今時期とは、全く関係ないタイトルですが。。。。
外科病棟で働いていたときのお話。
受け持ち患者様であった80代女性。
病名はすい臓がん。
余命宣告を受け、それでも抗がん剤治療を一生懸命頑張られていた。
ご主人はわりと強面で、最初の印象は、話にくそう・・・・だった。
自分の祖母と変わらないその患者さんは、とても80代に見えない、朗らかな感じの漂う小柄な女性だった。
毎日のケア(清拭や洗髪・点滴のライン交換等)を行いながら、たくさんのお話をした。
日に日に体力も衰えて、受け持ち当初のように言葉を発することも少なくなってきた。
しかし、強面のご主人が面会に来ると、満面の笑み。
ご主人が来られるのを私たちスタッフも待ち遠しい、そんな毎日だった。
桜が咲き始めようとしていた3月下旬。
いつものように、朝早くからご主人が面会に来られていた。
私は深夜勤務をもうすぐ終える時間帯だったが、ご主人の後ろ姿をみつけ、とっさに声をかけた。
「今日もお早い面会ですね。
○さんも首を長くされてお待ちですよ。
昨日の夜はよく休まれていました。」
私の顔を見るなり、ご主人は涙を浮かべ、
「ありがとう。ありがとう。今日は桜を持ってきて喜ばせようと思っているんだけど、調子が気になっていたとこ
だったんだ。桜見れそうだね。夜休んだなら、少しは起きていてくれるだろう・・・」
ご主人の右手には、桜の枝が無造作に新聞紙にくるまれて、わずかながら花が開いていた。
私は、「その桜、どうしたんですか???」と、あっけにとられてしまった。
なぜなら、いまだかつて、桜の枝をへし折って(そういう言い方は好ましくないかもしれないが・・・)病室に持って
来られた家族を見かけたことがなかったから・・・・
そして強面のご主人の目に涙・・・・・
いそがしい深夜勤務だったが、一編に目が覚めたのをよく覚えている。
「心配しんさんな。これはうちの庭に咲いとる桜の木の枝よ。息子が生まれた記念に女房と植えて、毎年この
桜が咲くのを楽しみにしとるんよ。息子も立派に成長してくれて、今からゆうときに、女房の癌が見つかった。
この桜が咲く時期は、良いことも、悪いことも色んなことが今まであった。だけど、2人で見れよったけえ幸せ
じゃった。その当たり前に気づかんかった。
今年はうちに帰ってみるのは無理じゃろう。じゃけえ、桜をもってきたんよ。」
素敵なご夫婦だと思った。
今まで紡いだ年月が、すべてを物語っていた。
患者さんは、その桜を目にした途端、声を上げて泣いたという。(ご主人から後日聞いた話では)
どんな涙だったんだろう。
色んな推測をしてみる。
だけどやめた。
私が推測なんてしなくても、患者さんとご主人の間では、きっと・・・・・
どんな意味の涙だかわかっている気がしたから・・・・・
たくさんの意味があって、たくさんの家族の背景があって・・・・・・
だから看護は奥深い。
その患者さんやご家族に学ばせていただいている。
感謝を忘れてはいけない。