東京都西東京市のひばりヶ丘にある「みむら矯正歯科」の院長 三村です。
矯正歯科治療に携わって40年以上経過すると、自分の力量も安定しますし、さらに昔からの患者さんをフォローすることで矯正歯科治療後の予後がだんだん見えてきます。
私が矯正歯科治療を学び始めた頃はエビデンス一辺倒ではなく、「何よりも経験
」という時代でした。
松本歯科大学で師事した出口先生は、まだ30台の私に「自分の矯正歯科治療でうまく仕上がらないのは舌が原因のことが多い
」と教えてくださいました。
舌癖に関してはRCT(ランダム化比較試験)などは行いにくいため、エビデンスが十分あるわけではなく、意外と軽視されている感じもします。
歯列の内側にある舌は、歯列の外側にある唇より厚い筋肉の塊です![]()
歯根周囲の骨を改造して歯を動かし、移動後に骨が成熟するのを待っている保定中に、厚くて大きい舌が歯を押したら、たとえ裏から歯を固定していても歯は動きます。
今日、15年ぶりに来院した患者さんは凸凹のある出っ歯を小臼歯を抜歯して矯正歯科治療し、さらに舌の癖があったのでした癖のトレーニングも行い治療を終えました。
治療中に舌癖のトレーニングを行って、意識下では舌が歯を押さないようになったのですが、無意識では歯を押していたのでしょう。
矯正装置を撤去し、歯を良い位置に保つ「保定」に移行してから、嚥下時に舌が前歯を押すことで(1日に嚥下動作は2000回弱行われます)、前歯がまた前に突出し始め、さらには上下の歯の間に舌を突き出すため、前歯が噛まなくなっていました。
さらに裏側の保定装置も押され、下の前歯が前に移動しているのみならず、固定式の保定装置に引っ張られて側方の歯が内側に倒れていました![]()
また別の患者さんは、下顎の偏位を伴う上顎前突であったため保定装置にポジショナー(ボクサーが試合で噛むようなマウスピース型の装置)を使用していただきましたが、夜中の喰い縛り癖でわずか3ヶ月でシリコンラバーでできた強固なポジショナーを噛み切ってきました。
歯並びは安定していますが、装置は壊れました![]()
矯正歯科治療は力との闘いだななあ・・・
と感じています