ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
海外で合法的に結婚した同性カップルが、帰国した瞬間に法的「赤の他人」に戻る。これが日本の法制度の現実です。
配偶者控除も相続権も在留資格も、婚姻届が受理されない以上、自動では連動しません。
高裁6件中5件が「違憲」と判断しても法律は一文字も変わっていない今、この記事で制度の矛盾を知ってください。
約40の国・地域が同性婚を認める中、G7の中で日本だけが国レベルの包括的な法的保護制度を持っていません。
海外で成立した同性婚は日本の婚姻制度(民法・戸籍)上は法律婚として扱われず、相続・税・在留の主要な保護が自動では連動しない構造です。
✈️ 日本の千歳空港で「赤の他人」に戻った日
8年の歳月を経て、ある同性カップルがオランダで結婚式を挙げました。帰国後、千歳空港の入国審査を通過した瞬間、二人の法的な関係は消滅します。
オランダで結婚式を挙げた日
8年間、一緒に暮らしてきた。
笑い合った日も、泣いた夜もあった。
ある日、二人はオランダ行きの航空券を買った。
市庁舎で誓いを交わし、指輪を交換した。
証人がサインをして、婚姻は法的に成立した。
世界で最初に同性婚を認めた国で、夫夫になった。
帰りの機内で、薬指の指輪を見つめた。
この指輪が持つ重みを、噛みしめていた。
千歳空港に降り立った瞬間
飛行機が着陸した。
シートベルトのサインが消えた。
荷物を持って、入国審査の列に並んだ。
パスポートを差し出した。
スタンプが押された。
その瞬間、二人は法的に「赤の他人」に戻った。
オランダでは夫夫。
日本では、何の関係もない赤の他人。
婚姻届を出すことすらできない。
出会って2週間のカップルとの対比
同じ空港のロビーで、あるカップルが話していた。
「婚姻届、明日出しに行こうよ」
出会って2週間だという。
彼らは明日、役所に行けば夫婦になれる。
相続権も、配偶者控除も、すべて手に入る。
8年連れ添った二人には、その権利がない。
違いはたったひとつ。
性別の組み合わせだけだった。
⚖️ なぜ海外の結婚が日本で「無効」になるのか
海外で合法的に結婚した同性カップルであっても、日本の民法が同性婚を想定していないため、婚姻届が受理されず法的には「赤の他人」のまま。この法的構造が、千歳空港の不条理のすべての出発点です。
日本の婚姻制度の原型は1898年(明治31年)の民法にさかのぼります。
「夫婦」を男女の組み合わせとして想定し、戸籍の婚姻届も「夫」と「妻」の欄しかありません。制度設計そのものが、同性カップルの存在を前提としていない構造です。
憲法24条の「両性の合意」も、制定当時は「家制度からの解放」が目的であり、同性婚の排除を意図した規定ではないとする見解が多くあります。しかし現状では同性婚を認めない根拠のひとつとして機能しているのが実態です。
法的に「赤の他人」であることの影響は、具体的な金額として現れます。配偶者控除は年間最大71万円の所得控除ですが、同性パートナーには原則として適用されません。
相続では配偶者控除として1億6,000万円まで非課税。婚姻届さえあれば交際2週間でも自動適用される一方、同性パートナーは法定相続人にすらなれず、遺言で財産を残しても相続税額が2割加算される二重の不利益を受けます。
社会保障面でも遺族年金や健康保険の被扶養者認定は原則として対象外。一部の保険者では独自に認めるケースもありますが、法律婚のように全国一律で保障される状態にはありません。パートナーが亡くなっても、法律上は遺族として扱われない場面が多いのが現実です。
「事実婚で十分では」という声もありますが、同性カップルは法定相続人になれず配偶者控除も対象外。異性カップルの事実婚であれば受けられる一部の保護すら届かない二重の排除構造が存在しています。
養子縁組はパートナー関係を親子関係として届け出る形であり、制度の本来の趣旨とは異なる運用と言えるでしょう。なぜ同性カップルだけが、婚姻届一枚で得られる保護を「自力で構築」しなければならないのか。
この問いに対する合理的な説明は、現状では見当たらないのが実情です。
🛂 同性婚カップルとビザ制度に刻まれた「逆差別」
日本の在留資格制度には「外国人同士の同性カップルは認めるが、日本人と外国人の同性カップルは認めない」という逆転した差別構造が長年存在していました。
2013年の法務省通達(管在第5357号)で外国人同士には「特定活動(告示外)」の在留資格が認められましたが、一方が日本人なら対象外。自国民が外国人パートナーと暮らせないのに、外国人同士なら認められるという逆差別が続いていたのです。
2022年9月30日の東京地裁判決が在留資格を認める方向性を示し、判決前後から個別の「人道的配慮」として在留が認められるケースが出始めています。
ただしこれは法的な「権利」ではなく行政の「裁量」にとどまり、基準も明確ではありません。法的な配偶者なら当然に認められる在留資格が、同性カップルでは行政の個別判断に依存している状況です。
💔 同性カップルとパートナーシップ制度の「限界」
パートナーシップ制度がいくら広がっても、婚姻・税・相続・年金といった中核的な法的保護には届かない。これがこの制度の構造的な限界です。
2015年に渋谷区と世田谷区で始まった制度は2025年5月時点で530自治体に拡大し、人口カバー率92.5%、登録カップルは9,836組を超えました。
10年で530自治体に広がった事実は社会意識の変化を示す前向きな動きですが、法的拘束力はなく、相続権・税制優遇・遺族年金はいずれも対象外です。
ストーリーの舞台・千歳市にはパートナーシップ制度自体が未導入。
制度がある自治体でも法的保護の中核には届かないという限界は全国共通であり、千歳市は「ない」問題と「あっても不十分」という問題の両方を映し出しています。
🏛️ 高裁5件が違憲判断、それでも変わらない同性婚の法律
高裁レベルでは6件中5件が現行法を違憲と判断し、司法の方向性は明確です。にもかかわらず法律は一文字も変わっていません。
2024年3月の札幌高裁が高裁初の違憲判断を下し、東京高裁(1次)、福岡高裁、名古屋高裁、大阪高裁が続きました。
唯一2025年11月の東京高裁(2次訴訟)だけが合憲。弁護団は「誤解と偏見に満ちた特異な判決」と批判しています(弁護団声明より)。
6件中5件が違憲という比率が、司法の大勢を物語っています。
6件すべてが最高裁に上告されており、統一的な憲法判断は早ければ2026年にも示される可能性があります。
2025年には政府が33本の法令について同性パートナーも「事実婚」に含まれ得るとする解釈・運用の整理を公表しましたが、婚姻制度・税制・相続・年金の中核は対象外。行政の微調整では埋められない問題が最高裁を待っています。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 海外で結婚した同性カップルは、日本でも結婚していることになりますか?
A. なりません。日本の民法は同性婚を想定していないため、海外で合法的に成立した婚姻であっても、日本の婚姻制度上は法律婚としての効力が認められません。婚姻届を提出しても受理されず、配偶者としての法定相続権や配偶者控除など婚姻に伴う法的保護はいずれも原則として適用されません。在留資格においても「日本人の配偶者等」が自動的に認められる仕組みはなく、不利益は税制・社会保障・入管制度の広範囲に及びます。
Q2. パートナーシップ制度があれば婚姻と同じ保護が受けられますか?
A. パートナーシップ制度に法的拘束力はありません。530自治体が導入し人口カバー率92.5%に達していますが、相続権、税制優遇、遺族年金、健康保険の被扶養者認定はいずれも原則として対象外です。企業や病院が「配慮」する根拠にはなり得ますが、法的な権利の保障ではなく、婚姻制度の代替にはなりません。
Q3. 最高裁ではいつ判断が出ますか?
A. 「結婚の自由をすべての人に」訴訟の6件すべてが最高裁に上告されており、統一的な憲法判断が出される見通しです。早ければ2026年にも示される可能性があります。高裁6件中5件が違憲と判断しており司法の大きな流れは明確ですが、最高裁がどのような結論を導くかを予断することはできません。
🌈 まとめ:愛の長さではなく、性別で判断する国を変えるために
冒頭の結論に立ち返ります。
海外で合法的に結婚した同性カップルであっても、日本の民法が同性婚を想定していないため、婚姻届は受理されず法的には「他人」のまま。
民法の構造が入国した瞬間に二人の法的地位を消す。これが千歳空港の不条理の正体です。
在留資格の逆差別、相続税の2割加算と配偶者控除1億6,000万円の不適用、パートナーシップ制度では届かない法的保護の中核。
記事を通じて見てきたこれらの不利益はすべて、「婚姻届を出せるか否か」というたった一つの分岐点から派生しています。高裁6件中5件が「憲法に反する」と断じた事実は、この構造が法の下の平等に照らして持続不可能であることを示しています。
8年連れ添ったカップルが「他人」になり、2週間のカップルが「夫婦」になれる。最高裁の統一判断が近づく今、一人でも多くの人がこの現実を知ることが、法律を変える力になります。
よければ、この記事をシェアして「知らないままの壁」を一緒に減らしてください。
この記事をもっと詳しく読みたい方へ
より詳しい情報は、ブログ記事で解説しています:
https://minaduchi.blog/same-sex-marriage-overseas-invalid-japan
この記事の元になった投稿はこちら
https://www.threads.com/@minaduchi/post/DQPrkbCE2mJ
参考資料
・CALL4「結婚の自由をすべての人に」訴訟ページ(高裁判決・弁護団声明)
・marriageforall.jp(結婚の自由をすべての人に訴訟公式)
・国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
・国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
・法務省通達 法務省管在第5357号(在留資格関連)
・東京弁護士会(東京地裁2022年判決関連)
・みんなのパートナーシップ制度(自治体導入状況・渋谷区×虹色ダイバーシティ共同調査)
・NHK「同性婚をめぐる裁判」関連報道
・朝日新聞「結婚の自由をすべての人に訴訟」関連報道
・Wikipedia「オランダにおける同性結婚」(補助資料)






