サッカーの想い出は家族の宝物 | Minahei

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ライター戸塚美奈のブログです。

キックオフに間に合ったのは出先から直帰してきた父ちゃん。帰って来てから少しダイニングのテーブルで仕事をしていたものの、集中できないようで、さっさと仕事道具を片付けるとテレビをつけて、ビールもグラスについで、どっかとテレビの前へ。私は夕飯の支度をしながら。

さぁ今日はどうかなと思いながら玉ねぎを切っていたら、いきなり父ちゃんが叫んだ。

「ゲンキー‼‼‼」。

えっ!? 見れば原口元気選手がドリブルで上がっているではないか。その瞬間鳥肌がさーっとたち、胸がキューンとしてしまって日本代表はどうでもよくなった。原口選手とうちの長男の名前は同じ(漢字は違う)。長男も、何度も何度も、サイドからドリブルで上がっていってゴールを決めた。クロスを上げて決勝点につなげた。父ちゃんの絶叫と原口選手のドリブルで、なつかしい光景が一気に私の脳裏によみがえったのだ。土のグラウンドを思いっきり駆け上がった秋の日。土埃の臭い。あの素晴らしい週末の日々‼

・・・・・・父ちゃんは代表戦を観ているようだったのでなにも言わず、私ひとりでしばし思い出に浸る。

 

試合途中に長男次男も帰って来て家族で観戦。ピッチにいるのんきなカモメを見て、「ホラ、あの鳩がいっぱいいるグラウンドあったよな」と父ちゃん。「W公園だよ、あのギンナン臭いとこ」「誰だっけ、鳩嫌いなヤツ」「Yだよ。鳩がいるとやる気がなくなるんだよな」Yんちの誰かのパーカーのフードにギンナン入れて帰って、それそのまま洗濯してたいへんなことになったって言ってたっけ。

本田の走り方が高校時代のチームメイトのKにそっくりだ、Kは2年の時ホントに調子がよかったとか、高校時代のことを長男話し始める。

「オレ高校のとき、自分ではめいっぱい頑張ってるつもりだったんだよね。でも今考えると、本当にいっぱいいっぱいじゃなかったような気がするんだよな。もっともっとやれたのに……」そんなこと言ったって。あの時はあの時で精いっぱいだったんだよ。細くって筋肉もなくて、スタミナ不足だった。「オレとKが出てるときは負けたことなんかなかったのにな」仕方ないよ、コーチに認められなきゃ試合には出られないんだから。じっと料理をしながら聞いていたけど・・・・・・たぶん、まだ相当未練があるのだ、サッカーに。

思い出すと今も悔しいこともいっぱいある。でも、サッカーのことをみんなで話して、なんとなく満たされたような気持ちになったのはなぜだろう(試合もドローだったのに)? こうして、サッカーを観るたびに、家族みんなが共有している思い出が鮮やかによみがえる。サッカーを観ながらそれぞれが思っていること、とりとめのないことを話す。思い出して笑う。・・・・・そういう共有体験があるって、家族にとってけっこう幸せなことかもしれない。