成功者の条件~自分の潜在能力を最大限に発揮するために~⑫

 

 松下幸之助もまた“目標を持つこと”と大変重視しました。「理想や目標を持たない企業は衰退する「人々に理念と目標と理想を提示できない指導者は、指導者を名乗る資格はない。」とまで断言していました。松下幸之助は、「経営者は常に理想を掲げ、目標を見定めてそれを社員に語りかけ、ともにその実現を図らなければならない。」として、自身5ヵ年計画』『週五日制(週休二日制)の導入』などを方針として発表するとともに、それらの方針を達成してきました。

 

 「5ヵ年計画」は、昭和31年1月の経営方針発表会で、「松下電器5ヵ年計画」として発表され、昭和30年現在で年220億円の販売高を、昭和35年に年800億円に、従業員を11,000人から18,000人に、資本金を30億円から100億円にするというものでした。当時企業でこのような長期計画を発表するところはなく、その構想の大きさとともに各方面に大きな反響を呼んだ。松下幸之助は、「この計画は必ず実現できる。なぜかというと、これは一般大衆の要望だからである。われわれは、大衆と見えざる契約”をしているのである」と社員に訴えました。実際、この計画は、その後4年間でほぼ達成され、5年後の昭和35年には、販売高1,054億円、従業員約28,000人、資本金150億円となり、目標をはるかに上回ったのです。

 

 また、「週五日制」については、日本で最初に「週五日制」(週休二日制)を導入したのは、松下幸之助でした。昭和11年(1936年)のことでした。その趣旨について、導入2年後に松下幸之助は次の様に述べています。「五日制が望ましいというぼくの議論には前提があるんです。その前提を忘れて五日論者だといわれると迷惑します。ぼくはいつも思っているんですが、日本の産業もこれからますます生産性が向上してくるでしょう。どの工場も精巧な機械を配置して仕事をせねばならなくなる。そうなってくると労働者は勤務中1分1秒のすきもなく、8時間なら8時間を全精神を集中してやらねばならぬ。だから非常に疲労が出てくる。この疲労回復のために、一日余分に休養を要するだろう。そこで週五日にしなきゃいけない」他方で、二日の休日の内一日を教養の習得にあてることを社員に求め、「週五日制」が社員にとって、産業人として、社会人としての成長に資するものとなることを強く望んだのです。曰く、「従業員の指導育成の面から深い配慮を払い、休日が増えたために、遊びに時を過ごし、健康を害したりすることのないように、月4回の休日のうち2回は休養に、2回は修養に当てるように望んでいる」(『松下電器 五十年の略史』1968年、松下電器産業刊)

 

 経営目標は、すべての経営資源の経営活動の方向をその目標に向けて一元化し、集中させて最も効率良くその目標の達成を図ることを可能にするもので、企業活動に不可欠のものと言っても過言ではありません。また、目標はそれに応じたエネルギーを発生させます。高い目標ほど、従業員と組織全体の大きなエネルギーが発揮され、低い目標ほど、そのエネルギーは小さくなります。目標が従業員たちに発生するエネルギーの大きさを決めるのです。これに対して、経営目標を持たない企業は、会社としての統一的な方向が示されないため、大きなエネルギーは生まれず、各部門の活動や各従業員の活動がそれぞれ目指す方向がバラバラとなり、無駄が多く非効率で、大きな成果を挙げることはできませんし、企業としての成長も期待できません。
 

 この点松下幸之助は、次の様に述べています。「人生を歩む上で、何かしら志を立てるということは誠に大事である。~それはいろいろな姿があっていいと思うが、そういうものを何も持たずして、ただ何となく日々を送るということでは、人生の喜びも生き甲斐も薄いものになってしまうだろう。やはり、一つの志を立て、その達成を目指して歩むところに、力強さが生まれてくるのだと思う。~まして、指導者には志がなくてはならないのは当然である。指導者が志を持ち、それを人々に訴え、皆が志を同じくして進むというところに自ずと力強い歩みが生まれてくる。指導者がそういうものを持たなくては、皆が進むべき道を見失ってしまう。」(「指導者の条件」66p)

 

 また、その目標の立て方について、松下幸之助は、現実から遊離しない範囲で、大きく立てるべきだと言います。現在の延長線上に目標を置くのではあまり意味がありません。それは目標がなくとも、辿り着くゴールだからです。必要な目標のは、組織の実力からは少し背伸びした目標、いわゆるストレッチした目標です。それに向けて全従業員がストレッチすることによって、企業としても成長し、大きな成果を挙げることができるのです。この点、松下幸之助は次のように述べています。「そして、その志は、やはり大きく立てるべきだと思う。もちろん全く現実から離れた夢のようなことという意味ではないが、“棒ほど願って針ほど叶う”ということわざもある。志を大きく持ち、高い目標を掲げてこそ、ある程度の事がなっていくのであって、初めから、志を小さくし、目標を低きに置いたのでは、叶うことでも叶わなくなってしまう。だから、現実というものから遊離してはいけないけれども、現実を見つめつつも、いわゆる理想を描くというような姿で、大きな志を立てることが大事なのだと思う。「指導者よ、大志を抱け」と置き換えても立派に通用するのではないだろうか。(「指導者の条件」66p)

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