「どアホノミクスの総括」浜矩子さんに聞く(2) (1)の続篇です。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」を「どアホノミクス」と批判し続けている浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授。浜さんのインタビューは、国債や株式の大量購入を続けている今の日銀の金融政策の行き着く先に話が進んだ。浜さんは、恐慌か統制経済化が進む可能性を指摘する。前編は ↓http://ameblo.jp/mimura1982/entry-12230235316.html
【聞き手は今沢真・経済プレミア編集長】
−−日銀の「マイナス金利」や「国債の大量購入」、さらに日銀は株式も上場投資信託(ETF)という商品を通じて大量に購入しています。これらを金融政策の手段としてどう思われますか。
◆浜矩子さん 日銀のマイナス金利政策は、何のためにやっているのかがわからない。企業の投資を促すため? そもそも企業はお金に困っているわけではありません。結局のところ、国債の利回りをマイナスにして、政府の債務返済負担を軽減する狙いなのかと勘ぐりたくなります。
いま日銀は市場を経由して国債を購入しています。短期国債、短期証券を短期的な金融調節の手段として売買するのは金融政策の領域に入ります。でも、長期国債を買う今の日銀の「質的な量的緩和」は、金融政策の領域と認めることはできません。
「ヘリコプターマネー」のまやかし
−−国債の大量購入やETFの大量購入は、始めたらやめられない。この先どうするんだろうという問題があります。
◆浜さん 国債をこれ以上市場から買い続け、日銀の保有する国債が日本の国内総生産(GDP)よりも大きくなってしまう状況に至った時にどうするか。私は財政法で禁じられている「国債の直接引き受け」の解禁に踏み出してしまうことを恐れています。
いま、「ヘリコプターマネー」という言葉が出てきています。この言葉は、ミルトン・フリードマンという経済学者が、「公共事業というまどろっこしいことをしなくても、空からカネをばらまけばてっとり早い」と政策の一つの比喩として述べたものです。
この「空からカネをばらまく」というやり方を実際の政策に引き移すときに、一つのやり方が中央銀行による国債の直接引き受けだという考え方があります。「直接引き受け」と言えば、抵抗感もアレルギーもある。ですが、ヘリコプターマネー政策と言ってしまえば、「ああ、いよいよやるのか」と受け入れられる。そういう筋道を作るためのアドバルーンという気がします。
統制経済が忍び寄っている
−−「国債の直接引き受け」は、日銀が政府に直接お金を渡すということですから、通貨増発に歯止めがなくなり、抑制のきかないインフレになりかねないです。
◆浜さん ですから、「ヘリコプターマネー」という言葉で簡単に新しい金融政策と受け止めてはいけません。
それと、もう一つ、株式のほう。非常に多くの上場企業にとって日銀が主力株主になってしまっています。年金の株式購入比率の引き上げもそうです。もう統制経済に忍び寄る準備ができてしまっているかもしれません。
−−「国債暴落、通貨暴落、超インフレ」という恐慌が起きるか、それとも統制経済に進むか、と浜さんは予想しています。
◆浜さん 恐慌は文字通り恐ろしいです。でも、経済活動の自己浄化作用、自律的均衡作用でもあります。経済活動がショック死状態に追い込まれる。だけど、そのことによってゆがみが一気に是正されることは間違いありません。だから、経済活動のゆがみ、不均衡に対して、猛烈に苦いが、よく効く特効薬という側面を持っているんです。
恐慌は既存債権がほぼ無価値になる現象です。恐慌が起き、混乱が一巡したところで債権放棄をお願いする。大激震の間をなるべく短くして、復興を効率的にやる中で、ゆがみが解消されていくプロセスが内在しています。
−−しかし、その恐慌は避けなければならない。そのために統制経済に走るというシナリオですね。
◆浜さん 恐慌という経済の均衡化の力学をすべて強権的に抑え込むというやり方です。今の日本も、このままでいくとそっちの方向に引っ張られていく雰囲気が濃厚になっています。
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160915/biz/00m/010/021000c