最近、iPS細胞が脚光を浴びていますが、大学での研究は企業の研究と比べて何が違うんでしょうかね。


とある大学でずっと研究をされていた方が、企業に就職を決めた時に


「お前は、ダークサイドに行くのか?!」



と言われたそうです。


つまり、企業ってば研究の世界ではダークサイド。

清廉潔白な、「純粋な知的探究心を満たすため」の研究。


一方で、「利益を生み出すため」の研究。


という意味では、確かにダークサイドっぽいと思います。

知的探究心を満たす過程で、将来の医療に貢献するなら、これほどに美しいことはない☆彡


・・・・・まぁ、そうかもしれませんが、本当に本当に・・・・・全部そうですか???


私は、企業で研究してます。

もちろん将来的にお金にならない研究はできません。

ぶっちゃけ、希少疾患の研究ってのは、企業としてはあんまり手を出したくないところですから、大学の研究がとても大切。


それはもちろんわかっています。


一方で、大学の研究とか、数々の論文を読んでると「将来、これはきっと医療の役に立ちますよ。」って最後を締めてる割に・・・・役に立つ瞬間ってのは、企業が研究を引き継いで、モノにしてこそ。と思うわけです。


つまり、最終的には、企業が研究をやらないと「医療に貢献」しないわけですよね。


そういう意味では、ダークサイドな企業研究ってばすごい!と思うわけです。

医療に貢献に直結してるんですもの。


お医者さんが、目の前の患者さんをひとりひとり助ける。

大学の研究者が、いつかそのうち役に立つかもしれないデータを蓄積して、いつか医療が発展する。


そんな中、


製薬企業は、一個の薬で、何万人という人を助けられるんです。


しかも、直接的に!!


獣医師を志した根幹には、医療への興味。そして、「医療を通じて動物を、彼らを大切にしている飼い主を助けたい」という気持ちがあったのです。


そういう意味で、獣医師を志した時の気持ちから、今は遠いところにいるようで、そんなに離れていないんだろうなぁって思います。


昔思っていたのとは、随分違う形で医療に関わっていますが、そんな自分は嫌いじゃないです。



・・・・・・・と、たまにこうして、自分の立ち位置を見直さないと、ツライ日もあります(笑)




私は、製薬会社で研究職で働いています。


獣医学科出身の学生が、製薬会社に就職する際、引く手数多と呼ばれる部署が


「安全性試験を実施する部門」


でしょう。

安全性試験ってなんぞや?わからないですよね?

私も会社入るまでよくわかってませんでした。


そこで、製薬会社が何しているのか整理しましょう。


薬の研究開発の流れは、ザックリ4ステップ


基礎研究

前臨床試験

臨床試験

販売


ザックリしすぎ!との意見もあるかもしれませんが、ご容赦を。


ほとんどの獣医さんは、製薬会社において「動物を使う実験」に関わる業務をします。

動物を使う実験というのは、いわゆる「前臨床試験」の所ですね。ほとんどがここに関わっています。


前臨床試験の中には、おおまかに、「薬効薬理試験」と「毒性試験(安全性試験)」があります。


・薬効薬理試験は、ラットなどの実験動物を用いて、薬の効き方を調べる所。


・毒性試験は、薬効のある薬がどれほどの量飲むと毒になるか確認する所。


研究の色合いが強いのは、「薬効薬理試験を担当する部門」だと思います。

私が働いているのはこの部門。

生化学、生理学、薬理学の知識を総動員して薬のメカニズムの解明など、を実施します。

獣医がいるような所は、動物に薬飲ませるような作業中心にないりますが、アカデミックに色々考える部門です。やってることは大学のラボの延長線上かもしれません。

薬学部や理学部出身者が多く、分子生物学的な基礎的知識に乏しい獣医出身の私は、周囲についていけないため、最初結構ツライ思いをしました。

ただ、ミクロの視点しか持たない彼らに比べて、マクロな視点をもつ獣医出身は、ある意味で希少!!

自分の存在価値をそこに見出しています・・・!ええ!!



「毒性試験を担当する部門」は、企業に入社する獣医の大部分が進むに違いない部門。

最近は、自社でやらずに外注する企業も増えているため、安全性試験を専門にやる企業もありますね。

長期間、薬候補の化合物を動物に飲ませて、その後の生体変化を細かに調査するのが仕事です。

最も重要視される、「病理所見」を見ることのできる基礎知識を備えた学部って、「獣医学科」位なんですよね。


実際、薬学出身者たちが、一ミリたりとも「組織学像」を理解できないのには驚愕しました。

血管の内膜、中膜、外膜。浸潤してる細胞なのか、その組織の細胞なのかもわからないんですって。


だから、大学生の頃、「企業に強いのは病理学研究室」と言われていたんですねー。

安全性部門に入社した、獣医同士は、いつも同じ学会で再会するようで、うっすら羨ましくも思っています。


毒性試験は、お役所の決められた基準に則って実施することから、かなりの割合でルーチンワークです。

「研究」がしたいために、安全性部門から異動した獣医も知っていますので、ルーチンが嫌な人には辛いのかも。

一方で、ルーチン作業なため、比較的「定時を守れる部門」という印象があります(まぁ、これは会社によるかもしれませんが)

私が・・・・朝ゆっくり来て、夕方さっさと帰る獣医出身の同期を恨めしく見てるなんて・・・・・・そんなこと・・・・ちょっとあります。



他に、どんな企業での仕事があるかというと・・・・私の知ってる範囲では、


・臨床試験部門にいる人もいます。こちらは、本当に獣医はマイナーですが、医学的な知識が役立って、臨床試験に入る患者さんのカルテを読み解く事から、臨床学の知識が役に立つ。と聞きます。


・検疫や動物の飼育繁殖管理部門というのもあります。動物実験をするということは、「実験動物飼育施設」があるということ。この実験動物の、健康状態のチェックを含めた検疫作業など、獣医師免許を持つ人間にしかやれない仕事として、知られています。

知り合いが、入社一年目にして、「検疫部長」に任命されたことがありましたが、その部門の獣医師免許を持つ人が居なくなってしまったため、ペーペーを部長に仕立て上げたそうです。

つまり、獣医師免許を必須とする珍しい企業職ということでしょうか。


・番外編として。製薬ではなく飼料系会社ですが、動物病院向けの営業として働いている人もいますね。普通の営業MRも一応・・・なれるようですよ。



ほかにも、きっと仕事はあるんでしょうが、私の知ってる範囲だとこんなかんじ。


製薬会社といえば、薬学部のオハコといえそうな業種ですが、

獣医は、その求められる職制の幅広さと、学生の全体数の少なさ(かつ、企業就職希望する人間も少ないこと)から、身の丈に合わない会社であっても入社できる可能性が高いイメージがありますね。


今日はこんなところで。ではでは。



製薬会社でチマチマ働いている、ペーパー獣医師のとろです。はじめまして。


公務員獣医さん、臨床獣医さん、そして私のような企業獣医さん


実は獣医って色々な仕事があるんですが、皆様があまり知らなそうなサイドから、「獣医師」の一面を紹介できたらと思います。


現役獣医師さんのコメント大歓迎です。

私、獣医学科出身ですが、ただの一企業戦士なので、はっきりいって獣医とか名乗るのもおこがましいです。獣医師免許なんて欠片も業務で使ってません。


一度も運転したことないペーパードライバーみたいなものです。


だが、ここではあえて、「獣医師」の定義には、


「獣医師免許を持った社会人」


とさせていただこうかと思います。(そうしないと私含まれないからネ☆彡)


獣医師免許を業務上使っていなくても、獣医師免許持ってたら獣医師としてカウントします。


よくイメージされる、小動物臨床をやってる獣医さんとイコールにはならない予定です。



「獣医」という言葉がなんとなく気になる、そんなあなたへ送りたい( ´∀`)このブログ。