ここからはキャラクターについて触れていこうかな、と思います!
まずは主人公・尊氏。
■相葉裕樹だからできた魅力的なキャラクター
…と言わざるを得ないですよね、もう。
主人公らしくわかりやすい理想や信念はなく、とにかく周囲にお尻叩かれて後押しされて、ようやく動くキャラクター。平和主義者といえば聞こえはいいけれど、それもあくまで自分と自分が大事に思う範囲のことがすべて、という感じ。(物語序盤は) だけどそのためなら鬼のように強い。
これがちゃーーんとカッコイイんだよなぁ…!
でも普段の頼りなく覇気がない、そこも結局憎めない。「戦、行きたくない」とか「ほらね」とか相葉ちゃまの間の取り方うまくて~~コメディセンスがずばぬけている。
一方で恐ろしさもある。一度覚悟が決まったら冷静冷酷に選択をしていく。新田のことは狂気すら感じるほど完膚なきまでに叩きのめすし、倒幕の挙兵では身内ですら駒として戦術や交渉術に使う。
それでいて美しい。羽根演出びっくりしたけど、あれは相葉裕樹だからギャグにならずに似合うんですよ……後醍醐天皇が思わず「美しい」って言ってしまうのがわかる。この圧倒的説得力。
もちろん、その歌唱力は素晴らしく。後半に向けてどんどん喉が開いていくの何事!?(笑)とはなりましたが頼もしかったです。
そして一番ベースにある、周囲の期待を裏切れない優しい人、というところ。
印象的なシーンが、直義に対して発した「たまには俺のわがままを聞いてくれ」。
これ、私は劇場ではずっと「自分を殺して兄のために働いてきた直義の前でそれ言うんじゃねぇよ!」と思ってたし今でも思うけど、でも後から思えば確かにここまで尊氏は自分の意志が通ったことがなかったんですよね。最後には必ず周りに後押しされて自分の気持ちを曲げてきたとも言えるわけで。直義の行動はすべて直義自身が選び取ってきたから、それが兄のわがままを聞いたことになるとは言えないかもしれないし。
そういう言い分もきっとあっただろうに、尊氏は反論する直義にただ「ごめん」と言って自分の言葉は飲み込むんですよね。なんかそこは、尊氏の優しさを一番感じるところだなと思います。
そして直義の最期の願いを、すべてを背負って死んで足利の世の礎となろうとした直義の願いを、結果的には叶えた。叶えてしまった、の方が正しいかもしれないけれど。
一方で尊氏自身の願いは叶わなかったわけで……そこが本当に哀しい人だった。
頼りなくて、可愛げがあって、強くてカッコよくて、恐ろしくて美しくて、優しくて哀しい。
そういう足利尊氏像を相葉ちゃまが見事に作り上げていて、本当に魅力的でした。尊氏。
■たったひとつの望み「ただ笑って過ごしたい」
結局尊氏のたったひとつの理念、願い、望みってこれだったんでしょうね…。
ここで①の記事で書いたループの話を。もともとループ作品に造詣が深くないのもあってほとんど考察できてないんですが、私はまぁあえてループと取らなくてもいいんだろうな、という受け止め方をしています。
でもループとまではいかなくても、今の流れに抗わないといけないという漠然とした不安が、尊氏にはあったんだろうなと思ってます。由比ヶ浜のシーンとかだと「鎌倉で家督を継ぐとは、肉親との確執や争いの渦に飲み込まれること」ぐらい思っていてもおかしくない。だから必死に逃れようとする。そのぐらい鎌倉では兄弟身内の骨肉の争いなんて珍しくないので…そういう私の鎌倉解釈とも符合する作品だったのですが、それはさておき。
とにもかくにも鎌倉の魔物から逃れて、清和源氏の宿命に抗って、尊氏は弟・直義とただ笑って過ごしていたかった。それは「最高なはじまり」でとてもよく伝わってくる。あそこ本当に美しいハーモニー幸せなシーンで、尊氏があの瞬間を大切にしたいのが、実感としてすっごい理解できるんですよね。ああそうだよな、手放したくないよなって。
それが叶わないのが本当に哀しい。
本当に、登子の意図(復讐)が働いての展開だったらまだなんぼか救われましたよ……あの兄弟が各々に突き進んだ先にあの結末があるのがつらい。そしてその兄弟の曲が「宿命」なのはあまりに……やりやがったなるひまちゃん!!!となります(苦笑)
尊氏については、こんなところで。