東京都西東京市のひばりヶ丘にある「みむら矯正歯科」の院長 三村です。

6月28日の読売新聞朝刊に「読売・日本テレビ文化センター健康公開講座」と称した記事広告が出ていました。

矯正歯科の業界で有名なアライナー(マウスピース矯正)のインビザラインを行う会社が、お金を払って対談を行い、記事のような形態を取って読者にアピールするという広告手法です。
手法としては、医薬品などでもしばしば行われていますが、内容に問題が多すぎますむっ

そもそも、マウスピース矯正はプラスチック製の物を歯の上から被せる(overlayする)ので、プラスチックの弾性のみに依存します。
すなわち、永久変形せずに力を発揮できるところまでしか動きません。
ですからいくつかのプラスチック製の物を用意することになり、費用が嵩んでいくことになります。
また、歯に固定式の物を付けないので、「holdして捻れを取る」、「垂直的な移動をする」ことが苦手です。
日本人のような凸凹の厳しいケースには向きませんし、歯の移動形態としては基本的には「奥歯を動かさずに、全歯を前方向にあおり出す」、もしくは「歯列形態を変えて凸凹を取る」形で歯を動かします。
一流の矯正歯科専門医が見て、満足できるレベルに治っている症例はまずありません。
しかし、歯型を採って業者に送れば、業者がコンピューター上で歯の移動をシミュレーションして、CAD/CAMでプラスチック製の装置を作って送り返してくれますから、歯科医師はほとんど何もしなくて良いのです。
矯正歯科の教育をちゃんと受けていない一般歯科医やワイヤーを用いる従来の矯正歯科治療が上手でない矯正歯科医、さらにはたくさん患者さんを診ることができるので良い結果を要求しない金儲け主義の歯科医が主導して、日本ではこの装置が使われているように思いますガーン

ところが、この記事広告では
1)ワイヤーを使う方法は奥歯を後方に動かすことができないので歯を抜くことが多いが、マウスピース矯正は歯を抜かずに矯正ができる。
2)奥歯を動かす場合にはマウスピース矯正を推奨する。
という現在の矯正歯科医学の常識を覆すことを「日本矯正歯科学会の認定医」としての資格で訴えています。

この広告は「良く治る」とか「他の方法より優れている」と言うことを主張している点で、厚生労働省の医療広告ガイドラインに抵触することも確かですし、さらには間違ったことを主張しています。
国民を間違った情報で、「金儲け主義」の「不適切な矯正治療」に誘導しようとする手法には大いに問題があると思います。

読売新聞は歯科医療のタービンによる交差感染のことなどを記事で訴えていますが、それ以前にこんなに危ない広告を掲載していることを知っているのでしょうか??
このようなことを記者に意見すると、「これは広告局が取ってきたものですから・・・」と逃げられてしまうのですが、新聞社の姿勢としては大いに疑問が残ります。

この記事広告に出ている矯正歯科医は公益法人たる日本矯正歯科学会の会員ですから、日本矯正歯科学会の倫理裁定委員会の今後の動きに期待をしたいと思います。