第12章 「第二回調停」



第一回調停から 3週間 遂にその日が来ました


当初の予定では 娘を函館に送り出してるはずなんですが ・・・


学校の手続きが思いのほか「難航」して


娘はまだ一緒に暮らしてました




この日も暑い日でした第二回調停は午前10時から昼(昼食)を挟んでの予定でした


一回目より「長いな~」という気分で裁判所に行くと


裁判所の中には どう見ても職員・関係者ではない人間が多数います


雰囲気でわかりました 「金融会社 各社の代理人だな」って



指定された部屋に前回同様のメンバーで向かうと ・・・ 廊下の壁側には


イスがずらっと並んで 6名が座っていました


その方達の前を通って部屋の入口に向かう時でした


一人の男が立ち上がり 


「申し立て人と話をしたいのですが」 インパルスの堤下に似た体格のいい男性だった


専任の弁護士さんが即座に 「それは規則で認められてませんので 失礼」


部屋に入ると 直ぐに説明してくれた


「彼らは会社の代理で来ているので 何とか本人の同意を得て自分達の条件を


呑ませようとしてきますが 一切相手にしなくていいですから」


「わかりました」


そして 第二回調停が始まった


会社ごとに中に入り 金額・返済期間の確認を済ませたらサインをして退出という


流れなんですが まあ~各社共 色々考えてきてるんですよ


あの手この手のパフォーマンスを


最初は 有名会社○富○ でした (伏字の意味無ーーーい)


目の下のクマが印象的でしたね 席に着き 会社からの「委任状」を職員に渡すと


いきなり切り出しました


「お宅さんね 散々借りといてこれは無いんじゃないの!」


次の演技が見たくて 私は無言でした


そこで携帯電話が鳴りました どうやら上司からのようです


無言で携帯を差し出します


しかし その携帯を弁護士先生が取り


「只今 調停中ですので切ります」 


電話を切り 代理人に返します


その後も 大きな独り言を言いながら書類にサインをして退出しましたが


部屋を出るとき 私の方を向き 「この クソ野郎が!」と吐き捨てるように言いました


弁護士先生が 「侮辱罪で訴える事も出来ますが どうしますか?」


「別に 訴えを起こす価値も無いので 今日の作業を続けて下さい」


「それでは 次の方を呼んで下さい」


○○ミ○ ・ ○コ○ ・ 駅前の看板会社が続々と入室します


午前中は予定通りの件数を処理出来たと担当者が言っておりました



ここで「昼休憩」なんですが 午後からの業者もいるので


単独での外出・昼食の「禁止令」が出ました


この日の昼食は 裁判所事務室での「出前」でしたね


食後にタバコを吸いに事務室を出ると 廊下に ・・・ 見覚えのある顔が


Sさんでした


「どうも まだ午後からも大変ですね」


相変わらず 人の内側を探るような喋り方だ


「いえ 私はただ座ってるだけですから 失礼します」


「後で ゆっくり話しましょう」


「とくに話す事はありませんが」


「いえいえ コチラは呼ばれて来たんですから」


直ぐに意味が解った 前回各会社の確認作業のさい聞き覚えの無い


会社が一社あった  でも ・・・ 名刺の会社名とも違うのに


誰かの代理なのか?


どちらにしろ このSさん 精神衛生上極めて良くない存在だったのは言うまでもない



午後のスタートはクレジット会社からであった


各社共 委任状を渡し 書類を確認すると サインをして即座に退室


実に手慣れた感じがした  ほとんどの人が一言も喋らずに


入れ替わっていく  逆に「不思議な空間」でもあった


そして 担当官から 「次が最後です」と言われ


違う緊張感が走った


部屋に入って来たのは やはりSさんだった


どういうカラクリなのか 興味が湧いた しかしそれは思いも寄らぬカラクリであった


このSさん 実は宮城県の貸金登録の番号を正式に持っていたのである


だから自分が代表である会社名で参加してきたのだ


元妻の借り入れを 現在「本人不明」により夫である私に「債務整理」という


公的機会を使って請求しようというわけだった


まずSさんは 元妻に貸した業者の債券を全て買い取ったので金額の「再申請」をしたいと


願い出た  しかも各業者の「契約書」を全て持参していた


その契約書のレートは(利息)一律大手金融会社と同率の利息であった


この「再申請」については結論として「認めない」となったが


Sさんの「独演会」はおよそ1時間にもおよんだ


何とかSさんもサインし退室した時に 弁護士先生が口を開いた


「あの業者 気をつけた方がいいよ またきっと連絡してくるから


もし しつこく請求してくるようなら 裁判所に連絡して下さい 力になりますから」


「わかりました ありがとうございます」


「これで 全て終了です お疲れ様でした 最後にですが 初めに言いましたが


債務不履行だけは絶対に起こさないで下さい 確実に不利な立場になりますから」


「ハイ 色々ありがとうございました 失礼します」


裁判所を出ると夕日が傾いていた



何とも長い一日だったが 無事終わって正直ホッとしていた



次は ・・・ 娘を函館に送ること  



それが 父親としての最後の仕事だ






次回  第13章 「別れ ・・・」 です







それでは  また  m(_ _ )m