戦後70年談話:21世紀構想懇談会報告書の議論に参加して | 21世紀のケインジアンのブログ

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山田孝男・毎日新聞別編集委員 =世界史の中の「日本の侵略」

 

戦後70年談話について検討した21世紀構想懇談会に委員として参加した毎日新聞特別編集委員・山田孝男さんが世界史の中の「日本の侵略」をキーワード報告書作成に関わった経緯を書かれている。中曽根元首相も、確かに日本は間違ったことをしたが、先の日本の戦いは世界史の視点からみる必要があると日頃おっしゃっている。とにかく、これは歴史的な記録だと思う。

 

毎日新聞 20150807日 東京朝刊

政府の「21世紀構想懇談会」に参加して意見を述べた。私は報告書の内容におおむね満足している。その理由と経緯について読者にご報告したい。

 38ページの報告書中、私が最も重要だと考えるポイントは、1930年代から45年に至る日本の誤りを、19世紀以来の世界史の流れの中に位置づけ、反省を記した第1章である。

 概略はこうだ。

 19世紀は、技術革新により、欧米が他の地域に対して圧倒的な優位に立った時代である。列強の東漸(とうぜん)、南下があり、植民地化の波が世界を覆った。

 日本は植民地化を免れるべく近代化を遂げた。欧米列強に対抗、追随する過程で自らも台湾、朝鮮を植民地化した--。

 この先が大事だ。

 やがて第一次世界大戦が勃発。その悲惨な結末から欧州諸国で帝国主義的膨張への自制が芽生え、不戦思想が広がったころ、日本は世界史の潮流を読み誤り、逆の方向へ走った。

 29年の大恐慌で打撃を受け、既に「持てる国」であった英米などに植民地再分配を求める考えが台頭。満州事変以後、中国大陸への侵略を拡大、無謀な戦争に突入した--。

 つまり、報告書は、日本の、過去の国策の誤りを認めた戦後50年の村山首相談話と同じ認識に立つ。ただし、村山談話ではあいまいだった誤りの範囲と背景を書き込んでいる。

 強調したいのは、「悪いのは日本だけではない」という、後ろ向きの、子どもじみた弁明をめざすものではないという点だ。

 誤りは誤りである。日本は第二次世界大戦の痛切な反省に立ち、戦後70年の平和を守りぬいた。この実績に自信をもち、引き続き平和主義の旗を高く掲げ、各国共存の国際秩序形成に努める。この決意が報告書の基調になっている。

 マスコミの関心は報告書に「侵略」が書き込まれるか否かに集中した。

 安倍晋三首相は会見や答弁で「侵略」への言及を避ける傾向があり、「安倍はリビジョニスト(歴史修正主義者)か」という疑問が国内外で根強い。

 つまり、安倍首相は、昭和前期の日本の、軍事的膨張の加害性を認めないのかという疑問。「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えた」責任と反省を明記した72年の日中共同声明さえ認めないのかという疑問がある。

 報告書は、本文で、満州事変(31年)以降の日本の中国大陸への「侵略」を明確に認め、この表現に複数の委員が異を唱えた経緯を欄外に注記した。

 大事なポイントなのであえて書くが、複数の委員というのは16人中の2人である。異議の理由として「満州事変以後を侵略と断定することに異論がある」ことなどが記された。

 が、実際には、満州事変自体の侵略性を否定する発言は皆無だった。自国の侵略性を認める公式文書は国際的に異例であり、外交上の不利益を懸念--という観点からの異議であったと私は理解している。

 議事の進行、整理を主導したのは北岡伸一座長代理である。安倍首相は数回出席し、一部を傍聴したが、「侵略」を含め、実質討議に加わって発言したことはなかった。

 首相官邸から参加の打診を受けたのが1月。記者の身で加わることの是非などについて編集幹部と協議の上、お引き受けすることにした。混迷する歴史認識問題の常識的なバランスについて、自ら信ずるところを申し述べたいという思いが私にはあった。

 これからの日本の針路に関しいわゆる積極的平和主義の中身や、経済成長の質に関する議論は生煮えと感じているが、歴史認識については、世界史の脈絡で見るという点で良い整理ができたと思う。

 侵略を認めれば正義、認めなければ暗黒--という非難は皮相に過ぎる。認めれば亡国、否認が愛国という問題でもない。

 反省は必要だが、正確な知識と確信を伴わない反省には重みがない。この報告書が国内合意形成への手がかりになり、日中、日韓の関係改善へつながることを望む。

http://mainichi.jp/shimen/news/20150807ddm002010183000c.html?fm=mnm

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