決してしてはならないと強く決意し、その責任感から、『失敗しない経営』を常に意識してきました。そのためには経営環境の変化の萌しを敏感に把握して対応していくことが大切であると言います。この考え方について、解説します。