冷たいそのドアのノブに手を掛け僕は外に出る
外は暗く藍色の空がある
驚いた事に雪が降っていた
雪は玄関のすぐ側まできて積もっていた

僕は手摺に腕を組み空を見上げた
その瞬間、僕は雪となった

藍い空から降る雪は電燈の光りを帯びて蒼白く浮き立っていた
それはまさしく降っていた
まるで自分の力で飛翔するかのように降っていたのだ

蒼く発光し僕を目指すかのように辺り一面に
蒼く澄みきったその広い大空から降ってきた

そこはまさしく美の世界であった
暗く蒼いその世界とその蒼い雪はまさしく美の象徴であった

次の朝、人々は真白に覆われたその世界を見て喜びそして驚くであろう
しかしその人たちがその数時間前のその景色を知らないということを僕は残念に思う
君がいつか見たいと言っていた

海を見に来ました

僕一人で

一人で見る海は何も語らず語りかけず

ただ静かな陽射しを浴びて波が崩れます

砕けた波は白い細かい粒となって

砂浜に消えてゆきます

貝殻はその中でただ静かに

ただ揺れています

波は変わりなく崩れます

それはどんな音楽よりも長く続く

単調でそれでいて飽きることのない

例え一生この音を聞いたとしても

僕の心は動かないでしょう

波の音はいつまでもいつまでも

それは空に輝く星々の歴史のように
朝、目を覚ます僕に君はおはようと言い

台所に立っていた。

コーヒーが欲しくて起き上がる

朝はすがすがしく

二人きりの生活はいつもおはようから始まる

朝、目を覚ます僕に君はおはようと近付き

僕にくちづけする

やさしく目が覚めて

それでも欠伸が出る

全ての人々が幸せに見えて

おはようの言葉がいつも響く

朝、食べた卵焼きはいつもの味と違うけれど

おいしくて、おいしく思えて、つい

笑顔になってしまう

楽しい会話の中で僕は仕事をし

今日はもう終わりと早めに終わる

それから彼女と街へ出る

楽しい時間はいつまでも続き

仕事は進まないが気にしない

朝、目を覚ます僕に君はおはようと笑い

今日も一日が始まる






やめろよ、そんな叫びも通じない

口に出せない怒りは通じない

人の世に生まれた限り

みな生きて

それでも命は

僕の体に流れる血は

いつの間にか流れ落ち


やめろよ、そんな声は届かない

口に出せない行動は見向きもされない

人の子として生れた限り

みな笑い

それでも命は

僕の体に宿る心は

いつの間にか流れ落ち


遠くどこかで走る人は

それでも生きてみて

それでもそんな目をして

僕らにとって恐ろしく

余りに悲しい目は

生れた限りは人として

みな生きて

それなのに

彼らの目はもう人ではなく

人ではなく、人ではなく

それでも彼らは人でなく
もうすぐ死ぬというのに僕の手の中でまた光ってるホタル

君は僕の手にいつまでも居てもいいんだよ

飛べない最後ならいつまでも居てもいいんだよ

飛べない最後なのにいつまでも光り続ける

弱く緑のかかった黄色い光は

この真っ暗な空に似合い

そして一つの川となる

その光はゆっくりと

ゆっくりと

光り続け川となる
たまらなく多くの人たちが立ち止まる交差点で
ただ足踏みしている人達はたちまち道を塞いでしまう

彼らの内、何か考える人は幾人いるだろう
その目は立ちはだかるコンクリートのビルを見
目に映るものの中に太陽も鳥もそして草もない

そんな世界でも激しく言い合いただ生きる人もいる
彼らはコンクリートの囲いの中で生きているようで
吸う空気はほんとは何であろう

その空気は冷たく気持ち良かろうが
それは風でもなく草でもない

そんな中でふと何かを想うがそれは
いつの間にか消えてしまいまた生きる

掴もうとする前に彼らは動きだし
気付かずにまた交差点を渡る

多くの人は笑っているがそれがまるで
石膏の人形のようみ見え操り人形のように見え
それもいつの間にか忘れ

みんな夕陽を見る事もなく川の風を感じる事もなく
コンクリートの中を歩いて消えてゆく
温かい毛布の中で
その中で温もった空気は
何故か美しく温かい

心に沁みる温かさは
君自身によってつくられる

冷たい毛布も
いつかは温かく
君を包んでくれる

君がいま捨てる家庭は
どこへ行けばいい
君の心はどこへ行く

体を癒してくれる温かさは
冷たい毛布の中にある

冷たい毛布も
いつかは温かく
君を包んでくれる

心に沁みる温かさは
君自身によってつくられる
川のようにいつまでも流れ
私はその中で流れてきた

色んな世界をみ
そしていつの間にか

水はいつもきれいだったはずなのに
そこにあるのは黒い水

私はその中で泳いできた
そしていつの間にか

そしていつの間にか
私は海に出た

海に照る太陽は余りに暑く
疲れた体を癒してくれる
波はやさしく

そしていつの間にか

そしていつの間にか

浜に打ち上げられた私に
波はいつまでもやさしく

やさしく洗ってくれる
霧雨の中でずうっと立ち尽くす僕に
君が差し出したコート

そのコートも今では古ぼけて
どこかにいってしまった

時の流れは余りに早く
僕の想い出を奪ってしまった

あの日の帰りに君と入った小さな店
そこで頼んだココアは甘かった

その甘さも今では忘れてしまい
コーヒーの苦さが分かるようになる

時の流れは速く
甘さよりも苦さの方を
好きにさせてしまった

遠い昔
君と歩いた町並みは
今僕が家族で歩く

その幸せな家は君が
教えてくれたのか

その思い出を忘れた
遠い昔もう思い出せない
深い流れのビル街を必至に泳ぐ君は若者で
それを助けるのは君の何だろう

街中の流れは余りに速く
どんなに泳いでも疲れるだけで
助けてくれる人は誰もいない

もう止めるかい
君の体はもちはしない
そこまで先を見ず話を聞けよ

なぁ話を聞けよ
もういいじゃないか

そんなに先に進むなよ
そこからは流れは速いぞ

それでも真っ直ぐ行くのか
どうしても
真っ直ぐ先に

そうならば
おれを置いてくなよ
お願いだから