本命「火花」? 「SEALDs」「五郎丸」が続き…
ここには出てきませんでしたが、私は断然東芝の「チャレンジ!!」を推します。特に女子サッカーの監督と同姓同名の佐々木則夫元社長の「3日間で130億円利益を増やせ」などのご無体な「チャレンジ!!」は強烈なインパクトがあったと思うのですが。皆さんの予想はどうでしょうか。
毎日新聞 2015年11月04日 東京夕刊
「戦後70年」の節目となった2015年も残り2カ月。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)が選ぶ「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補発表を目前に、新語に敏感な3人の識者と一足先に今年の流行語大賞の行方を予想してみた。さて、あなたのイチオシは?【小国綾子】
「今年は不作だねえ」。コラムニスト、中森明夫さんは嘆息した。「めぼしいのは、お笑いコンビ『ピース』の又吉直樹さんの芥川賞受賞作『火花』、ラグビーのワールドカップ(W杯)日本代表選手で『ルーティン』が話題になった『五郎丸』歩選手、安全保障関連法案に反対した若者団体『SEALDs(シールズ)』。でも、どれも固有名詞で、流行語らしくない」
実際、流行語が「固有名詞化」する傾向があると中森さんは指摘する。「雑誌の特集タイトルでは『30代女子がハマる○○』など文脈で読ませるより『宮崎駿』『ガンダム』などネット検索しやすい固有名詞を前面に出す方が売れる。受け手が固有名詞を目にした時、深く考えず“脊髄(せきずい)反射”しているからではないか」
中森さんに昨年の大賞「ダメよ~ダメダメ」みたいなのは?と問われ、お笑いコンビ「クマムシ」の「あったかいんだからぁ」や「8・6秒バズーカー」の「ラッスンゴレライ」、「とにかく明るい安村」の「安心してください、はいてますよ」を挙げたが、「いまひとつだね。お笑いやバラエティー番組から圧倒的な流行語が次々出ないのは、テレビが弱っているからかも」と中森さん。
それでもあえて「流行語大賞」を三つ予想してもらった。「『火花』『五郎丸』『1億総活躍』。安倍晋三首相が打ち出した1億総活躍は、時代錯誤も甚だしいけどその分インパクトはありました」
AV女優や日経新聞記者の経歴を持つ作家、鈴木涼美(すずみ)さんは「昨年の候補の『こじらせ女子』や09年トップテンの『草食男子』などの男子女子モノが一つもない」と残念がる。大賞予想は「火花」「マイナンバー」「SEALDs」だ。
「『火花』は本離れの時代に純文学が200万部以上売れることを教えてくれた。『マイナンバー』は新聞記者時代に取材した制度ですが、社会のカタチを変えると思う。『SEALDs』は過去の話だった学生運動がメジャーになり、流行語を取る勢いってこと自体が面白い。今時の若者も政治に熱くなるんだ、と」
もう一人、「iモード」の生みの親で、ドワンゴ取締役、慶応大特別招聘(しょうへい)教授の夏野剛(たけし)さんは「火花」「ドローン(小型無人機)」「SEALDs」と予想する。「火花」について「動画投稿サイトでは素人とプロの差が縮まっている。文学界でもプロの作家と恐ろしく本を読んでいる読書オタクとが実は近い存在だと証明してくれた」。
逆に「ドローン」と「SEALDs」は夏野さんにとって「残念な流行語」だ。
「ドローンが登場した途端、『落ちたら危ない』と議論になり、規制法が成立した。新技術に実際触ったことのない古い世代が規制に走る、日本社会の体質が浮き彫りになった」と指摘する。「SEALDs」についても「学生運動を体験した団塊世代のノスタルジーを喚起した」。二つとも「古い世代による後ろ向きの流行語」というのである。
今年は他にどんな流行語があったっけ。食べ物では「熟成肉」「ペヤング復活」。映画は「レリゴー」が一世を風靡(ふうび)した昨年の「アナと雪の女王」みたいなヒット作品は思いつかない。日本人受賞者が相次いだノーベル賞だが名セリフは記憶にない。社会現象では中国人観光客の「爆買い」か。
昨年、ワイドショーの話題をさらったのは「STAP細胞はあります」「ゴーストライター」「地方議員の号泣会見」だが、今年は何だろう?
「東京五輪! エンブレムの“パクり”問題」と中森さん。夏野さんも「『パクる』、ですかね」と悩みつつ、「むしろ今年は安保関連法では。新国立競技場の白紙撤回も安保法制をめぐるゴタゴタで落ちた政権支持率の回復を狙った決断だろうから」。ちなみに昨年は「集団的自衛権」が大賞を勝ち取っている。
夏野さんは安保関連では「法的安定性」を推す。首相補佐官(当時)が、法案と憲法について「法的安定性は関係ない」と述べ、野党の反発を招いた言葉だ。「なじみのない法律用語が流行し、『自衛隊は軍隊じゃね?』という“そもそも論”にまで火がついた。国会論戦の混乱ぶりを象徴した言葉」と振り返る。
一方、中森さんは「戦争法案」を推す。「賛否両論あるだろうが、法案に呼び名が与えられた結果、世論を喚起し、議論が活発化した。これこそが流行語の役目です」
◇留保つきだけど「戦後70年」
個人的に応援したい流行語も尋ねた=表。夏野さんはラグビーW杯の「エディー・ジャパン」。「日本代表は『日本人』や『外国人』の概念を揺るがした。外国人に見えて日本国籍、日本人だけど外国生まれ、母語が英語……。現実のダイバーシティー(多様性)の方が理想より先に進んでいることを鮮やかに示し、しかも勝ってみせた」
また産業界の最大の話題、「AI(人工知能)」と「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」も挙げた。IoTは、体温、血圧、心拍数などを記録するウエアラブル(着用型)端末や自動車の自動運転システムなどの事例で知られ、多種多様なモノがネットにつながることで新たな技術やサービスが生まれている。
鈴木さんが挙げるのは「枕営業訴訟判決」「モラハラ離婚」「1万2000人校長」。特にクラブママが「枕営業」で性交渉をしても、客の妻への不法行為にならない、とした判決ニュースに「正妻と遊び相手とを分ける古臭い感覚を踏襲した判決で、男の人って変わってないなあ」と鈴木さんはあきれる。
「くい打ち不正マンション」に心を残しつつも、中森さんが挙げたのは「かぶり婚」。9月、俳優の福山雅治さんと同じ日に結婚を発表したお笑いタレントの千原ジュニアさんの言葉だ。「今は若い女性アイドルより、いい年をした中年男性タレントの結婚の方が“ロス現象”を引き起こす。『福山ロス』が話題になったが『かぶり婚』の方を推したい。『かぶり婚って“りこん”って入ってもうてるやん』というネタも面白い」とほめる。
が、中森さんのイチオシ流行語は実は「戦後70年」という。「ただし留保つきで」。そのココロは?
「戦後70年の今年、安倍首相が談話を出すなど話題になったけど、議論の中身はすごく空疎だった。戦後70年の節目に『ずっと豊かで平和で良かった』と言えればよかったけど、実際には平和の行方すら危うい。僕らの『戦後70年』は手放しで歓迎できるものじゃなかった、という留保付きで、やっぱり今年はコレじゃないかな」
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中森明夫さん 鈴木涼美さん 夏野剛さん
大賞予想 火花 火花 火花
五郎丸 マイナンバー ドローン
1億総活躍 SEALDs SEALDs
応援する流行語 戦後70年 枕営業訴訟判決 エディー・ジャパン
かぶり婚 モラハラ離婚 AI(人工知能)
戦争法案 1万2000人校長 IoT(モノのインターネット)
http://mainichi.jp/shimen/news/20151104dde012040004000c.html?fm=mnm