後にも先にも記憶にない 仏の船井幸雄の鬼気迫る講演 | 21世紀のケインジアンのブログ

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 それは、リーマンショックの7ヶ月前だった。

その頃、日本では、戦後最長の好景気がいつまで続くのかが

よく話題に上り、企業も新規の設備投資や大量の新卒採用を計画し、

海外からも世界的な好景気(バブル?)の明るい話題がニュースや新聞紙面を賑していた。


 そんな時期の20082月、船井さんの講演を聴くことができた。

船井さんの講演はこれまでにも、数えられないほど、聴いてきた。

いつも講演では、終始笑顔を絶やさず、にこにこしながら、聴衆には、「肩の力を抜いて、リラックスして聞いて下さい」とおっしゃり、気楽に聞くことができた。


 しかし、その日の講演は違っていた。壇上に上がった船井さんをみると、

いつもの、笑顔がない。しかも、笑顔どころか、初めて見る鬼気迫る表情を

されていることに、私は驚いた。


 講演は、会場に緊張感が漂ったまま単刀直入に始まった。

そこで、船井さんはまず、こう述べた「これから、99.9%の確率で世界的な大不況が来ます」。この驚くような第一声で会場の雰囲気は凍ったように感じた。


 その後、船井さんの「これから、99.9%の確率で世界的な大不況が来る」根拠の説明が続く。当時、サブプライムローン問題が時折、

ニュースで報じられていたものの、殆どの人にとっては、自分には関係ない話と思っていた。

 また、FRBやIMFなども、サブプライムローンで生じる損失はせいぜい10兆円程度と発表しており、それによる株価下落等から発生していた世界の経済活動へのマイナスの影響も30兆円程度に過ぎなかった。


 船井さんは経営コンサルタントらしく、自らの分析を説明して行った。

問題はサブプライムローンもその一部に過ぎない「証券化商品から発生する損失」にあると言う。ホワイトボードに米、欧州、日本という区分と証券化商品の3つの質のランク、という合計9つの区分ごとに今後、証券化商品から発生する損失額と計算根拠を書きだした。

 

そして、「今後、世界で発生する損失額は10兆円どころか、

300兆円になり、それが世界経済に与えるマイナスの影響は1000兆円程度になるだろう」というのが強い説得力を感じさせる船井さんの結論であった。そして、「世界経済に1000兆円のマイナスの影響が生じれば、これから、99.9%の確率で世界的な大不況が来るのは避けられない」と話を結んだ。


 このような、当時としては思わぬような驚くべき話を聞かされ、会場の雰囲気は完全に凍ってしまった。


 その後で、船井さんは、これだけを話して帰ったら、皆さんを、怖れさせるだけのことになるので、来たる世界的大不況に対して、経営者はどう対応したらいいのかとして、次の3つのことを話された。


前段で、経営には「時流に乗った経営法」と「基本原則に沿った経営法」の二つがあるが、これから来る激動期には「原理原則に沿った経営法=経営のコツ」に徹底することと言われた後で、

  

1. 正しい哲学で経営する。

(1)どんなことがあっても、世のため人のためにならないことは、絶対しない。また、危なっかしいこと、ややこしいことはしない。

(2)嘘をつかない。これは、法律を守るだけでなく、自分の良心に反することは絶対しない。


2. 経営体はトップ一人で決まる。素晴らしい人をトップにする。

(1)トップ業に命をかけているいる人をトップに。これからの激動期には、うまくいかなかったら死ぬ覚悟のある人をトップに据えること。

(2)成功の3条件を満たしていること。これを満たしている時だけ成功する。

勉強好き⇒「知らないことを知ること」⇒とにかく、「勉強ぐせ」をつける。経営者で勉強しているのは、せいぜい40歳まで。50歳で半分。60歳以上は殆どゼロなのが実態。これでは、生き残れない。

素直⇒自分のわからないこと、知らないことを、「そんなバカな!」とすぐに否定しない。一旦、自分の中でよく咀嚼してから判断すること。そして、それでも、わからないことは、肯定も否定もしないこと。

プラス発想⇒物事は、何でも、いい方にとること。


3. 意思決定の原則を知ること。 経営者とは意思決定業である。

(1)迷ったら、やめる。(自分で成功すると思えないことはやらない)

(2)まず、間違いなく成功すると思ったこと以外やらない。

(3)自分で責任が取れることしかしないこと。

(4)課題について、とことん詳しく知って、これ以上できないほど知り尽くして判断し、その後、意思決定する。

(5)「ツク」こと。船井流「ツキの悪い時にツキをつける方法を活用する」


とにかく、これからは、生はんかな覚悟では、会社は生き残っていけない。


普段、船井さんがいろいろな経営者と話をしていると「私は命がけで経営してます」と言う経営者は多い。しかし、話の内容をよく聴いてみると、厳しい船井さんの目から見ると「命がけで経営しているな」と思える経営者は100人の内1人いるかどうかだという。


これからの世界的大不況に対しては、文字通り「命懸けで経営に取り組んでください」、「うまく対処できなかったら命をとられるという真剣な覚悟を持って経営に取り組んでください」、「上記の3つのことを必死でやれば、世界的大不況が来ても生き残れます」、そう言い残して、船井さんは講演を終え、会場から去っていった。


講演が終わり、船井さんがいなくなった会場には言葉では表現出来ないなんともいえない雰囲気が漂っていたことが今も、鮮烈に私の記憶に残っている。


リーマンショックが起きたのは、その講演の7ヶ月後のことであった。