テレビやネットで消費税増税論議が盛んになっている。論点はいろいろあるが、私が一番大事だと思うのは、「今のような経済状態で消費税増税ができるのかどうか」であろう。その中でも一番の焦点は「1997年の消費税率引上げの大失敗の総括」だ。
消費税賛成派は1997年の消費税率引上げ後の経済状況の悪化は消費税率引上げが原因ではなく、その夏に起きたアジア通貨危機が原因であると主張する。
これが財務省内部での統一見解である(財務省も本当は消費税率引上げが原因だと分かっているが、それを認めると今後の消費税率引上げが難しくなるので、アジア通貨危機のせいにしている)。消費税増税については原発問題に負けず劣らず御用学者がウヨウヨしているがチャンピオンは東大の吉川洋教授である。吉川教授はどのように計算したのか知らないが、1997年の消費税率引上げ後の経済状況の悪化に関する消費税率引上げの寄与度は0.03%に過ぎないと主張し、財務省の見解を理論的にもっともらしくでっち上げている。
御用学者達は口々に財務省内部での統一見解であるアジア通貨危機が原因であると主張しているが、最近、それだけでは弱いと思ったのか、山一破綻などの金融危機も原因であると言い出している。
これは、原因と結果が逆である。1997年4月1日に消費税率が3%→5%に引上げられた。直後から消費が大きく落ち込んだ。それは当時の経済企画庁も予測(4―6月は景気が落ち込む)していた通りであった。問題はその後であった、7-9月から景気は回復するとの経済企画庁の予測であったが、夏になっても景気は落ち込むばかりであった、このあたりから、世間でどうも政府の言うことはおかしいという雰囲気が漂い、日経平均株価もどんどん下がりだした。
ただでさえ、金融機関は不良債権問題を抱えているところに、1997年は景気が下り坂にあった、このような最悪の状況での消費税率の引上げがトドメを刺す格好になり、これをきっかけに経済状況は坂道を転げ落ちるように悪化した。そしてそれが不良債権問題をさらに悪化させるという悪循環に陥り、ついに11月、山一証券、三洋証券、北海道拓殖銀行が相次いで破綻という金融危機を引き起こし、消費税率の引上げは日本経済の背骨にひびを入れてしまった。
そして、消費税増税を行った我が国の税収は落ち込み、この1997年の税収を今に至るまで、上回っていない。税収を増やすために消費税率を引上げを行ったはずなのに、我が国の全体としての税収は消費税率引上げ前より減ってしまっているのだ。確かに消費税による税収は増えたが、所得税・法人税の税収が経済状況の落ち込みのため、それ以上に減ってしまったからである。1997年の景気の落ち込みの原因が消費税率引上げではなく、その夏に起きたアジア通貨危機だとおっしゃる御用学者の先生方は、消費税増税を行った我が国の税収は落ち込み、この1997年の税収を今に至るまで、上回っていないことの理由を説明してほしいと思う。振り返れば、初めて3%の消費税を導入した1989年はバブル景気であったこともあり、経済には蚊が刺した程度、ほとんど景気には悪影響を与えずに済んでいるのだから。