私は、製薬会社で研究職で働いています。
獣医学科出身の学生が、製薬会社に就職する際、引く手数多と呼ばれる部署が
「安全性試験を実施する部門」
でしょう。
安全性試験ってなんぞや?わからないですよね?
私も会社入るまでよくわかってませんでした。
そこで、製薬会社が何しているのか整理しましょう。
薬の研究開発の流れは、ザックリ4ステップ
基礎研究
↓
前臨床試験
↓
臨床試験
↓
販売
ザックリしすぎ!との意見もあるかもしれませんが、ご容赦を。
ほとんどの獣医さんは、製薬会社において「動物を使う実験」に関わる業務をします。
動物を使う実験というのは、いわゆる「前臨床試験」の所ですね。ほとんどがここに関わっています。
前臨床試験の中には、おおまかに、「薬効薬理試験」と「毒性試験(安全性試験)」があります。
・薬効薬理試験は、ラットなどの実験動物を用いて、薬の効き方を調べる所。
・毒性試験は、薬効のある薬がどれほどの量飲むと毒になるか確認する所。
研究の色合いが強いのは、「薬効薬理試験を担当する部門」だと思います。
私が働いているのはこの部門。
生化学、生理学、薬理学の知識を総動員して薬のメカニズムの解明など、を実施します。
獣医がいるような所は、動物に薬飲ませるような作業中心にないりますが、アカデミックに色々考える部門です。やってることは大学のラボの延長線上かもしれません。
薬学部や理学部出身者が多く、分子生物学的な基礎的知識に乏しい獣医出身の私は、周囲についていけないため、最初結構ツライ思いをしました。
ただ、ミクロの視点しか持たない彼らに比べて、マクロな視点をもつ獣医出身は、ある意味で希少!!
自分の存在価値をそこに見出しています・・・!ええ!!
「毒性試験を担当する部門」は、企業に入社する獣医の大部分が進むに違いない部門。
最近は、自社でやらずに外注する企業も増えているため、安全性試験を専門にやる企業もありますね。
長期間、薬候補の化合物を動物に飲ませて、その後の生体変化を細かに調査するのが仕事です。
最も重要視される、「病理所見」を見ることのできる基礎知識を備えた学部って、「獣医学科」位なんですよね。
実際、薬学出身者たちが、一ミリたりとも「組織学像」を理解できないのには驚愕しました。
血管の内膜、中膜、外膜。浸潤してる細胞なのか、その組織の細胞なのかもわからないんですって。
だから、大学生の頃、「企業に強いのは病理学研究室」と言われていたんですねー。
安全性部門に入社した、獣医同士は、いつも同じ学会で再会するようで、うっすら羨ましくも思っています。
毒性試験は、お役所の決められた基準に則って実施することから、かなりの割合でルーチンワークです。
「研究」がしたいために、安全性部門から異動した獣医も知っていますので、ルーチンが嫌な人には辛いのかも。
一方で、ルーチン作業なため、比較的「定時を守れる部門」という印象があります(まぁ、これは会社によるかもしれませんが)
私が・・・・朝ゆっくり来て、夕方さっさと帰る獣医出身の同期を恨めしく見てるなんて・・・・・・そんなこと・・・・ちょっとあります。
他に、どんな企業での仕事があるかというと・・・・私の知ってる範囲では、
・臨床試験部門にいる人もいます。こちらは、本当に獣医はマイナーですが、医学的な知識が役立って、臨床試験に入る患者さんのカルテを読み解く事から、臨床学の知識が役に立つ。と聞きます。
・検疫や動物の飼育繁殖管理部門というのもあります。動物実験をするということは、「実験動物飼育施設」があるということ。この実験動物の、健康状態のチェックを含めた検疫作業など、獣医師免許を持つ人間にしかやれない仕事として、知られています。
知り合いが、入社一年目にして、「検疫部長」に任命されたことがありましたが、その部門の獣医師免許を持つ人が居なくなってしまったため、ペーペーを部長に仕立て上げたそうです。
つまり、獣医師免許を必須とする珍しい企業職ということでしょうか。
・番外編として。製薬ではなく飼料系会社ですが、動物病院向けの営業として働いている人もいますね。普通の営業MRも一応・・・なれるようですよ。
ほかにも、きっと仕事はあるんでしょうが、私の知ってる範囲だとこんなかんじ。
製薬会社といえば、薬学部のオハコといえそうな業種ですが、
獣医は、その求められる職制の幅広さと、学生の全体数の少なさ(かつ、企業就職希望する人間も少ないこと)から、身の丈に合わない会社であっても入社できる可能性が高いイメージがありますね。
今日はこんなところで。ではでは。