消費税増税に断固反対 気骨ある産経新聞  田村秀男編集委員 | 21世紀のケインジアンのブログ

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回の消費税増税問題ではすっかり財務省に籠絡されてしまった大手新聞であるが、その中で、唯一消費税増税に反対しているのが、産経新聞の田村秀男編集委員である。もちろん、財務省には睨まれ、産経新聞には国税の調査も入ったという。そのような圧力にも関わらず、消費税の増税に反対し続けているのは大したものである。産経新聞としては、国税の調査が入って以降、消費税増税については、それまでの「反対」から「しかたがない」に変わってきているが、そのような中で、田村秀男編集委員は「消費税増税反対」を貫いている。



 田村編集委員の上司には圧力らしきものがかかっているようであるが、田村氏は頑張っている。是非、頑張り抜いてほしい。下に田村氏の主張があるが、全く同感である。ただ、脱デフレ条項として名目GDP成長率4%以上を明記するというのは、バブル期の1991年並なので少々欲張りすぎではないかとは思うが、その他は異論ない。また、これを機に、田村氏が力説しているデフレ経済下にある日本にとって、「実質」ではなく「名目」のGDP成長率への関心が高まることを望みたい。かのケインズも「我々は名目の世界に生きている」と言っている。


名目成長4%の脱デフレ条項を 消費増税災厄を避けよ(産経新聞編集委員・田村秀男)


 野田佳彦首相は消費税率引き上げが不成立となれば衆院解散・総選挙で国民の信を問う構えのようだ。野田氏は深刻化する超円高デフレにお構いなく、消費税引き上げ法案という爆弾を抱え、いわば「自爆」してまで増税を実現する覚悟だというわけだが、国民が自爆の道連れにされてはかなわない。


可処分所得の減少

 増税爆弾はどのくらいの災厄を日本国民と経済にもたらすのだろうか。財務次官OBで増税派と目される武藤敏郎理事長の大和総研が、消費増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」について大変参考になるリポートを出した。それによると、子供が2人いる年収500万円の標準世帯では消費税分16万円など負担増で可処分所得が約31万円も目減りする。可処分所得とは、家計の収入から税、社会保険料などを差し引いた手取りのことだ。それが月額平均で2万5833円、勤労日ベースで1日約1千円も減るではないか。

 

コンビニ弁当で昼食を済ませていたサラリーマン・ウーマンは、朝食や晩飯の残りを弁当に詰めて出勤しても、まだ600円以上も足りない。月に1、2回にとどめていた居酒屋にもめったに行けなくなる。さらに復興増税も加わるので、家計負担はもっと増える。

 

火の車の家計は家族が倹約に努めてなんとかやりくりできるかもしれないが、国全体としてはどうにもならない怖いことが起きる。すでに始まっている超円高・デフレ不況の深刻化である。


 日本の慢性デフレの症状は、需要不足のために起きる物価の下落以上に可処分所得が下がることである。勤労者世帯の2010年のひと月当たり可処分所得は13年前の1997年に比べ6万6700円、13・4%減ったが、前年比平均で1%、4770円ずつ下落してきた。日本型デフレ病は極めて緩やかで超長期にわたり所得が縮むのが特徴だった。

 そこで筆者はこのデフレを「茹(ゆ)で蛙」の寓話(ぐうわ)に例えた。蛙は常温の水を入れた鍋に入れられ、時間をかけて熱せられてもじっとしている。日本の勤労者は蛙と同じように、少しずつデフレ水の温度を上げられているために、何かおかしい、懐具合がどうも悪いな、と思いつつも、そんな日常に順応してしまっていたのだが、今度は一挙に火勢が強くなり、熱い、と叫ぶが、それまでの慢性デフレのために飛び出す気力も体力もうせている。


税収減少で財政悪化

 

日本は海外に対して260兆円もの純債権を持つ世界最大の債権国なのに、大増税までして国民の所得を召し上げるのだから、海外の投資家は率先して日本国債を買い、円相場をつり上げている。超円高は止まらず、企業は国内投資、国内雇用をあきらめる。リーマン後40兆円も縮小した国内総生産(GDP)はもっと下がり、所得税、法人税の合計税収の減少額は消費税の増収分を上回るだろう。

 

 現に、1997年度の消費増税と社会保障負担引き上げ後にはデフレが再発し、全体の税収が大幅に減った。今回も財政は悪化し、2010年代半ばには消費税を15%、20%にせよと財務官僚が騒ぎ立てる姿が今から目に浮かぶ。


 経済のパイそのものであるGDPの名目値が増加しない限り税収は増えない。少子高齢化が進み具合からみて、いずれ消費増税はやむをえないとしても、財政収支均衡化は脱デフレなくして達成できない。社会保障財源と財政健全化の同時達成のためには適正な物価の上昇と経済成長が欠かせないことを、政治家は再認識してほしい。

 

 野田首相が本気で「日本再生」を達成したいなら、消費増税の発動条件として、名目成長率4%以上を明記した脱デフレ条項を盛り込むべきだ。野田政権自体、国家戦略会議を通じて成長戦略を策定するようだが、作業は極めてのろい。名目成長率の押し上げに向け、それこそ「不退転の決意」で臨むのが政治責任というものなのに、増税実現しか頭にないようだ。

 岩田規久男学習院大学教授の試算によれば、名目成長率4%が11年度以降継続すれば、15年度の国税収入は10年度(41・5兆円)比で23兆~37兆円も増える。もちろん、インフレ率がプラスに転じると、金利が上昇し、国債利払い費が増える可能性がある。財務官僚はそれを理由に、脱デフレに背を向ける。ならば消費増税の余地を残せばよい。金融機関や投資家は安心して日本国債を買い続けよう。

 野田首相が耳を貸さなければ、与党内の批判勢力も政権奪回をめざす自民党も、明確な脱デフレ条項条件付きの消費増税法案を逆提案すればよい。政局の道具にするだけではなんにもならない。http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120115/fnc12011509130000-n1.htm