ロンドン駐在経験もある毎日新聞の福本容子論説委員がイギリスの公共放送BBCの中立性・独立性について書いている。BBCの国民の信頼度は新聞も含めても英メディアの中でダントツだという。BBCもNHKも同じ公共放送であるが、残念ながらNHKでは考えられないことだ。BBCは「政党と放送局の目的が違う以上、圧力は不可避なのだから」。不屈の心が必要だと考える。うらやましい。だけど、そのDNAの源や守り手は国民だという。つまり、NHKをBBCのように信頼度の高いメディアにするのは、我々日本国民だという。我々は、もっとNHKのことを知って、寄せるべき意見は寄せる。抗議が必要だと思えば抗議の電話をしたり受信料の支払いを拒否する。そうやってNHKを鍛えていかなければならない。
僕らのBBC=福本容子
毎日新聞 2014年02月28日 00時23分(最終更新 02月28日 00時24分)
イラク戦争が始まる直前の2003年3月19日、グレッグ・ダイクさんは当時のブレア英首相から手紙をもらった。イギリスの公共放送BBCで社長をしていた時だ。
イラク関連報道が英政府に批判的過ぎる、という非難だった。ダイクさんは返事を書く。「放送の中心的役割の一つは、時の政権を疑い、政権がいじめてきたら、立ち向かうことである」
首相官邸の圧力は続いた。最悪になったのは、BBCラジオが、イラクの大量破壊兵器疑惑は政府による誇張だった、と伝えてから。情報源探しが始まり、情報源とされた科学者が自殺。そのてん末を検証した調査委員会が「BBCは根拠なき政府非難をした」と結論づけ、官邸の意に沿ったBBC経営委員会がダイクさんをクビにした。
BBCは自分が関係したこの一部始終をつぶさに報道した。調査委員会の公聴会もそうだし、解任されたダイクさんがBBCで社員向けに演説し、大勢に惜しまれながら局を去る場面も中継した。
時にスキャンダルもあるけれど、国民の信頼度は新聞も含めた英メディアでダントツ。「BBCは誇り」なんて歌もある。「僕らはただの視聴者じゃない。BBCは僕らのもの」だって。
厚い支持の裏には、BBCのDNAがありそう。それはBBCニュース元幹部が1970年代に残し、ダイクさんが信条とする言葉に表れている。「放送ほど、自由の対価として不断の警戒が求められるものはない。政治からの圧力に絶え間ない抵抗が必要なのだ。政党と放送局の目的が違う以上、圧力は不可避なのだから」。不屈の心。
うらやましい。だけど、そのDNAの源や守り手は国民。ひとごとではない。(論説委員)
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