龍神 ~出会い~ | 比翼連理 ~執事の愛が重い件~

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当ブログは、年の差11歳の主従が送る日常の風景。ネグレクトの母から赤子の私を引き取り育ててくれた付き人の白侶(ハクロ)は、その美貌と優雅さで見る者を虜にする外面の良い悪魔。そんな彼のドス黒い“本性”を主人ならではの目線で書き綴るノンフィクションです。

前回ご紹介した【白髭の龍神様】

今回はそんな【龍神様】との出会いについての記事です。
ちなみに、この記事は初投稿。

ちょっと長いですが、宜しければご一読のほど(_ _)


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『白髭沼』

神社も、地元では厳島神社ではなく、「白髭神社」と呼ばれている。

妻の孝姫は、この沼の【白髭の龍神様】が大好きだ。
龍神さん龍神さん♪と言って懐く妻は、信心や敬う心を通り越して、【龍神様】の所に遊びに来る度に子供の様なはしゃぎっぷりを見せる。


この場所に来ると、必ず龍神祝詞をあげる孝姫。

私はその間、近くでその様子を眺めながら子供たちの面倒を見るのが日課だ。

高天原に坐し坐して天と地に御働きを現し給う龍王は 大宇宙根元の御祖の御使いにして一切を産み一切を育て 萬物を御支配あらせ給う王神なれば・・・

覚えたての祝詞を一生懸命、高らかに唱(うた)いあげる孝姫。
その声に、いつも白磁色の鱗を陽光に、時に月明かりに煌めかせて耳を傾ける【白髭神社の龍神様】。

御神酒とお賽銭をお供えし、祝詞を上げ終えると、妻はいつも、二言三言【龍神様】と話しをしてから私のところに戻ってくる。

一度、どんな事を話しているのか聞いてみた事がある。
他愛もない事だった。

日々の出来事や日常で感じた事、その報告など。
自分がその時に感じた“感情”や“思い”が本当にそれで合っているのか?自分は間違っているのではないのか・・・質問しているのだと言っていた。

けれど、「それで何と?」と聞くと、妻はいつも、私には聞こえないんだよなと少し寂しそうな顔をする。


・・・・・そうですか・・・



孝姫は、視えない、聴こえない。

人としての目は見えるのだが、“霊能者としての目”が視えないのだ。
耳も、霊能者としては聞こえない。

波長が合った時に感じたりは出来るようだが、それが日常的にというわけではない。

先天的さや後天的さも関係してくるが、私の目は「昔」から“天眼”だったので、こういった物事は日頃日常的に受け取ることが出来た。
苦労した事はない。
修行で身に付けたものでもないから。

逆に、「何故こんな“目”を得る為に苦行までするのか?」という、疑問を子供の頃には持っていたくらいだ。



『     』

呼ばれて顔を上げたら、大きな口を閉じた白い【龍神様】と目が合った。


神々の言葉は、人の言葉のそれとは異なる。
目があった瞬間、龍神が何と言ったのか解る人間と、解らない人間がいるだろう。

神々の“声”は、「言葉」で伝わるのではない。
それが何で伝わるのかは 前の記事を読んでもらえれば解るだろう
この世には、口で説明するより実際に感じてみた方が解りやすい物もある、と・・・いうことだ。


『     』

本人に言ってやって下さい
きっと喜びますよ


が、生憎私の妻は、後天性の霊能者だった。
この時【龍神様】が何と言ったのか、彼女には解らない。
【龍神様】も龍神様で、その大きな御頭を横にズズズと降って「お前が伝え・・」という。

何故「視えない」のか、
何故「聞こえない」のか、

私にはその感覚の方が解らない。

だが、そんな孝姫の目と耳は、今は───私なのだ。


“またおいで”・・・だそうですよ



そう言えば───

初めて【白髭の龍神様】に出会ったのはセラピストの孝姫が珍しく人の心の醜さに病み、潰れ、自信を失いかけた時だった。

「白髭神社」は妻にとって地元。
昔から存在は知っていたし、行ってみたいと思っていたとも話す。
私と結婚した後も、妻は「行きたい行きたい」と、それは長いこと悩んでいた。

が、自分が苦境に立たされた時、どうしてその沼を訪れてみようと思ったのかは解らないと、本人はあの時の事を今も苦笑混じりに話す。


人の醜さなど、上げたらキリがない。
セラピストのわりに要らんところで急に純粋になる事がある孝姫。

私と孝姫では生きてきた環境も境遇も違うので、私はこの時、孝姫の悩みに応えてやる事が出来なかった

当然、間髪いれず『アンタには“弱い人間の気持ち”なんて解んないのよ!』と激怒された。
が、『生き残るために強くならざる得なかった私の気持ちも、貴女には解らないでしょう』、そう言ったら、さらに烈火の如く激怒した妻に、再度平手打ちを喰らった。


孝姫がやっと【龍神様】の所に行く決心が着いたのは、そんなケンカをした、2日後の事だ。

2日間で、孝姫は必死に“龍神祝詞”を頭に叩き込んでいた。
端で見ていてもその真剣さは伝わってきた。

結局、私はケンカの事を孝姫に謝ることが出来なかった。


付き添って奥の院を訪れた際、孝姫の眼前に姿を現した【白髭の龍神様】。

その姿を、やはり彼女は視(と)ることが出来なかったが、

「また、おいで」

そう伝えてやった時の孝姫の顔は、晴れ晴れとして、とてもいい表情をしていた。



・・・・・納得のいく答えは、出ましたか?


何の役にも立たず、謝罪すら出来ていない私の問いに───

何も聞こえなかったけど、励ましてもらったような気がする

と、微笑んだ妻。


二人のケンカも、いつの間にか風に吹かれてどこかへ飛んで行ってしまった・・・・・

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これが、孝姫と私の、【白髭の龍神様】との初めての出会い。
有り難いことに今も交流があり、親族含め家族一同、みな仲良くして頂いている。

酒好きで、子供に甘い【龍神様】。

次は、子供達とのエピソードを載せようと思う・・・