東京都西東京市のひばりヶ丘にある「みむら矯正歯科」の院長 三村です。
前回のブログで「混合歯列期における早期治療の役割」というタイトルで東京矯正歯科学会で講演したことを書きました。
「混合歯列」とは永久歯と乳歯が混在する時期の歯列のことを示しますので、要は「乳歯がまだ残っている時期から矯正歯科治療を開始するのは、どのような状態の歯並びや咬み合わせの場合で、何を目標とするか?」というタイトルで話をしました。
今日も、混合歯列の出っ歯のお子さんで「拡大床を勧められている」という患者さんが来院しましたので、患者さんや親御さん向けに簡単に要旨を書きたいと思います。
歯科矯正学の教科書では、混合歯列期からの治療は「不正咬合の増悪を抑制するために行い、不正咬合の程度を軽減させることを目標とする」と記載があるとおり、それだけでは終わらないけど早く始めることで次の治療を簡単にすることを目的としています。
また、その適応は、骨格系の改善、機能系の改善と明記されているように、
- 骨格(上下の顎の位置)に問題がある場合
- 飲み込み動作の際の舌の使い方に問題がある場合
- 咬んだときに一部の永久歯だけが当たって咬む場所がずれる場合
だけです。
拡大床を使用して凸凹を解消することは、この時期の治療目標ではありません。
「この時期からアゴを広げると、ブレース(ブラケット)を付けなくても凸凹が取れる」と言われて拡大床を勧められるケースが多いようですが、アゴは拡大床では広がりません。
歯が傾斜して歯列が拡大しているだけです。
この時期に長期間拡大床を使用し、骨格が治せなくなってから来院される患者さん、上顎犬歯が変なところから萌えてきてしまった患者さん、拡大床を使うことで逆に舌の癖が付いてしまい舌の使い方に問題が生じた患者さんなどが多く来院されています
日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医に相談いただくと、おそらく同じことを伝えてくれると思いますが、矯正歯科医を自称する方々でも拡大床を頻用する方がいます。
寝るときに装置を入れるだけで上記の問題(特に1と2)が解決できるような装置は存在しないと思っていただいて良いと思います。
親御さんの求める答えではないのでしょうが、繰り返しお伝えしています。