新聞記者が知っていることと、新聞に書けること・書けないこと | 21世紀のケインジアンのブログ

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昨年の3月、2008年3月、以前のメルマガに書いた船井幸雄さんの講演の翌月、日経新聞の記者(編集委員)の講演を聴く機会があった。


 テーマは「これからの景気見通し」という平凡なものであったため、

正直、あまり期待していなかったが、日経の編集委員の話が直接聴けるということで行った。


 毎日、日経の朝夕刊を読んでいるので、そんなに目新しい話は

出ないだろうと思っていた。 それが、意外にも!!

 驚くような話を聞くことが出来たのだ。


 編集委員氏の話は要約すると

「サブプライム問題を含めて、アメリカだけでなく、世界中で大きなバブルが崩壊してしまったので、これからの世界経済は今後、数年間、非常に厳しい状況から抜け出せない!!」

という、日経新聞では、お目にかかれない驚くべき内容だった。


 とりわけ、日本のバブル崩壊の事例に照らしてGDPと銀行貸出残高の大きな乖離から編集委員氏が推計したアメリカのバブルの総額は、なんと380兆円!!にもなると言う。


 そんなこと、日経新聞で見たことないよと私は思わず叫びたかったほどだ。


(通常は、経済活動を示すGDPとそれを資金面で支える銀行の融資残高は、同じように動きます。しかし、日本のバブルの時には、実体の経済活動とは無関係のごとく銀行貸出残高が急増し、株式や不動産へ融資されたのです。その結果、日本の銀行貸出残高は、GDPより約250兆円も多くなってしまいました。その250兆円こそ、その後、日本を苦しめ続けたバブルの正体だったのです)。


 アメリカだけでも、380兆円のバブルが崩壊した!!という天下の日経新聞の編集委員氏の話に会場は文字通り凍りつき、静まりかえってしまいました。聴衆のあまりの呆然自失の様子に、今度は、編集委員氏が慌ててしまい、「今の話は忘れてくださいね。」と話題をすぐに変えてしまったほどであった。


 その後、かの編集委員氏は、厳しい話は抜きで講演を終えた。


私は、どうしても納得がいかなかった。サブプライムローンのニュースが、初めて、日本の新聞等で報道されたのは、2007年8月のBNPパリバショックであったが、日経新聞でも、その後、それが一大事であるような記事にはお目にかかれかったからだ。


そこで、講演を終えた、かの編集委員氏の所へ歩み寄り、失礼をも省みず、厳しい質問をぶつけた。


私「BNPパリバショックの後も、日経新聞さんの論調は一貫して、サブプライムローン問題は、それほど大きな問題ではない。という調子でしたよね」



編集委員氏(苦しそうに小声で)「ええ・・・そうでしたね。」


私「しかし、あれから半年しか経っていないのに、今日は、世界中が同時バブル崩壊でこれから大変な苦しみを味わう、という話をされたのはどうしてですか? このような大事だとわからなかったのですか? それとも、わかってても、新聞には書けなかったのですか?」


編集委員氏(1分間の沈黙の後、苦悩にゆがんだ顔で苦しそうに絞り出すような声で)「世界中で、大変なことが起きたということはわかっていました。でも、それが具体的にどのくらいとか、どのように影響を与えるということがはっきりしないと新聞には書けないんです。また、万一、記事にしても、上の方がオーケーしてくれないんです。多くの世の中の人や企業を変に動揺をさせることはできませんからね。」


これ以上は、あまりにも礼を失うと感じ、また、自分に都合の悪いことでも正直に告白してくれた編集委員氏に謝意を示して、私は会場を後にした。


帰り道で「新聞の紙面の裏を読め」という格言が私の頭をよぎったのであった。


ちなみに、今、日経で比較的、世界経済の実態を比較的本音で書いているなと思えるのは、夕刊の目立たない場所にあるコラム「ウォール街ランドアップ」である。 興味のある人は見てみてください。