出産は人類が誕生し2足歩行ができ脳が発達して頭が大きくなってから危険になり命がけのものになった。神社に行けば「安産お守り」があり各種のお守りと同じに扱われている。神様に安産を祈るしかなかった時代が長く続いたからだろう。将軍のこどもが産まれる時には全国のお坊様を集めて夜どうし祈ってもらい、警護の武士は弓の弦を鳴らして安産を願ったという。それでも子供も母親も亡くなることもよくあった。それぐらい過酷で運に任せるしかない事だった。お産は「棺桶に片足を突っ込んでいるようなもの」という言い習わしがあった。そんなことを娘に教えてあげられる母親は今はいないだろう。産婦人科医師にとってお産は今でも怖く危険と隣り合わせの医療だが、安全に産まれるのが当たり前と思って出産する女性との意識の違いは年々隔たりが大きくなっていると感じる。それでも産む女性が健康と命をかけることに違いはないし実際に陣痛の痛みに耐えられるだろうかと恐怖感を持っている妊婦さんは多い。当院では「無痛分娩」を麻酔科専門医によって説明していただきその結果自分でお産の方法を選択できるようにと「無痛分娩外来」を12月から始めます。臨床側からの情報を提示することでへだたりが無くなることを願っています。