成功者の条件~自分の潜在能力を最大限に発揮するために~⑭

 

 この“目標の実現”のために自分の立てた目標を潜在意識のレベルに“強固な信念”としてインプットする方法としては、先に述べた『自分に何度も言い聞かせること』に加えて、松下幸之助は、もう一つの方法に言及しています。それは、『目標を心に描く』ということです。松下幸之助は言います。「心に描かないものは絶対生まれない。しかし、心に描いたものは、理にかなってさえいれば、やり方いかんで可能になる」

 

 ここで、松下幸之助は、二つのことを述べています。第一に、「心に描かないものは絶対生まれない」ということ。当然のことのようにも思われますが、私たちは日常このことを忘れているのではないでしょうか?自らの決意を欠いたまま、あるいは、漠然と願うだけで具体的なイメージのないままに、ただ運が向いてきて、環境が変わって、人が助けてくれてよいことが起きないかと待っているのではないでしょうか?

 

 やはり大事なことは、『始めに思いありき』ということ、そして、その思いを“強固な信念”にまで高めるために、具体的なイメージとして心に描くことが大切だと松下幸之助は強調するのです。

 

 例えば、松下幸之助は、ダム経営について「大切なことは、色々形にあらわれた経営のダムもさることながら、それ以前の“心のダム”というか、「そのようなダムを経営のうちに持つことが必要なのだ」と考える“ダム意識”といもいうべきものである。そういうダム意識を持って経営をしていけば、具体的なダムというものは、その企業企業の実態に応じていろいろ考えられ、生み出されてくるであろう。」(「実践経営哲学」67p)

 

 ここで松下幸之助の言う『心に描く』とは、必ずしも明確に述べられているわけではありませんが、“描く”という言葉からも推測しうるように、いわゆるビジュアライゼーション(映像化)のことを言うものと考えられます。ビジュアライゼーションとは、“自分が目標を達成している”場面を視覚を始めとする五感をフルに使い、目の前の“現実”以上の臨場感を持って映像化することです。その際、外側から客観的に映画やテレビの映像を見るように見る(客観体験 Dessotiate )のではなく、自分がその目標を達成している場面の中にいて、実際に何かをしているのを五感で感じる(主観体験 Assotiate )ことを繰り返し行うことによって、目の前に実際に見えている“現実”の映像の臨場感を打ち破り、想像した映像の方により強い臨場感を感じるようになるのです。すると、脳はそれを“現実”と認識し、それに反する現象が生じると、その“認知的不協和”を“現実”と認識している方向に向けて解消すべく、考えて行動するようになるのです。これこそ、ウェイトリーの言う『自動操縦装置』の働きなのです。

 

 その経営に関する考え方について松下幸之助と多くの共通点を有する京セラの名誉会長稲盛和夫氏は、このビジュアライゼーションについて、より明確に述べています。「そうして、すみずみまで明瞭にイメージできたことは間違いなく成就するのです。すなわち、見えるものはできるし、見えないものはできない。したがって、こうありたいと願ったなら、あとはすさまじいばかりの強さでその思いを凝縮して、強烈な願望へと高め、成功のイメージが克明に目の前に見えるところまでもっていくことが大切になってきます。」(稲盛和夫著「生き方」p.50)

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