バンコクに行くと必ず
スーツやシャツを作るようになった。
馴染みの店が出来て
新しい定宿に変えてからはすぐ近くにあることもあり、それ以来顔を出してはヒマをつぶしたり、服のアイデアを語り合ったり。
この店のオーナーは、ジャック。
おじいさんがミャンマーからの移民で
本人は今でもミャンマーの出身だと胸を張る。
テーラーの道を歩み始め
24歳で小さいながらもいまの店を持つことになり
6年が経つ30歳の苦労人である。
休みなく
毎日夜の23時頃まで働きづめだ。
英語も堪能であり、
簡単なカタコトの独語、仏語は
こなしているようだ。
肉体的な意欲も凄いが
パッションも人一倍だ。
人の気をそらさない。
かならず、客には提案をする。
強い目ヂカラで
自信満々に提案をする。
こんなテーラーは
めったにあるものではない。
自分のセンスを客にバンバン披露し
とにかく彼の情熱にみんなやられてしまう(笑)
世界中から客がついており彼らはバンコクに立ち寄るたびにジャックの店に顔を出す。
いつのぞいても
客が絶えない人気店にのしあがった。
忙しすぎるのか
ネーム入れのスペルを間違えてたり(笑)
いろいろとチョンボもあるのだが
それを言うと
「いつでも持ってこい!」
と平気で言う(笑)
で、私は怒るのだが
すると、ハッとしてペコペコ謝るのは
ご愛嬌になってきた。
これだけのパッションと
働きづめならば成功しないわけはないといつも感心する。
今では顔を出すだけで、僕の今までのオーダーと前回の採寸記録がすぐに出てくる。
今回はシャツと
デニム生地のジャケットをつくった。
黒の縁取りはジャックの強い押し付けで(笑)あしらってみたものだ。
採寸から最短2日後には出来上がるのだが
今回も最終日の夜にこのジャケットを店に取りに行くと
「今日のお昼にこれを店内で下げていたら、ドイツ人のクルーが来てシンジのジャケットを見て一目で気に入って同じものをオーダーしてくれたよ。サンキュー、シンジ」
それを聞いてわたしは
マージンを寄越せと言ってやったのは
言うまでもない。

