2.血と硝煙の街2 | 風の痛み  Another Tale Of Minako


リクアニア共和国
1991年 3月15日 

「おばさんによろしく言っといてね」
玄関まで母は出てきた。
「うん。わかった」
サーニャはそう言うと、先に出ていた姉のエヴァに駆け寄った。

街が戦場になって、店と言う店はすべてシャッターを下ろし、営業をやめてしまっている。
それでも、少し離れた市場には食料品くらいは並んでいるのだが、サーニャたちカルディア人には売ってくれない。
幸い、リクアニア人の男性と結婚しているおばが近くに住んでいて、そのおばが食料品を分けてくれるのだ。
外出するのは危険だったが、食べ物がなければ生きていけない。

家を出たところで隣のヴェロワおばさんに声をかけられた。
「あら、買い出しかい?」
二人は、大きなリュックを背負っている。
「ええ」
「市場まで行くのかい?」
「ううん。おばさんのところ」
「ああ、そうかい…おばさんに分けてもらうんだね。しょうがないねぇ、でも、いつかまた、きっともとのようになるから、それまで…辛抱するんだよ」
カルディア人には、ものを売ってくれないことはヴェロワも知っていた。
「何か分けてあげられればいいんだけど、おばさんのとこにも何もないんだよ。ごめんね」
気のいいおばさんで、いつも親切にしてくれている。
「ううん。いいの。だいじょうぶだから…」
「サーニャ…早く…」
ヴェロワと話し込むサーニャをエヴァが急かした。
「ぶっそうだから、気をつけるんだよ」
「はい」
サーニャは、先に歩き出したエヴァの後を急いで追った。



「あっ…」
二人が戻ってみると、玄関のドアが少し開いていた。
サーニャと姉のエヴァは、急いで部屋の中に入った。
部屋は、椅子が転がり、荒らされていた。
「お父さん」
「お母さん」
呼んでも返事はない。
サーニャは、2階に駆け上がったが、やはり誰もいない。

「お父さん……」
サーニャは両親の寝室で座り込んだ。
連行されたのだ。
そうに違いない。
がらんとした部屋。
情報提供という名の密告
密告するぞと言わんばかりに押しかけてきて物を要求する隣人たち。
おもだったものはすでに、持っていかれた。
そして、破壊活動幇助という罪状で行われる虐殺
サーニャも現実にそういう光景を目にしたことがある。

突然、大きな音がして、階下に足音が聞こえた。

「おい、捕まえろ」
薄汚れた兵士たちが3人、慌ててキッチンに駆け込んだエヴァに襲い掛かった。
「開けろ…」
兵士が叫ぶ。
エヴァは必死にドアを押さえるが、3人の男の盾になるほど丈夫なドアではない。
ドン…ドン…ドン
3度目にドアは蹴破られてしまった。
「いやーっ…やめて…やめて…」
エヴァの絶叫が、建物中に響いた。

(エヴァ…)
サーニャは、動けなかった。
どうしていいのかわからない。
助けたいが…どうやって?
見つかれば…自分もやられる。
ただ、怖くて…動けなかった。

「隠れてやがったのか…。娘がいたはずなのに…おかしいとおもったぜ」
エヴァは男達に引きずり出された。
「いや…いや…あああああああ」
「大声出すな」
男は、ナイフを取り出し、エヴァの服を切り裂くと、その布切れをエヴァの口に詰め込む。
「あわ…わ…わ…あわ…」
それでもエヴァのくぐもった声が響く。
「今日は、俺が最初だぜ」
汗と埃に汚れた無精ひげの男が、ズボンを脱いだ。
「おい、押さえてろ」
もう一人の男が、エヴァの両腕を床に押し付け、エヴァの頭をまたいで両肩にひざを乗せて座った。
手馴れたものだ。

女が声を出せば、男は、ぐっと腰を落とし、女の顔の上に座る。
2、3度、やれば女はもう声を出さなくなる。
声を出せなくなった女もいたが、それはそれでしょうがない。
また、代わりをさがすだけだ。
代わりならいくらでもいる。

ズボンを脱いだ男が、エヴァの足を開いて、腰を落とした。
エヴァは必死に足をばたつかせるが、その足を男がぎゅっと両脇に抱える。
「暴れるな」
そう言うと、エヴァの頭をまたいでいる男が、ナイフの切っ先でエヴァの乳房を突いた。
「ひゃっ…」
エヴァの体が電気が走ったかのようにぴくっと震える。
乳房に赤い血の粒が浮き上がった。
エヴァは、抵抗を止めた。

男は、指にべっとりと唾液をつけ、エヴァの秘部をまさぐり、無抵抗のエヴァに、強引に押し込んだ。
エヴァはまったく動かない。
「うふぇっ…こりゃ、いいや。上等だぞ、こいつは…」
「そうかい。戻ってきたかいがあったってもんだ」
「おっぱいも…こりゃ、いい手触りだ」
「なんだな…カルディア人も、若い女はいいよな」
「そうだな、年とるとぶくぶく太るが、30くらいのぷっくりしたのは、たまらねえな」
「男はいらねぇが、女は生かしといたほうがいいよな」
「ああ…まったくだ」

「ああ…あ……うっ…」
男が大量にエヴァの中に放出した。
「うう…」
無抵抗にまったく動かなかったエヴァが低く小さく嗚咽する。

「おい、早く代われ。今度は俺だ」
横の男は、待ちきれないといったふうにもうズボンを脱いでいる。
「待てよ。まだ、出きってねぇんだ」
「そんなのは、女に舐めさせろよ」
先の男を強引にどかし、次の男が入れ替わった。
「そうだな」
エヴァから離れた男は、エヴァの顔をまたいで、喉元にナイフを押し付ける。
「さぁ、その口できれいにお掃除してくれるかい。お嬢さん」

カタン
2階で物音がした。