成功者の条件~自分の潜在能力を最大限に発揮するために~⑧

  

 また、松下幸之助は、先に述べた通り、成功の秘訣は『強く願うこと』であり、成功することが自分の“強固な信念”となるまで自分自身に言い聞かせることだと強調するのです。“強固な信念”と化した“成功の姿”は、もはや単なる“期待”を越えて、“確信”となっており、そこには、“不安”や“疑い”、“恐れ”などの入り込む余地がありません。この点、“経営者のやり抜く強い決意”“情熱”の大切さについて次の様に述べています。曰く、「経営とか商売というものには、いくらでもやり方があると思いますが、本当に事の成否を決めるのは、会社の頂点に立つ人の、そのことをやろう、やり抜こうという決意、熱意がどれほど強いかということだと思います。ぜひともこの事業をやりたい、世のため人のため何としてもやらなくてはいけない、そういう決意が非常に強いものでなくてはならない。極端に言えば、命をかけるというような気概を持たずして、ことに当たっても、往々にして失敗に終わってしまうと思うのです。」

 

 そして、その“情熱”は、才能や知識よりも大切だと強調します。曰く、「愚賢いずれといえども神の目から見れば、タカが知れている。愚賢の差より熱意の差が人間の価値を決める。」「如何に才能や知識があっても、熱意の乏しい人は“描ける餅”に等しい。」そして、“情熱”こそが“成功への秘訣”だと言うのです。「正しい熱意のあるところ、必ず経営成功の道が拓けてくる。熱意は成功へのハシゴである。」「“どうしても二階に上がりたい”と願う人こそが梯子という工夫を考え出すのである。」具体的な方法を発見できるかどうかも、才能や知識ではなく、やはり情熱のなせる技だというのです。

 

 そして、信念と情熱との関係について、「信念のあるところに熱意が生まれ、熱意のあるところに信念が生まれる」と述べています。つまり、目指す目標(願い)が強固な信念にまでなれば、自然と“熱意”“情熱”は生まれてくるのだと言うのです。そして、また逆もしかりというわけです。

 

 また、『宇宙や自然、人間社会は限りなく生成発展していくものだ』という生成発展の原理”を踏まえれば、目標に向かう途中で困難や障害にあっても、それを“生成発展”という“心の窓”から見ることとなり、そうすると、将来の確実な成功(生成発展)へのプロセスにおける現象に過ぎず、むしろ成功するために克服するべき“課題”を教えてくれる“発展へのチャンス”なのだと積極的かつ前向きに捉えることが可能となるのです。松下幸之助は言います。「不景気も、病気も、失敗も、死も、生成発展の姿や。何が起こっても、生成発展の一こまやと思うたら、恐れるものはありませんわ。」(名和太郎著 「松下幸之助経営の真髄を語る」p.54)

 

 松下幸之助もまた、ウェイトリーの言う心の中にある否定的な考えが悪い結果を生むのだということに気づきました。それ故、「困難に直面したときに、それをどう考え、処置するかで、飛躍か後退か決まる。不安を抱き、心配したり、誰が悪いと憤慨しても、そこからは何も生まれない。心も萎縮し、知恵も出てき難い。」と言い、『より明るい物の見方を選ぶ』ことの大切さを強調したのです。曰く、「物事には様々な見方があり、一見マイナスに見えることにも、それなりのプラスがあるというのが、世の中の常である。そうであるなら、同じ物を見、同じ事態に直面してもより心豊かになれる見方を選んでいくというのがより豊かな人生に通ずる道ではないでしょうか。

 

 さらに、松下幸之助は、『積極の道』ということを社員に強く訴えました。曰く、「松下電器は従来、会社そのものの方針はもちろん、従業員一人一人の行き方にしても、「積極」を以て特徴としてきた。~極端に言えば、松下電器におけるもろもろのことは、「必ずしも頭が良いか悪いかではなく、積極的であるか否か」によって決められるのであると考えるのである。~積極とはたくましさであり、闘い取ることである。競争場裡にも臆せずに駒を乗り入れることだ。」(昭和16年6月一分間の修養)

 

 次にウェイトリーの言う『自己コントロール』ということについて言えば、松下幸之助は、受け身で他人や環境に依存してその影響を諸に受けつつ生きる生き方を“無力な将棋の駒”と称してこれを排し、自ら『主体的に生きる』ことを選択しました。曰く、「人生においても仕事においても、あくまでも自分自身が主人公であり、受身ではなく、主体的に生きてこそ、感激感動も生まれてくるということである。」つまり、自らの人生や仕事について、自ら考え、主体的に行動し、その結果について“責任”を持つこと、そのためには自分自身が自分の人生の“責任者であるとの意識”を持つことが必要です。自分で考えて決断し行動した結果がうまくいかなかった場合には、自分自身にその原因がある、即ち「失敗の原因はわれにあり」と自然に考えることができるのです。松下幸之助は、物事がうまく行かなかったときに、自分を守ろうとして、その失敗の原因を他人や環境のせいにして自らを“被害者”とすることは、結局自分を他人や環境の影響から逃れられない“無力な将棋の駒”としてしまうことに他ならず、それはつまらない人生だとして、これを拒絶するのです。

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